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人口20人の島暮らし。25歳、船でしか行けない島に移住する。

2023年夏、新卒から3年半働いた会社を辞め、ルーツのある瀬戸内の島に移住した。
人口はたったの20人。当時25歳のわたし、島の最年少になった。

今回はかなり僻地に移住したきっかけと、きっと想像もつかないであろう人口20人の島暮らしについて書こうと思う。



◎ 移住した理由


移住することになったのは、2023年4月、大人になって初めて島に訪れたことがきっかけである。父の故郷であり、家族と一緒に帰島した。
当時たしかに移住先探しをしていたが、まさかこの島に住むことになるなんて思ってもなかった。(人口少なすぎるし。どちらかというと海より山や川に魅力を感じるし。)

だけど島に行ったら住みたくなってしまった。


・ 島も暮らしも人も、みんな心地よい

船から島に降り立ち、島の道を歩くと、どうも心が洗われる。
山道や川辺・木陰にいて、「ふぅ」っと力が抜けるような感覚が5倍増しくらい。
いままで感じたことないくらい、ありのままの自分で居られる気がした。

そんな島には立派な古民家が並んでいる。
紹介してもらった家に魅了。そして縁側に心惹かれ、ここに住みたいと思った。まだまだ生きている立派なお家。直すべきところは直して、長く生きてほしい。
家賃も破格。光熱費より安い。畑つき。納屋もある。自然が近く、理想の暮らしを想像できた。

あとは島人。詳細は後述するが、島人も心地よかった。
半分くらいは長く住んでいる島のおじいちゃんおばあちゃんで、半分くらいは移住者だ。
移住者は、定年して島に移り住んでいる人や、ものづくりに励んでいる若い人がいる。

そう、若い人がすでにいる。しかも4人もいて、みんな熱い想いで島づくりや陶芸・農家をしながら住んでいた。
そんな4人の姿を見て、島に住むことがさらに想像できた。リモートワークのおかげで金銭面の心配もなく、尚更だ。

島にいる年を重ねた方たちも、よそ者扱いすることが一切なかった。それはわたしに島のルーツがあったからではない。
みんな口を揃えて、「若い人が住んだら嬉しい」とニコニコ迎えてくれた。


・ 夢を追いかけて

移住したら、リモートワークと並行して、カフェや宿をやりたいという夢があった。
だけどお店を作ったこともないし、経営もしたことがない。
どこでも良いとはいえ、最初のチャレンジだったから心がめげない場所を探していた。

この島はルーツがあって、人口がかなり少ない。
島に永住する覚悟までは持てないけど、島の寿命が少しでも長くなるよう何かやりたいとは思った。
帰島する人の楽しみを増やしたいし、移住するきっかけとなる場所にしたい。わたしのように島に来て心が救われる人の居場所を作りたい。そして何より、島人がほっと落ち着く、気を抜ける場所を作りたいと思えた。

他の地域で挑戦するより、はるかにこの場所でお店をやりたい理由があったのだ。


移住先を探して、いろんな地方に足を運んだ。
田舎であればどこも惹かれたが、決め手が全然なくて困っていた。
この島には決め手があった。
理想の暮らしと夢を追いかけて島への移住を決めたのだ。


◎ 人口20人の島暮らし


本土から船で90分、人口20人の島暮らし、きっと想像もつかないだろう。
小さな島の暮らしを少し覗いてみたい。

・ 気になる島のインフラ

まずは島のインフラから。

20人の島に商店はない。自販機もない。お金を落とすところがほぼない。
食料は、10日に1回のペースで本土に出てまとめ買いする。理想は野菜は島で育てること。
小さい島なので、車は島ではなく本土に置いてある。買い物や帰省・旅のときは本土に置いてある車を使う。

島には築100年前後の古民家が並んでいる。
長年空き家になっているものも多く、大体は改修が必要。
空き家改修の補助金があり、移住者はその制度を使いながら、業者に頼んだり、DIYしたりして家を直している。 


上水や電気・ガスは通っているが、下水は通っていない。
トイレは汲み取り、台所やお風呂等の雑排水はなんと海に直で流れて行く。
直していれば浄化槽だ。

元リモートワーク民として気になるネット。光は通ってないため、衛星通信サービスのStarlinkを使っている。開けた空があればネットはサクサク。Starlinkは能登半島地震でも大活躍していたものだ。

通信キャリアはというと、docomoは島のどこでも繋がる。その他は場所による。
docomoのアンテナだけ、少し山を登った先にある。メンテナンスも来るであろう。アンテナを見つけたとき、「こんなところに作ってくれたのか、、」と感動した。

・ Amazon、島に届くの?

