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アルマナック・デマの検証

註:この記事は、はてなブログの方で先に公開してあるものをそのままコピペしただけの記事です。


アルマナック・デマとは何か?

ネット上のホロコースト否定派は、このデマを頻繁に使用します。どうしてこんな馬鹿馬鹿しい話をデマだと見抜けないのか? 私にはよくわかりません。内容の詳細が分からなくとも、「そんな馬鹿げた話があるわけがない、何かの間違いだろう」くらいには即座に考えるはずだと思うのですが、不思議なことに、そう考えない人たちがいっぱいいるのです。そこが未だにマジでよく分からない。

何に致しましても、本当に馬鹿馬鹿しいデマであることは確かです。戦後、東西冷戦になって、ホロコーストの詳細がよくわからなかった時代なら、こうしたデマもそれなりに少しは価値があったかもしれません。しかしもう、戦後およそ80年にもなろうかとしているのに――っていうか、本当にデマって消えないのだなぁと考えさせられる一件でもあります。

今回は、多少はやはり既存の研究に頼らざるを得ませんが、私自身の調査・考察を大幅に加えた上でアルマナック・デマについての記事を起こしました。

まずは、そのアルマナック・デマの内容を以下のブログ記事から引用します。色々とバリエーションはあるようですが、どれもこれも似たようなものなので。

世界のユダヤ人

第2次世界大戦(1939年~1945年)前 1938年版世界年鑑
   16,588,259人―①
第2次世界大戦後 
ニューヨーク・タイムズ(1948年2月22日号)推定
1500万人ー② ~ 1800万人ー③
だが、戦前のヨーロッパ在住のユダヤ人650万人ー④。
その9割の600万人をナチスが殺したとすればどうなる? ⑤

ヨーロッパの650万人(④)のユダヤ人のうち、600万人が殺されたら、戦後の世界のユダヤ人は1000万人台に減少していなければ勘定が合わない。
 ①-④≒1088万人
然し、戦前と戦後のユダヤ人の人口には、大きな変化は見受けられない。
(戦後、1500万人② ~ 1800万人③)

換言すれば、第二次世界大戦で死んだユダヤ人は少なく、非ユダヤ系ポーランド人が大量に死んだと言える。大半のユダヤ人はアメリカなどに逃げたのである。

このことには、下記の資料でも裏付けられる。
   ▽
『ワールド・アルマナック』 (The World Almanac世界データ事典)
◆ユダヤ人世界総人口
1924年版 15,286,000人
1939年版 15,290,983人
1940年版 15,319,359人
1945年版 15,688,259人
1948年版 15,713,638人

戦後、マイナス600万人どころか、逆に40万人も増えている。
   △
何故にこのような捏造が為されたのか?

結論から言えば、第二次世界大戦はユダヤ人国家『イスラエル』(1948年独立宣言)を創るための茶番劇だったので、それを隠すために歴史が捏造された。

簡単に言えば、戦前の世界ユダヤ人人口よりも戦後の方が多いので、ユダヤ人は減っているどころか増えているのだから、ホロコーストはなかった、とするものです。

……アホか、と一笑に付して仕舞えばいいだけの話なのですが。

戦前のヨーロッパのユダヤ人人口が650万人?

さて、まず、アルマナックとは関係のないウソを先に指摘しておきます。「戦前のヨーロッパ在住のユダヤ人650万人」とありますが、これは否定派のバイブルの一つであるリチャード・ハーウッドの『600万人は本当に死んだのか?』にあるウソです。私がずっと前に適当訳したハーウッド本には、

チャンバース百科事典によると、戦前のヨーロッパに住んでいたユダヤ人の総数は650万人であった。

と書いてあります。確かにチェンバース百科事典には「650万人」の数字が書いてあるそうですが、こう書いてあるのだそうです。

ロシアは西部域がおそるべき災厄をこうむったが、そのロシアは別としてヨーロッパ大陸では、数的にはとるに足りぬ中立国のユダヤ人社会がほんのひと握りだけ、難を逃がれただけであった。そして、一九三九年時点で、ナチ支配地に居住していたユダヤ人六五〇万のうち、六年後に戦争が終った時点で生き残っていたのは、わずか一五〇万にすぎなかった。

デボラ・E・リップシュタット、『ホロコーストの真実(上)』、恒友出版、1995年、p.244:強調は私。

ハーウッドが述べている650万人には、書いてある通りソ連(ロシア)のユダヤ人は入っていません。このことは、ハーウッドのお仲間であるはずのIHR(歴史評論研究所)も指摘しています。

