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【文字起こし】2021年04月13日 参議院 法務委員会 嘉田由紀子

(10:00あたりから)

嘉田由紀子議員

いつもお伺いしております離婚後の子どもの幸せづくりということで子の連れ去りの問題でございますけれども、前回通告させて頂いております法務大臣のご見解をお伺いしたいんですが、子の連れ去りを犯罪とするような刑法の改正、これはまず法務大臣どうお考えでしょうか。

上川法務大臣

現行法上の対象の件について申し上げたいと存じますが、我が国の刑法におきましては、未成年者を略取し、または誘拐をした者は、3月以上7年以下の懲役に処すると、これは刑法224条でございます。また所在外国に移送するという目的で人を略取し、または誘拐した者は、2年以上の有期懲役に処する、刑法226条ということで規定をされております。最高裁判例におきましては、親権者による行為であっても、他の親権者が監護養育している子をその生活環境から引き離して、自己の現実的支配下に置く行為は、今申し上げた略取誘拐罪の構成要件に該当し得るとされておりました。行為者が親権者であることは、行為の違法性が阻却されるか否かの判断におきまして考慮されるべき事情とされているところでございます。このように一方の親による子の連れ去りということにつきましては、現行法の下でも処罰の対象となり得るところでございますが、経緯やまたこの対応等を一切問わず、一律に違法性が阻却されないようにすることにつきましては、その場合の保護法益をどのように考えるのか、また民事法上の親権・監護権との関係をどのように考えるか、また現行の未成年者略取誘拐罪等による処罰範囲を超えて処罰することとすることの相当性につきまして、どのように考えるかなどの点も含めまして、慎重な検討を要するものというふうに考えられるところでございます。

嘉田由紀子議員

ご丁寧にありがとうございます。現行法の刑法224条・未成年者略取誘拐罪でも今の連れ去りについては刑法の対象にすることができると理解をさせていただきました。その中で少し入り込ませて頂きますが、この刑法224条の未成年者略取誘拐罪の保護法益はどう考えられるのでしょうか。政府参考人さんお願いいたします。

川原法務省刑事局長

お答えいたします。未成年者略取誘拐罪の保護法益につきましては、被拐取者、これはその誘拐されたり略取されたりする者ですが、「被拐取者の自由とする見解」、「被拐取者に対する保護者の監護権とする見解」、「基本的には被拐取者の自由であるが監護権も保護法益であるとする見解」など様々な考え方がございまして、一般に判例は最後の見解、すなわち「基本的には被拐取者の自由であるが監護権も保護法益であるとする見解」をとっているとされているところでございます。

嘉田由紀子議員

繰り返させて頂きますけれども、学説通説いくつかあるけれども、基本的には被誘拐者の自由・安全それから監護権も保護法益、つまり連れ去られた子どもの自由や安全そしてその時に引き離された親の監護権というものも保護法益の対象になるという理解をさせて頂きたいと思います。そういう中で、子の連れ去りに対する未成年者略取罪の適用範囲、これ先ほど色々な事例があるとおっしゃっておられたんですが、例えば離婚係争中とか別居中の夫婦あるいは離婚別居の話もない日常的な普通の日常の中で子どもが平穏の中に連れ去られたり、あるいは連れ戻されたりした場合、こういう時でも未成年者略取誘拐罪に問われる可能性があると考えて宜しいでしょうか。

川原法務省刑事局長

お答え申し上げます。犯罪の成否は捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断される事柄でございますので、お答えは差し控えさせて頂きたいと存じます。あくまで一般論として申し上げれば、刑法224条は未成年者を略取し、また誘拐した場合に成立するものとされております。そしてここに誘拐とは一般に欺罔または誘惑を手段として人を保護されている状態から引き離して自己または第三者の事実的支配のもとに置くことを言うものと理解されているところでございます。なお最高裁の判例におきましては、親権者による行為であっても刑法224条の構成要件に該当し得るとされており、行為者が親権者であることなどは行為の違法性が阻却されるか否かの判断において考慮されるべき事情とされているものを承知しております。

嘉田由紀子議員

ありがとうございます。ちょっとここはしつこく聞かせて頂きますけれども、一方で子どもを平穏に連れ去ったケースなどで一方の親の監護権など法的利益が侵害されている場合でも原則として刑事罰の対象にするとか、あるいは家庭内の紛争に対する国家の介入はできるだけ抑制するというそういう意見も様々法曹界にもございます。家庭裁判所の紛争解決機能を充実させることのバランス、家庭内に先ほど保護法益、子どもの自由や安全あるいは監護者の監護権というものが侵されているような場合、どうやってこの刑法の家庭内への介入とそれから家庭の自立というところ、どうバランスを取られるでしょうか。お考えを聞かせて頂けたらありがたいです。

川原法務省刑事局長

お答えいたします。子をめぐる家庭内の紛争の解決という観点からは、一般に家庭裁判所の紛争解決機能が重要であると認識しているところでございますが、ご指摘の刑事罰の対象とすることと家庭裁判所の紛争解決機能を充実させることのバランスという趣旨が必ずしも明確ではないように受けとれるところでございまして一概にお答えすることは困難でございます。ただいずれにしましても、先ほど大臣から答弁がございましたように、一方の親の子の連れ去りにつきましては、現行法の下でも処罰の対象となり得るところであり、経緯や対応等を一切問わず一律に違法性が阻却されないようにするということについては慎重な検討を要するものと考えております。

嘉田由紀子議員

ありがとうございます。今日刑事局長と民事局長がお二人おられて、まさにバランスをとって頂けるんだろうと思いますが、ただ実際に平穏な家族生活の中で突然子どもが連れ去られ、その時置いてきぼりになるのは7,8割、8,9割がお父さん、最近は女性お母さんも置いてきぼり食うことが多いんですけれども、いわゆる連れ去り連れ去られというようなことの中で、多くの中で家庭裁判所のバランスある判断をあてにしているんですけど、ここが実態はなかなか期待通りにならない、もちろん今の単独親権の下ですとどっちかに決めなきゃいけないから、もう単独親権制度そのものが親子の分断、父母の分断を構造的に決めている、私はこのことが大変問題だと最初から申し上げているんですけれども、ただそういうところにあって最後に法務大臣にお伺いしたいのですが、子の連れ去りによって子どもや子を連れ去られた親の法的利益が侵害されることを防ぐために、家庭内の紛争解決に刑事司法をどこまで委ねることが、あるいは国家が介入することが適切とお考えでしょうか。法務大臣のご見解をお願いいたします。

上川法務大臣

先ほど申し上げた通りでございますが、一方の親による子の連れ去りにつきまして、経緯やまた対応等を一切問わず一律に違法性が阻却されないようにすることにつきましては慎重な検討を要するものと考えております。刑法は法益保護のために用いられるところでございますが、一般に刑法の補充性や謙抑性といたしまして、法益保護の手段は刑罰だけではなく刑罰という保護手段は法的制裁の中でも最も峻厳なものであり避けることができるのであれば避けるべきものとの考えがあるものと承知をしているところでございます。もっともご質問頂きました家庭内の紛争解決に関しまして、具体的に刑事司法がどの程度介入すべきかにつきましては一概にお答えすることはなかなか困難であるというふうに考えております。

嘉田由紀子議員

ありがとうございます。この後家庭裁判所の役割あるいは様々な現場の皆さんの声を聞きながら次回に続けさせて頂きたいと思います。どうもありがとうございました。

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