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ブリュノ・クレメール主演 メグレ警視30「野菜畑事件 Meurtre dans un jardin potager」(1999)紹介と感想

原作:ジョルジュ・シムノン『フォンシーヌの喪』(1945)
脚本:ピエール・グラニエ=デュフェール、ドミニク・ルレ
監督:エドヴィン・バイリー
時間:89分


あらすじ

ヴァンデ県にある村の野菜畑で身元不明の男が射殺された。
男を射殺した銃は、先週パリで人を殺していたため、事件の捜査にメグレが派遣された。
パリで殺された男はコルダと言い、昔は事件が起きた野菜畑の辺りに住んでいたらしい。
現在の畑の共同所有者であるシルエ姉妹は仲が悪く、家を分割して悪口以外の会話は交わさずに住んでいる事で有名だった。
フーリー家とシルエ家、メグレはこの2つの家に目を付けて捜査を行っていく。


視聴記録

原作はポケミスで20ページ程のノンシリーズ短編で、憎しみ合っている姉妹の関係をユーモアとペーソスを入れ混ぜて描いています。

そのため、原作では犬殺しはあっても殺人は描かれず、「マダム・キャトルと子供たち」と違い、ドラマで起きる事件は完全にオリジナルのものとなります。

30分ほどドラマオリジナルのメグレの捜査が描かれてから、満を持してシルエ姉妹の登場になります。
姉妹の仲の悪さが良く映像化されており、原作では裁判の理由となっていた敷地を分ける壁の上からものを投げつけているシーンも再現されていました。

フォンシーヌと結婚したアントナン・ブレカールの設定が原作から変わっており、彼の存在がシルエ姉妹を現在の事件へとつないでいました。

メグレ周りの描写では、アメリカへ行ったことあるとドラマ内で語られました。また、メグレ夫人と夫婦喧嘩は起きないとピカール中尉に語っていましたが、それは夫人が賢いからと言う事でしょう。

若者の軽薄な行動と、憎しみに満ちた姉妹の悲哀がブレンドされた事件でした。
原作とは味わいが全然違うものになっており、姉妹から着想を得たオリジナルエピソードという感じのドラマです。

事件の本当の真相に気づいているのは、メグレと犯人だけ。季節外れの大雨の中、感傷的にドラマは幕を閉じます。

原作を意識しないでドラマ単独で見ると楽しめますが、やはりメグレシリーズを使わず、あえてこのノンシリーズ短編を使用するという事を問答無用で納得させられる程の力は感じることができなかったのが残念です。


※ちなみに、第1話から第30話までのDVDに入っている長島良三さんの解説は、概ねドラマと関係ない今まで様々な所で語ったメグレについての解説が多く常に自由なのですが、『メグレの初捜査』について「マダム・キャトルと子供たち」「野菜畑事件」の2枚で前後編として語るのは自由すぎます。
ノンシリーズ短編が原作となるため、原作の説明などが欲しかったところです。


キャスト

   ジュール・メグレ/ブリュノ・クレメール

 フォンシーヌ・シルエ/ジュヌヴィエーヴ・フォンタネル
 フェルナンド・シルエ/ミシェル・シモネット
     ピカール中尉/レミ・キルシュ
      パチュレル/クリストフ・クロシュキン
    ルイ・フーリー/マルタン・アミック
ジャニーヌ・ジュベール/マルティ・ナヒュル
      フーリー婆/ルネ・ル・カーム


ブリュノ・クレメール主演シリーズ視聴記録

☆がお気に入り、〇がお気に入りには後一歩だけど楽しめた作品、△が思うところはあるけどドラマとしては悪くない作品です。
全て現時点での評価になります。

〇01「メグレと消えた死体」(1991)
 04「モンマルトルのメグレ」(1992)
☆05「メグレと首なし死体」(1992)
☆06「メグレと深夜の十字路」(1992)
☆07「ホテル・マジェスティックの地下室」(1993)
☆08「メグレたてつく」(1993)
☆11「メグレと宝石泥棒」(1994)
〇12「メグレと幽霊」(1994)
☆16「メグレと老婦人」(1995)
〇17「ローソク売り」(1995)
☆19「サン・フィアクル殺人事件」(1995)
☆21「男の首」(1995)
☆23「パリ連続殺人事件」(1996)
☆25「聖歌隊少年の証言」(1997)
△29「マダム・キャトルと子供たち」(1999)
△30「野菜畑事件」(1999)
△31「ジュモン51分の停車」(1999)
△32「メグレは二つに見える」(2000)
〇36「開いた窓」(2001)
△37「メグレとワイン商」(2002)
 38「メグレと政府高官」(2002)
〇40「メグレと奇妙な女中の謎」(2002)
☆41「メグレと田舎教師」(2002)


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