チェンバーズ百科事典が扱っているのは、ロシアを除くヨーロッパ大陸に住むユダヤ人の総数であって、パンフレットが述べているような戦前のヨーロッパに住むユダヤ人の総数ではない。

Did Six Million Really Die? -- Part 8

事実を捻じ曲げて嘘を書くのがハーウッドのやり方です。戦前のロシアを含めたヨーロッパのユダヤ人人口は概ね950万人程度であるとわかっています。

ニューヨーク・タイムズの戦後のユダヤ人世界人口推定が1500万人~1800万人?

これは何かというと、以下のニューヨークタイムズの記事にあります。サブスクしないと読めないので、読みたい方はサブスクして下さい。

Armies for Palestine; Need for International Force of 70,000 Believed Indicated as U.N. Faces Decision - The New York Times

この話は昔の修正主義者界隈で出回った結構古いデマのようで、反修正主義者の老舗サイトであるNizkorに丁寧に解説した記事が残っていましたので、少し長いですが以下に紹介します。

ベン・フリードマンについて調べたことがある。私の研究の文字化けしたものをalt-revisionismに投稿したが、参考までにここにコピーを掲載する。

ベン・フリードマン、アーサー・バッツ、そしてエンバラスド・リビジョニストたち
これはかなり複雑な話だが、論理的な順序で紹介してみた: ベンジャミン・ハリソン・フリードマンは、1959年5月1日に出版された『コモン・センス』にこう書いている:

「1948年2月22日、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、1947年の秘密国勢調査に基づく数字を発表した。それによると、1947年の世界のいわゆる「ユダヤ人」の数は、最小で16,150,000人、最大で19,200,000人であった。1948年2月23日、NYタイムズの発行人であるアーサー・ヘイズ・サルツバーガー氏の好意により、筆者はボールドウィン中佐のオフィスでボールドウィン中佐[注:当時の『タイムズ』紙の軍事担当編集者で、日曜版に毎週コラムを書いていたハンソン・ボールドウィンのこと―― これはこの後の議論でも重要になる。]と会談し、NYタイムズが1948年2月22日に発表した数字を完全に裏付ける資料を調査した。筆者は、NYタイムズ紙が世界各地の事務所を通じ、また各国の政府や宗教団体の協力を得て実施した調査の結果を収めたファイルを閲覧することを許された。」

ところで、ベン・フリードマンとは誰?
ベンジャミン・ハリソン・フリードマンは、今日のユダヤ人は聖書に登場するユダヤ人の子孫ではなく、7世紀にロシア南部を占領していたアジア系民族(モンゴル系も含む)のハザール人の子孫であり、彼らはユダヤ教に改宗したという説の創始者である。彼は1890年にニューヨークでユダヤ人として生まれたが、自らをファシストと呼び、「名誉アーリア人」と称した。第二次世界大戦が勃発すると、彼はヒトラーを支持し、ドイツが戦争に勝つと予言した。[フリードマンについての詳細とハザール人説の否定は、リクエストに応じて入手可能である。]

なぜフリードマンの数字が重要なのか?
ベンの「最低1615万人、最高1920万人」という数字は、戦後ユダヤ人の数が増加したことを示すためのものであり、ホロコーストの死者数が誇張されていたことを証明するものであった。 この数字は、長年にわたってさまざまなホロコースト修正主義者たちによって取り上げられた(通常、何らかの理由で1,500万人から1,800万人に四捨五入された)。

例えば:
アメリカ・ナチ党の故総統ジョージ・リンカーン・ロックウェルは、1966年4月に『プレイボーイ』誌のインタビューに答え、ハンソンの数字――ただし、高い方(1800万人)だけ――を引用している――そして、ヒトラーが絶滅させた600万人のユダヤ人を加えて、1948年の世界のユダヤ人人口は2400万人となる。彼は2400万人と1939年のワールド・アルマナックのユダヤ人人口を比較している: 15,688,259人と比較し、1939年から1948年の間に8,311,741人のユダヤ人が地球上に出現したことを証明しようとしている。

もうひとつ(より関連性の高い)例を挙げよう: 1976年、アーサー・バッツは『20世紀のデマ』を書いた――ホロコーストはシオニストの陰謀であり、600万人のユダヤ人はナチスの手によって死んだのではないとする本である。その本の中で、戦前と戦後の人口数についての議論(p13)の中で、バッツはこう述べている:

