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忘れたくない気持ち:今ほど「社長であってよかった」と思う時はない

毎日テレビで見かける安倍総理を見つめる私は気が気じゃない。

ああ、そこでこう答えちゃう?お、そこはそう言うのね。ん?マスク?いやぁ...それは。と。

私は特に政治に詳しい人ではない。取り立てて関心がある方かといえば、そうでもないだろう。私が気が気じゃないのは、それをついつい自分に置き換えるからだ。

私の会社はスタッフたったの9人の小さな会社だ。ちなみにミャンマーにある。よくわからないこの親近感を、一国のリーダーに覚えるのはどこかおこがましい...のはわかっているつもりだ。

ミャンマーにコロナ旋風が吹き荒れたのは3月の2週目ごろのこと。世界は大荒れにも関わらず、どういう政治的圧力か、はたまた信仰深い仏教徒が多いから神がこの国を守ったのか(そんなような発言を政治家がして国際的には問題になっていた)それまで感染者数0人という驚異的数字を叩き出していたミャンマー。国境をタイ・ベトナム・中国と持ち交流も盛んなこの国で、そんなわけはないことは、容易に察しがついたが、初の感染者発表は世間に比べて一足もふた足もゆっくりとやってきた。しかし、ある日突然に。

初の感染者がでたあの日からの、ミャンマー政府の対応のスピードは凄まじかった。まず陸路の国境封鎖、そして続いて外国人ビザの発給停止に、空港封鎖。1週間ほどで、あっという間に鎖国が完成した。

国内でも感染者に、まるで探偵でもつけているかというような、接触者のあぶり出しと公表。そして地区単位、道単位、ビル単位でのロックダウンを国やら地域の自警団やらビルのオーナーさんが次々と実施。そしてこれらの政策は毎回、あと●時間後から実施します、というようなスピード感で行われた。

「今日のルール」は「明日のルール」ではない。

そうこう私たちは振り回されながらも、それでも、我が国が「緊急事態宣言」を出すとか出さないとか、わちゃわちゃやっている間に、この国のリーダーたちは決断し、アジアの片隅の国「ミャンマー」を守ろうとしてきた。

それは必ずしもポジティブなことだけではない。いきなり仕事がなくなったり、いきなりお店が閉まったり、いきなり銀行でドルが引き出せなくなったり、いきなり自国に帰る手段を奪われたり、ミャンマー人、そこに住む外国人関係なく、それ相応の人たちが振り回され、噂に惑わされ、デマに翻弄された。


その余波は、少なからず(いや、少なからずどころではない)、この小さな会社HerBESTにもやってきた。

ある朝出勤すると、一番年長のスタッフが真剣な顔でいう。
「私はクビですか」と。

その横で別のスタッフが言う。
「今すぐ全員仕事を休ませてほしい」と。

そして、また別のスタッフが言う
「給与がなくなるのは困ります。だから仕事を続けてほしい。私は家族を守らなければならないから」

結局会社の中は大荒れ。スタッフ同士が大げんか。そして全員が、最終的に私の顔をみていうのだ。「さぁ決断を」と。

この景色どこかでみたことがある。そう紛れもなくそれはお昼のワイドショーだったし、そして荒れ狂っていた私のtwitterのTLだった。そう、ここは9人の国だ。スタッフたちはリーダーである私が、どう決断し、どんな言葉を話すのか、そのプロセスをじっとみている。私が安倍晋三なのか、私がアンサンスーチーなのかと。

結局HerBESTは、その後も営業を続けている。この先なにがあっても、最低補償する給与を提示し、いわゆる「密」を避けるために出勤体制も変え、時間帯を変更、公共交通機関ではなく自社の車での送迎に変えた。ここに至るまでにスタッフとなんども話あったし、お客様への説明を繰り返した。

たった9人の会社のリーダーである私が、これだけてんやわんやしたのだから、安倍さんが大変であることは言うまでもない。スーチーさんだって大変だ。そしてそれがあなたの仕事だ、といわれれば、その通りだ。

世の経営者の中には今回のコロナ禍で、経営が困難になってしまった会社さんもあるだろうし、今も試行錯誤している会社さんもあるだろう。

こんな風になるなら、こんなリスクを背負うなら経営なんてしなければよかった。リーダーになんてならければよかった。そんな風に思ってしまいたくなる気持ちがわからないでもない。(もしかしたら安倍さんも、そう思っているかもしれない)。

でも私は、例えば今回のことで全てが振り出しに戻ってしまったとしても、やっぱり経営をしていてよかった。自分にとっての小さな国を持っていてよかった。

なぜなら私は私の責任において「守る」ことができる。
たった9人とはいえ、誰かの生活を、今この瞬間、守ることができる。
誰かに給与を支払うってそういうことなのだ。

今ほど「社長であってよかった」と思う時はない。

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ミャンマーでハウスキーピングの事業をしています。慣れない国での葛藤や経営の難しさ、毎日の中にある喜びを、小さなことから大きなことまで伝えていきます。

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