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三屋清左衛門残日録07「ふたたび咲く花」(2023)紹介と感想


あらすじ

清左衛門は、道場前で子ども達が喧嘩をしている所へ行き交う。
柘植俊吾という少年が、他の子ども達に喧嘩を吹っかけているらしい。
問題の仲裁を頼まれた清左衛門は、父・柘植孫四郎に接触するが取りつく島もない。
孫四郎は、8年前の護衛任務の失敗や、半年前の妻との離縁により心を塞いでいた。
俊吾は、身体の悪い祖母の面倒を見ながら、そんな父のことも気にかけていた。
清左衛門は、俊吾と少しずつ交流を重ねながら、不審な点がある8年前の事件についても調べを進めていく。
家族の想いも、事件の謎も、様々なものが複雑に交差する中、清左衛門は藩政の闇に踏み込んでいく。

紹介と感想

毎年の楽しみの一つ、三屋清左衛門残日録シリーズの最新作です。
御年80歳になっても矍鑠としている北大路清左衛門の活躍を見ていると、こちらも元気を貰えます。
ピシッと背筋を伸ばして綺麗に正座ができるのは、本当にすごいと思います。

藩政が絡む陰謀により一つの家族がバラバラにされてしまいます。
しかし、清左衛門が関係者の一人一人と話すことで、少しずつ事態は整理されていき、孫四郎も前を向くことができるようになっていきました。

金と権力が絡む派閥争いは、それ自体が目的になり、その先にある政治本来の意味が欠けてしまう。
立場の低い者は、より政治的に上位の存在により簡単に切り落とされてしまう。

そんな醜い争いに、一つの家族が巻き込まれた後味の良くない事件でしたが、家族それぞれがお互いを思いやり続けることで、最後は一つに戻れたことが救いです。

今回の事件では、「人の期待に応えようとする呪い」が至る所に出てきていましたが、そればかりを思いつめると、結局は自分を見失い、最後には自分が想っている他者との縁も切れたり、その他者に切られたりしてしまうのだと思います。

現代の他のドラマでは中々味わえない、ゆったりと静かな空気で展開する人情の物語。今年も楽しませてもらいました。
また、お馴染みの顔が揃って新作が作られることを願っています。

「高名な派閥の争いはあってしかるべき。
 されど、我を押し通し、血を流して勝ち取った権勢も、どこまで続くか。
 争うその先に、国、民の安寧はありますまい」

朝田弓之助へ三屋清左衛門が伝えた言葉

作品概要

原作:藤沢周平「山姥橋夜五ツ」『三屋清左衛門残日録』
脚本:いずみ玲
監督:山下智彦
音楽:栗山和樹
時間:94分

キャスト

レギュラー
三屋清左衛門/北大路欣也
  佐伯熊太/伊藤四朗
 三屋又四郎/松田悟志
    里江/優香
    みさ/麻生祐未
 朝田弓之助/金田明夫
 中根弥三郎/栗塚旭

ゲスト
野々村新蔵/勝村政信
柘植孫四郎/甲本雅裕
   瑞江/清水美砂
 柘植寿万/銀粉蝶
 柘植俊吾/一ノ瀬 嵐
 吉崎伊織/国広富之
小出徳兵衛/堀部圭亮
鳥飼宇之助/石井正則
 恩田作摩/大和田伸也


シリーズ一覧

01.三屋清左衛門残日録 登場篇(2016)
02.三屋清左衛門残日録 完結篇(2017)
03.三屋清左衛門残日録 三十年ぶりの再会(2018)
04.三屋清左衛門残日録 新たなしあわせ(2020)【原作:静かな木】
05.三屋清左衛門残日録 陽のあたる道 (2021)【原作:闇討ち】
06.三屋清左衛門残日録 あの日の声(2022)
 【原作:闇の声、桃の木の下で】
07.三屋清左衛門残日録 ふたたび咲く花(2023)【原作:山姥橋夜五ツ】

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