「N.Y.タイムズの軍事専門家であるハンソン・ボールドウィンは、1948年に書かれた記事の中で、国連などで入手可能な情報を基に、当時間近に迫っていたアラブ・ユダヤ戦争について、世界のユダヤ人人口を1500万から1800万人という数字と、パレスチナのユダヤ人、中東のユダヤ人、パレスチナのアラブ人、アラブ人全体、モスレム全体などの数字を挙げている(脚注6)。」

ハンソンの48年2月22日付の記事(NYタイムズ4面)のタイトルは「パレスチナに軍隊を」だった: 国連が決断を迫られるなか、7万人の国際部隊の必要性が示唆された」(これはアラブ・イスラエル戦争の可能性に関する記事である)。本文にはこうある:

「. . . パレスチナのユダヤ人居住区は、アラブ人に囲まれた飛び地である。パレスチナには65万から70万人のユダヤ人と約125万人のアラブ人がいる。さらに50万人のユダヤ人が中東の他のアラブ諸国に居住している。サウジアラビア、エジプト、シリア、レバノン、イラク、イエメン、トランス・ヨルダンのアラブ人口は3,000万人以上である。これらの国々では、ユダヤ人は世界の1,500万から1,800万人のユダヤ人と宗教の絆で結ばれており、アラブ人のほとんどは世界の2億2,100万人のモスレムと宗教を共有している...」

[注:文脈を見ると、ボールドウィンはさまざまな人口の数字に文字通りの数字(つまり125万人)を示す一方で、ユダヤ人の推定人口には比喩的な数字(つまり「1,500万人から1,800万人」)を示していることがわかる。 この記事のために正確な数字を出すことは重要ではないと考えていたようだ。皮肉なことに、彼はモスレムに比べてユダヤ人がいかに少ないかを示そうとしていたのだが、それはまた別の話である。]

フリードマン氏の話に戻ろう。彼の「秘密の国勢調査」、サルツバーガー氏とボールドウィン氏との面会、そして「NYタイムズ紙が世界各地の事務所を通じ、また各国の政府や宗教団体の協力を得て行った調査の結果を収めたファイル」の捜索を覚えているだろうか? 注:フリードマン氏は、2月23日(月)にタイムズのオフィスに行ったという。新聞が出たのは22日の日曜日。かなりフットワークが速いぞ?

この事件に関して、私たちは他に何を知っているのだろうか?
『Hoaxers』(Branden Press、1970年)の著者であるモリス・コミンスキーは、ボールドウィン氏に手紙を書き[[注:これはバッツの出版日である1976年より前の話である]、次のような返事を受け取った:

「親愛なるコミンスキー様、
1月6日付のお問い合わせのお手紙、ありがとうございました。
この記事に掲載されている世界のユダヤ人人口の数字は、1948年版のワールド・アルマナックによるものです。その後、私たちはアメリカ・ユダヤ人委員会やその他の情報源と照合し、前回の手紙に記したように、戦時中のヒトラーによるユダヤ人の大虐殺によって、ユダヤ人の人口は今日おそらく1200万人にまで減少したというのが当局の見解である、と訂正しました(2/26/48)。
フリードマン氏が私と会ったとしても、私は覚えていません。問題は、あなたが19年前の出来事について話しているということです。私は年間何百人もの人に会っていますが、その多くはほんの数分しか会っていません。だから、フリードマン氏に会っていないと断言することはできませんが、もし会っていたとしても、私にもアシスタントにも何の印象も残りませんでした。
フリードマン氏の言う書類調査というのが何を意味するのかわかりませんが、私の知る限り、この問題に関係する書類は特にありませんでした。
もし他にお知りになりたいことがあれば、ご遠慮なくまたお書きください。
敬具、ハンソン W. ボールドウィン(ミリタリーエディター)」

まとめ:
「秘密の国勢調査」もなければ、「NYタイムズ紙が世界各地の事務所を通じ、各国の政府や宗教団体の協力を得て行った調査の結果を記したファイル」もない。編集に任命された元軍人が、ワールド・アルマナックで数字を調べただけなのである。フリードマン氏は、自分の主張を証明しようと躍起になったがために、知らず知らずのうちに、事実を確認しようともしない人々によって連鎖的に誤りが広まった。

修正主義者や人種差別主義者の主張を検証していると、多くの場合、誤りや文脈を逸脱した引用、データの選択的提示が見つかる。基本的な信条を論破するのがこれほど簡単だと、修正主義者の主張を真剣に受け止めるのは難しい。

Background data, Freedman Benjamin - Nizkor

こうしたデマが、今回テーマにしているアルマナック・デマの起源であるらしいです。しかしそれでもまだ、陰謀論めいた作り話を入れてあるだけまだいくらかマシというものです。現代のアルマナック・デマはこれより遥かに低レベルの酷いものです。

アルマナックのユダヤ人人口ってどんな感じなの?

