ユーミンの「青いエアメイル」で妄想

ガシャガシャ…

アパートの壁が薄いせいで1回の郵便受けの音が部屋の中まで聞こえる。時計を見る。7時50分。いつもより10分だけ早い目覚め。外は雨が降っているようだ。起き上がって少し伸びをして寝間着にパーカーを羽織ると部屋を出て階段を下り郵便受けを開けた。

郵便受けはアパートの入り口にある。屋根の下にあることはあるのだが今日のように少し風が吹いている日だと手紙が濡れてしまう。傘を顔と肩の間で挟みながら郵便物をさばく。電気料金、ガス料金、分譲マンションの広告、、その中に青い封筒があった。

青い封筒。封筒を見れば送り主はわかる。なんとなく周りを気にしながら封筒を開けて手紙を開いた。濡れていないようでよかった。平成も終わろうとしているのに手書きで書かれた文字。決してきれいとは言えない癖のある文字に思わず笑ってしまう。中身はじっくり部屋で読もうと思っていたのに、懐かしい文字を追っているうちに読み終えてしまった。とりとめのない内容。勤め先のイギリス人とのランチの話や住んでいるアパートの不具合、気候、仕事内容、、とりとめのないことしか浮かばないのか、それとも本当は他に伝えたいことがあるのか、わからないまま手紙を閉じる。

海外赴任が決まったことを話しながら、なんとも言えない表情をしていた。私がついていかないという決断をするのを知っていたかのよう。ただうれしいという気持ちが一番大きいことはわかった。

海外で生活することや結婚に憧れがないわけではなかった。6年間付き合ってきた彼。就活も慣れない職場での苦労も励ましあって過ごしてきた。彼がいなくなることなんて想像できなかった。でもたぶん、結局は最初からついていかない、という選択肢に決めていた。自分でそんな気がした。

彼についていくことを選ばなかったからある今。当たり前のことなのになぜか理不尽な気がして何かに怒りたくなってしまう。でも怒りをぶつけられるものなど何もないことに気づき悲しい思いが胸を貫いて終わってしまう。

ただ、彼のことはずっとずっと好きだと思う。少なくともあと半年は好きだろうし1年後だって好きだと思う。そうするうちにだれかと結婚したり子どもが生まれたり、、そんな生活の中でふと思いだしても、好きだな、と素直に思えるだろう。そんな風に何年も経った頃、こっそり会いに行ったら声をかけるのが憚られるほど素敵な人でいてほしい。

青い封筒をパーカーの右ポケットに、そのほかは左ポケットに入れて部屋に戻った。今日は11:00に出社しようと思った。

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内容はすべて妄想です。

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