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【七転び八起きの一起き目③】

【七転び八起き】マガジン

 飲食店にとって、ホットペッパーは麻薬なのかそれともただの栄養剤程度のものなのか……その頃、まわりの個人店でもそれについての議論は意見が分かれていて、実際自分も最初は嫌悪感を持って穿った目で眺めていた。

 新規オープンのところに掲載された初月はかなりの集客を望めるけど、平常に戻った時は6ヶ月ぐらいかけてデータを集めて、戦略的に集客を増やすことが大事だというのが営業の意見で、それは間違いなくそうだけど、じゃあ最初の6ヶ月は安くしてってのがこっちのホンネで、即効薬が欲しい店舗としては払うが先か貰うが先か。
 タイミングよくその頃はホットペッパーも掲載店を増やしたい時期だったから、年契約だと割引も大きく無料期間もサービスしてくれるということで、即効性がなくともその流れにノるのは悪くない選択に思えた。それは需要に対して撒いた餌だというのに安易。
 それがつまり、悪魔の囁き

 今でもよく迷うんだけど、流行りのマーケティング手法っていつの時代にもあって、それにのるかどうかってのは本当に難しい。SNSもそうだけどfacebook、LINEやTikTokも出たての頃は基本的にみんな静観してみるじゃない。
 ただ、それが時代の潮流だと感じた瞬間にはやいのやいの言わずにビートビートってな感じでなるべく早くそれにのるってのがすごく大事で、大事なのは適切なのり方とおり方とそのタイミングなんだと思う。
 降りるタイミングは乗るより10倍難しい。

 ホットペッパーの営業の契約社員たちは上昇志向の強い20代〜30代前半の人たちが多かったから、彼らの熱にあてられて広告を掲載した店舗も多かったと思う。飲食店がなぜか営業マンの応援のために広告を載せる謎の構図。あの会社はヤル気の搾取ではなく、それを転化してのマネタイズが上手かったんだと思う。
 この時にホットペッパーの担当から都内の店舗の広告やデータを見せてもらい、数字の読み方や動かし方を学び、マーケティングに興味を持ち始めたのは後にすごく役に立った。

 mixi効果とクーポンマガジンの効果で店は連日満席の大繁盛だった。小さな広告でも予想より即効性があり、下らないシステムと思ってた飲み放題とパーティプランには分かりやすいくらいの効力があった。
 ただ、ランチは暇だったから途中で切り捨て、代わりに深夜に力を入れて営業時間を朝3時までに。
 朝日を眺めてから寝る生活にはなったけど、ランチから営業してアイドリングタイムに硬い椅子を並べて寝るよりは全然マシ。

 で、気がついたらイタリアにいた。

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