さて、まず知らなければならないのは、ワールド・アルマナックって何?って話です。

『ワールド・アルマナック・アンド・ブック・オブ・ファクツ』(World Almanac and Book of Facts)は、アメリカ合衆国で発行されている年鑑であり、その年の世界の変化や出来事、スポーツの偉業を掲載している。1868年に創刊され、1876年から1885年までの中断を挟んで毎年刊行されている[1]。

ワールド・アルマナック - Wikipedia

ワールド・アルマナックはアメリカではよく知られていますが、アメリカ人以外にはそれほどは知られていないようです。日本で言えば『現代用語の基礎知識』みたいなものだと思いますが、それ一冊あればその年の世界のことは大体わかるデータブックとして、アメリカでは広く一般的に知られています。

余談ですが、今回この記事を書くきっかけになったのは、近所の図書館に1933〜1949年ごろのワールドアルマナックが置いてないかな?と思って、検索してみたら1945年のものが一冊だけあったのを見つけたことです。

ハードカバー版もあるそうですが、これはいわゆる簡易なペーパーバック版です。洋書のペーパーバック版って、紙質が非常に悪いので、図書館で大事に保存されていても、78年も経つと、本当にそーっと触らないと、簡単に破れてしまいます。実際、今回図書館で閲覧している最中に数ページほど、端っこだけですけど数箇所破ってしまいました。以前に、アメリカから取り寄せた『死の軍団』は1983年版ですが、これよりはるかに酷くボロボロで、自力でのスキャン取り込みを諦めた経験があります。

さて今回記事のテーマにしている、アルマナック・デマとは、要するに上の他記事から引用した中に書いてある、ワールドアルマナックに掲載されているユダヤ人世界人口を使って、ユダヤ人人口が減ってない!とするものであることは述べた通りですが、では具体的に、アルマナックにはどのようなユダヤ人人口のデータが掲載されているのかを知っている日本人って、あんまりいないと思います。特にネットのいるようなホロコースト否定派は全然知らないでしょう。

アルマナック・デマの簡単な解説については以下にあります。

解説及び反論自体はこれだけで事足りるとは思うのですが、どーも、やっつけ仕事感が拭えない記事でもあります。内容としては十分ではあるものの、それほど詳細には解説していないんですよね。アルマナック・デマ自体がよほど馬鹿馬鹿しかったのではないかと思われます。例えば以下のような記述があります。

反否定派の中には、ツイッターユーザーが引用した15,753,638という数字はアルマナックに掲載されていないと主張する者もいる。AJCのデータセットにはないが、掲載されており、これは間違いである。アルマナックも時には、否定派が使うような独自の推計値を掲載することもあった。問題は、アルマナックがこれらの推定値の出所を明記していないため、全く役に立たないということだ。おそらく、新しいセンサスがない中で、戦前のデータに基づいて、人口動態の変化を考慮しないまま、純粋に仮説として計算されたものであろう。これをホロコーストの「反証」に使うのは、量子力学の「反証」に[要出典]でいっぱいのウィキペディアの記事を使うようなものである。

掲載されてるっていうんだったら、どこに掲載されているのか示して欲しいところです。これがこの記事では説明されておらず、「どういうこと?」となるところでもあったのです。値が異なる同じ年のユダヤ人世界人口が掲載されているってどういうこと?ってことです。

ワールド・アルマナックに掲載されている世界ユダヤ人人口は「二つ」ある。

以前に1926年までのアルマナックならネットで閲覧可能なことを知って、確認してみたところ以下のような表(1926年版)を見つけています。見てわかる通り、これは宗教別人口表です。この中にユダヤ人の世界人口が書かれているのです(赤枠)。

