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【タスマニア劇場①】

 西オーストラリアのパースに住んで半年、そろそろ冒険が日常になった頃、朝のラングレーパークをボーッと走りながらスワンリバーを眺めながら、スワンリバーは海のすぐ近くにだからたまにイルカが泳いでたりする笑える川なんだけど、心地よい疲労に満足しながらでもふとこのままあと3ヶ月ここにいても程度の良い満足感だけしか得られないことに気がついて無駄にペースアップしたりして急にバタバタし始めた頃。
 せっかくのワーキングホリデーなんだからそれっぽいことしなきゃなって気持ちがどこかにあったし、もちろん半年でそれっぽいことはだいたいやってみてきたわけだけど、さらにこれぞワーホリって体験を欲する欲はまだまだ残っていて、いやむしろそれがちょっと乾いてきてたから渇かなきゃって焦りというかなんというかそういうのが湧いてきて、そんなわけでパラパラめくってみた薄っぺらいフリーペーパーの1ページに目が留まって、タスマニアに行くことを決めた。

 真夜中のローンセストン空港に降り立った時の絶望感を漢字二文字で表すとしたらそれはそのまんま『絶望』だった。つまりもうこれがそれなのかというほどの説得力。真っ暗な森や草原にひとり残されたかのような、というかホントほぼその状況だったんだけど。唯一の救いはまわりにも何人か同じ絶望に唖然としている人たちがパラパラいたってことぐらい。
 しばらくそれに打ちひしがれていたら、目の前にタクシーみたいなマイクロバスみたいな、いやハイエースだったかもしらん、なんかが現れて、これを逃したらきっとここで人生終わるんじゃないかって必死さで拙い英語を駆使して状況を説明し、無理矢理感もあったけどそのなんかになんとか乗せてもらったんだ。
 誰かが呼んだのか迷える子羊たちをそもそも狙ってやってきたのか、そいつは安宿の送迎バスだった。宿も決めずにはるばる西オーストラリアから飛んできたからそのままその宿に泊まれることになったのはむしろラッキーだったと思う。そうじゃなかったらどうするつもりだったのかいまだに何考えて行動してたのかなぞだったりする。

 もちろんこの話はまだまだつづく。


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