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【どこまでも呑気な国】

相変わらず危険な暑さが続いている。近年は35℃を超える日も珍しくなくなり、昔は無かった「酷暑」と言う言葉も最近よく耳にする様になった。

連日のニュースや天気予報ではその日の記録的な暑さや熱中症で何人搬送されたかを、何かスポーツの新記録を達成したかの如くのニュアンスで伝えているが、じゃあ日本が今何か地球環境を改善したり、地球温暖化を食い止めようとしてるかと言えば一切していない。ヨーロッパの国々では二酸化炭素の排出を減らす為に近場の距離の飛行機便を廃止したり、カープールを促進して環境に配慮する動きが活発になっている。ところが日本はと言うと、去年なんかはコロナ禍による「全国旅行支援」で経済を活性化する事ばかりに気を取られ、逆に飛行機もバンバン飛ばして車も走らせていた。自分達のその行動がこの危険な暑さを招いているという事と関連性がまるで分かっていない様に見える。

「全国旅行支援」という制度さえ本当に必要だったのだろうか。旅行する為の割引をもらう人は当然だがある程度経済的に余裕がある層であって、コロナ禍になって本当に生活が苦しい貧困層の人にとっては何の助けにもなっていない。そんな余裕のある層ではなく、本当に食べる物もままならない人達を支援する方がどう考えても優先順位が高い筈だ。



失われた30年はもう戻って来ない。そこで新型コロナというトドメの一撃を食らって国はこれ以上にないぐらい悲惨な状況で時間の経過と共にジリ貧になってしまっていて、インフレと円安のダブルパンチでおまけに税金は増え給料も上がらないにも関わらず、誰も何もせず、文句も言わず、"なんとかしよう"という気配がまったく感じられない事が僕には理解出来ないしとても薄気味悪く感じる。

昔は安保闘争などのデモや日本赤軍と言った過激派まで存在していたが、近年はそう言った世の中や社会に対する不満を訴える人、特に若い世代の動きや気配すら感じない。アメリカやヨーロッパやアジア諸国などでは暴動やデモやストライキなんて最近では特に活発だし、格差などの不満を表に出して訴えている。誤解しないで欲しいが、暴動を助長したい訳ではない。日本だって苦しい筈なのに、もう藁をもすがる思いでいる人も沢山いる筈なのに、誰もSOSの信号を発しない。やけに大人しいというか、随分すんなり受け入れるというか、妙に秩序だっている。



コロナ禍によって観客も入れない東京オリンピックなんて僕は猛反対だったが、日本政府は「スポーツの力」という非常に曖昧で抽象的な表現を馬鹿の一つ覚えみたいに連呼しながら、多くの人の反対と物議を押し切って大会の開催を強行突破した。そんな状況下で「スポーツの力」と聞くと、それは紛れもなくカネと政治の力としか僕には聞こえない。

高度経済成長の中、1964年の大会では"アマチュア"選手達の頑張りを通して勇気と感動を与えてくれた事は容易に想像がつく。そして"結果的に"インフラも整い、経済効果ももたらした。だが1984年のロス五輪以降は完全にビジネスと政治が目的になってしまい、今では選手達は全員プロだ。

オリンピックはサッカーのワールドカップの様な国規模ではなく、あくまで一つの都市開催に過ぎないので国全体の経済が潤う訳ではない。東京に一極集中している事を以前からずっと問題視しているにも関わらず、結局いつも恩恵を受けるのは地方ではなく既に世界最大の都市になっている東京だ。

多少の経済効果があるならまだよかった。コロナ禍という最悪のタイミングで外国人の日本への入国制限もしていて、観客も入れない中開催した事により、その莫大な赤字のツケを僕達国民が納めている税金でこれからも払い続ける事になる。大会を開催する為に作った各施設のこれからの維持費だってかかる。一体そんな余裕がこの国のどこにあったと言うのだろう。結局「おもてなし」も出来なかったし、一体誰の為の東京オリンピックだったのだろうか。

大会が既に終わった今こんな事を言っても仕方がないのだろうが、これがもし仙台オリンピックだったら話は別だ。東日本大地震の復興は終わったのか、それともほったらかしで忘れ去られているのか、もう報道されなくなった事もあり、詳しい事情は分からない。毎年3月11日には思い出したかの様にその時だけ神妙な面持ちで報道されるが、その陰では原発の汚染水を太平洋に垂れ流す事が最近決定された。



よくスポーツイベントで、仕事として既に会場に係の者がいるにも関わらず、日本人の観客がゴミ拾いをしている姿が外国人に賞賛されるが、日本国内の高速道路の脇や人目のない道には当たり前の様にゴミが散乱している。結局人目のあるところでだけ"良い子"でありたいのであって、根底にある問題に対するものではない。行動がいつも合理性に欠け、根本的にどこかズレている。

本当に"このままではいけないから何とかしよう"という思いがあれば、もっと他にやる事がある。環境破壊は地球温暖化や異常気象を招き、それにより畑や作物がダメになり、結果的に食糧難により物価が高騰して今現在のインフレの一因になっているという、小学生でも分かる様なごく当たり前の事に果たしてどれだけの大人が気づいているだろうか。

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