1926年以前のいくつかのワールド・アルマナックも確認してみましたが、確認した限りでは、宗教別人口表以外はありませんでした。例えば、冒頭付近で引用紹介した記事の中にある1924年の値も、宗教別人口表の中にあるものであり、宗教別人口表しかありません。確かに1924年版は世界ユダヤ人人口を、15,286,000人としています・

ネットでは1926年以降が公開されていないので詳細はわからないのですが、どうやら、1926年以降の何れかの年からは、世界ユダヤ人人口の詳細表も掲載するようになったようなのです。それが例えばHCの記事にある以下の表(1948年版)だったりします。

では、今回私が近所の図書館で見つけてきた、1945年版のアルマナックではどうなっているかというと、まず宗教別を以下に示します。

上記のとおり、1945年の宗教別人口表ではユダヤ人世界人口は15,192,089人です。ただし、表の欄外下にある表記には、このユダヤ人世界人口の出典がないことにご注意ください。1924年版や1926年版の宗教別表の下には出典がH.S.リンフィールド氏によるものだと書いてあります。
では、1945年版のアルマナックにある世界ユダヤ人人口の詳細表はどうなっているかを以下に示します。ちなみに、上の宗教別版と違って色が茶色いのは、図書館でコピーしてきた用紙を無くしてしまい、念のためと思ってスマホで撮っていたからです💦

見ての通り、世界ユダヤ人人口の詳細表では15,688,259人となっており、宗教別人口表の値とは異なっています。また、世界ユダヤ人人口の詳細表の上部には出典が明示されており、次のように書かれています。

国内外のユダヤ人
出典:入手可能な最新データからの編集。1938年、アメリカ・ユダヤ人委員会、米国シナゴーグ評議会ユダヤ人統計局、H.S.リンフィールド所長作成。
世界のユダヤ人、国別
下表の数字を出しているアメリカ・ユダヤ人委員会は、1939年の世界のユダヤ人人口を次のように推定している: ヨーロッパ8,939,608人、アフリカ598,339人、アジア837,809人、オーストラリア27,016人、アメリカ大陸5,283,487人、世界合計15,688,259人。

そう、この世界ユダヤ人人口の詳細表に書かれている1945年の世界ユダヤ人人口である15,688,259人は、1939年の世界ユダヤ人人口推定値だったのです。実はこれは、その二つ上にある1948年版の世界ユダヤ人人口の詳細表にも全く同じことが書かれており、数字も全く同じです。

つまり、1945年と1948年の世界ユダヤ人人口の詳細表しか確認してはいないものの、1939年から1948年までは、アルマナックにあったであろう世界ユダヤ人人口の詳細表にある世界ユダヤ人人口値は全て、1939年の世界ユダヤ人人口推定値の15,688,259人しか掲載していなかったことがほぼ確実だと考えられます。

「え?でも、その期間内で値が違っているのもあるじゃん」と指摘する人もいるかもしれません。最初の方で引用した記事の中にはこう書いてあるからです。

◆ユダヤ人世界総人口
1924年版 15,286,000人
1939年版 15,290,983人
1940年版 15,319,359人
1945年版 15,688,259人
1948年版 15,713,638人

1939年は15,290,983人、1940年は15,319,359人、1948年は15,713,638人ですから、15,688,259人ではありません。しかしこれはすでに述べた通り、宗教別人口表の方の値であると考えられます。実際、1948年の世界ユダヤ人人口の詳細表では15,688,259人であり、上の数字とは異なっています。

1939年〜1948年までのすべてのアルマナックを調査出来ていないので、モヤっとする感覚を持たれる方もいるかもしれませんが、アルマナックにある世界ユダヤ人人口データの出典になっているアメリカ・ユダヤ人委員会(AJC)のYear Bookで事態は明確になりますので、以下をお読み下さい。

要はこれに書いてある通りで、AJCでは、1939年以降、1945年までのユダヤ人人口を統計値としては出しておらず、1946年の値としてやっとユダヤ人人口の統計値を出せたのです。当たり前のことですが、第二次世界大戦だったからです。アルマナックにあるデータの出典元のAJCがそう言っているのですから、それを認めるしかありません。

今回の記事は以上ですが、今後もし、1939年〜1948年頃の未入手のワールド・アルマナックを参照できる機会があったら更新するかもしれませんので乞うご期待!(期待しなくていいですw)東京大学法学部の図書館にはその頃のアルマナックは全部あるようです。私には行けませんし行く気もありませんw

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