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バザールとクラブ



リチャード・ローティーは、私たちが日常で遭遇するコミュニケーションの空間について、興味深い観察を提供しています。彼によると、社会的規範やルール、慣習に従い、建前で会話をする「公的なバザール」と、ホンネで会話ができる「私的なクラブ」という、二つの異なる空間が存在します。この区分は、私たちのコミュニケーションの仕方に深い影響を与えるものです。

ローティーは、公的なバザールが必ずしも悪で、私的なクラブが善であるとは断定していません。その理由は、私的なクラブの空間が自己を創造する大きな可能性を秘めている一方で、差別的な会話が生まれる可能性もあるためです。この二面性は、私たちがどちらの空間においても意識的に行動し、対話する必要があることを示唆しています。

公的なバザールでは、社会的な規範に従って行動することが求められますが、これは異なる背景を持つ人々が共存し、協働するための基礎を提供します。一方、私的なクラブでは、より自由な表現が可能であり、深い関係性や新たなアイデアが生まれる場となり得ます。しかし、この自由は、閉鎖性や排他性に陥る危険性もはらんでいます。

ローティーの指摘は、私たちがどのようにコミュニケーションを取るか、そしてどのような空間を作り出すかについて、深く考える機会を与えます。公的なバザールと私的なクラブのどちらにも価値があり、それぞれが持つ限界と可能性を理解することが重要です。私たちは、それぞれの空間の特性を活かしながら、より良いコミュニケーションと共生のためにどのように行動すべきか、常に意識的であるべきです。




【参考文献】
「NHK100分で名著・偶然性、アイロニー、連帯」

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