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【七転び八起きの七転び目④】

 中富良野から観光バスが消えるだなんて思ってもみなかった。

 もちろん売上はものすごく下がった。そりゃもう下がったんだけど、今になって思うとそれでも半分までしか下がらなかったのはちょっとした奇跡だ。
 海外からの観光客はゼロになって、道外からの観光客も明らかに減ったから、売上が2〜3割ぐらいまで落ちてもおかしくはなかった、だがその分道内観光が増えたから5割減で持ち堪えることができた。
 これはおそらく札幌の200万人が道内でしか旅行できなかったからだろう。そんな街が近くにあって良かった。

 それでもやはりビジネスの柱、屋台骨がポッキリ折れた感じはした。中富良野から始まったピザビジネス、本陣に白旗が上がる。
 協力金とかがあって助かりはしたけど、中富良野は昼間、しかも夏季限定営業だからそういうの何にも引っ掛からなかったという悲劇。
 それにしてもあれだけ世界中から集まっていた観光客がほとんどいなくなってしまったあの状況は、ある意味で逆に貴重だったんじゃないかとすら思えてしまう。
 ファーム富田の建てた壁を眺めながら、あの向こうにゾンビの群れが押し寄せてきてるんじゃないかなんて想像してワクワクしたりもしながら、本当に世界の滅亡なんじゃないかと震えもしたよ。

 それでもなんとかやりくりしていたら、秋の北海道物産展はどうにかやれそうですって色々なところから連絡が入ってくるようにはなったけど、状況によっては中止することを御理解下さいという条件付きで、それは仕方のないことではあるけど、小さな企業にとっては地獄みたいなもんだった。
 何百枚もピザを焼いて用意して、航空券もホテルも予約して、人員も用意してるのに1週間前とかに急に中止になるのも普通だったからね。中止になるのが稀ならまだ良いけど、日常茶飯事だったから、キツかったな。

 七転び目に関しては転んだというより世界がひっくり返ったもんだからどうしようもない。そんなかでやれることはそれなりにやったと思うし。

 ただただ、コロナより人間が怖かった。


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