郵便や宅配は船が欠航しない限り、1日1回届く。もちろんAmazonも届く。

ポストに入る小さな郵便は、島のおじちゃんが毎日届けてくれる。
さっきまで野良仕事をしていたおじちゃんがその時間だけ郵便屋さんになり島を周る。個人的に大好きな瞬間。

ガラガラッ(玄関が開く音)
👴🏻「置いとくよう〜」
👧🏻「ありがとうございますー!」
ガラガラッ(玄関が閉まる音)

大きな宅配は港に取りに行く。
荷物が届く日は、フェリー会社の方が電話で一報をくれるので、船の時間に港に向かう。
意外にも離島料金はかからない。荷物も運が良ければ翌日or1日追加くらいで届く。便利すぎる世の中だ。

ちなみに島の引っ越しを引き受けてくれる業者はひとつも見つからなかった。島の人に聞くと、金額次第でサカイ引っ越しセンターが引き受けてくれるらしい。
個人的に興味があるのは、「離島引越し便」。移住前に知っていたら使いたかった。


・ ごみの日は月1回(もはやイベント)

ゴミの日はなんと月1回。
燃えるゴミも燃えないゴミも資源ゴミも全部まとめて月1回だ。
月1回だとよく驚かれるが、生ゴミはコンポストで堆肥化し、なるべくごみの出ない暮らしを心がけると、意外にも大きな1袋で済む。以前は週2回燃えるゴミを出していたのに、やろうと思えばなんでもできる。


ごみ収集車が島に上陸すると、島人によるゴミバケツリレーがスタートする。が、島人の結束力、一瞬で終わる。

読めない空気を読もうとしていつも出遅れるわたしには、ゴミバケツリレーに入る隙はない。
いつか、胸を張って「バケツリレー参戦成功!」と心の中で思いたい。

ゴミの最後は島で獲れた猪。男3,4人でごみ収集車に運ぶ。ゴミの日までは冷凍保存。
ちなみに、もちろん全部をゴミに出すわけではない。美味しそうな猪で、捌く島人が揃うとみんなで捌いて分け合う。捌くのは3時間以上かかる。
罠にかかった猪や、絞められた猪、捌かれる猪、さっきまで生きてたけど今から焼いて食べる猪。
ベジタリアンを考えるほど、命の大切さを体感できる。


・ ほどよい距離感の島人たち

島人はもちろんみんな知り合い。干渉はあまりしないからなんだか家族みたいな距離感。
港で会うと、
「いってくるね、いってらっしゃい。」
「ただいまー、おかえり」
が飛び交う。あったかすぎる大好きな港景色。

先日祖母が亡くなり、10日ぶりに島に帰ったとき、船に乗っているわたしを見つけた島のばあちゃんが小走りで駆けつけてくれた。
急な死に感情が追いついておらず、島のばあちゃんの顔見て初めて涙が止まらなかった。

そういえば引っ越した日も、当時はまだ知らない島人が何人も駆けつけ、あれよあれよと大型家電がお家に運ばれた。
でも何事もなかったかのようにすぐ解散。

島のばあちゃんたちはよくお野菜をくれる。
商店のない島には大変貴重な食料である。
そのときも、「ありがとう〜!!!」という感謝の言葉とお天気くらいしかしゃべらない。
もはや会話もなく、玄関にどさっと置いてあるときもある。

少し寂しさも覚えるだろうか。でもいろんなことを気にしてしまうわたしにとって、余計なことを考えなくて良い距離感は本当に心地よい。
ゆっくりと1人1人お互い負荷なく関係を築いていくことが理想だ。

意外にもさらっとしている人口20人の世界だが、定期的に島人たちが召集され、ごはん会が開かれる。
移住祝いの歓迎会という名目でなんだかんだ3回くらい会を開いてもらった。
NHKの「離島で発見!ラストファミリー」で島が特集されたときは、上映会兼すき焼きパーティをした。

めっちゃ楽しかったなあ。
MCの長濱ねるちゃんが「移住したい〜!」と発言していてアイドル好きとしてはギュンだった。もし気が向いたら是非移住してほしい。

ほど良い距離感で、
だけど支え合って、励まし合って、
1人1人違う形で島を守っている。
魅力に溢れた人たちとこの島で出会えてよかったと思う。



もっと不便に感じると思っていた島暮らしだが、
意外にもネガティブな感情は沸かず、
むしろ自然に近いところで暮らしを創る感覚が心地よい。

理想の暮らしと夢を描いて、地方移住第二弾、離島暮らしがスタートした。

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