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【お金で買えないものはあるのか?】

クリスティアーノ・ロナウドが去年サウジアラビアのアルナスルに移籍してから、後を追う様にサッカーのスーパースター達が中東に集結し始めている。カリム・ベンゼマ、エンゴロ・カンテ、サディオ・マネも後に続き、そしてつい最近ネイマールまでも中東行きが確定した。その理由はたった一つしかない。超破格の年俸だ。

中東へ渡ったスーパースター達の年俸は200億や300億と言ったとてつもない金額だ。サラリーマンの生涯の稼ぎが平均で2億〜3億位だと聞いた事があるが、彼等はそれをたった1日で稼ぐ計算になる。だが果たしてこれは妥当なのか。世界中で生活に苦しんでいる人や食べる物すらままならない人達が沢山いる中で、ただボールが上手く蹴れるというだけでこの金額を得るのは正直言って馬鹿げていると個人的には思う。



一部のサッカーに携わる人達の間で今話題になっているのが、これから中東のサッカーリーグはヨーロッパに並ぶ、或いはそれを超える様なメジャーなリーグに発展するのかという疑問だ。

ここからはあくまで僕の個人的な推測に過ぎないが、おそらくそれは実現しないと思う。

最近中東に流れていくスーパースター達は皆体力的にピークを過ぎ、30歳を越えた引退寸前のベテランに限る。ヨーロッパの様な競争が激しいリーグを戦う為の純粋なサッカーの戦力としての補強ではなく、どちらかと言うと言い方は悪いがネームバリューに頼った客寄せパンダの様な役割だ。これから開花する様な若い才能ではない。

例えば、ジュード・ベリンガムの様なこれからである若い逸材はいくらお金を積まれてお呼びがかかったとしてもおそらく中東には行かないだろう。レアルマドリードに移籍して間もない彼は既に年間数十億の契約を結んでいる筈だし、カネの面ではそれだけ貰えれば十分な筈だ。言うまでもないが中東のサッカーリーグの今現在のレベルはヨーロッパとは比較にならない。とにかく遅いし、身体能力も技術や戦術も張り合いもない。そんなところにこれからサッカー界で将来が待っている若い選手が行きたがるとは到底思えない。

中東は環境から見てもサッカーの様な過酷なスポーツには適していない。40℃を超える灼熱の中で質の高いパフォーマンスが出来る筈もなく、ダイジェスト映像などを見ていてもやはり選手達の動きには精彩がない。クリスティアーノ・ロナウドに限っては年齢的な事も多少あるかもしれないが、以前では考えられない様な酷いミスをサウジアラビアに渡ってから多発している。

果たして西洋人が中東に住みたいだろうか。あまりにも異なる文化や言語、そして宗教という観点からも生活に馴染みにくい。中東からの巨額な年俸を提示されていたメッシはそれらの理由と、まだ小さい自身の子供達の教育の観点などを家族で話し合った結果、そのオファーを蹴ってアメリカに渡った。かつてバルサでチームメイトだったレジェンドのセルヒオ・ブスケッツやジョルディ・アルバもメッシの後をついて行った。今無所属のセルヒオ・ラモスも中東からのオファーには応じず、メッシとアメリカで一緒にプレーしたがっている。全員がお金だけを重要視しているわけではなさそうだ。

もうひとつとても気になったのが、中東のサッカーの試合の観客席がガラガラな事だ。僕は中東の国々の事はよくわからないし、興味もない。訪れた事もなく(多分一生行く事はない)実情がどうなっているのかがわからないので何とも言えないが、客席のほとんどが空いているのは単に地元の一般国民がサッカーに興味がないのか、それともチケットを買えるお金がないのかはわからない。

個々の選手ではなく、フランスのパリサンジェルマンの様にクラブごとカタールに買収された例もあるが、当然クラブやリーグそのものを物理的に中東に持って帰る事は出来ない。



一昔前の2010年代には中国でも同じ様な動きがあった。当時チェルシーで活躍していたブラジル代表のオスカル、コロンビア代表のジャクソン・マルチネスなどの一流選手達が高額な年俸を提示され、中国のスーパーリーグに渡った。少しだけ試合を見たことあるが、ボールではなく選手同士を蹴飛ばし合うカンフーの様なサッカーだったのを覚えている。南米人の彼等にはやはり中国での生活が合わなかったらしく、ジャクソン・マルチネスに関しては「中国から出たい。」とこぼしていたらしい。お金に目が眩んで中国に渡ってプレーした一流選手がその後ヨーロッパに戻って再びビッグクラブで活躍した例は、僕は聞いた事がない。

中東や中国はヨーロッパや南米とは違いサッカーの歴史がまだ浅く、"文化"として根付いていない。100年以上前からサッカーが根付いているヨーロッパとは競技人口、人気や人々の関心に比べ物にならないほど差があるのだ。それにレジェンド達の引退前のお小遣い稼ぎは何も中東や中国に限った事ではなく、アメリカや日本でも以前から行われているが、その後リーグがヨーロッパに匹敵するほど成長したという事は勿論ない。

どれだけ引退を目前にしたスーパースターをかき集めても、僕が中東のサッカーリーグに興味を持つ事はない。そして世界中のサッカーファンもおそらく同じ事を思っている。

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