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やや中途半端な作りがもったいない/結成10周年記念本「10 BABYMETAL LEGENDS」

BABYMETALの結成10周年を記念して発売された『10 BABYMETAL LEGENDS』(ぴあ,2021年)を読了。著者はBABYMETALのプロデューサーKOBAMETAL。

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結論から言うと,本書は完全にファン向けのコレクターズ・アイテムだと思う。

全219ページのうち前半の133ページがKOBAMETALによる回想録で,残りは各LEGEND(ライブ)の写真という構成だが,今までに各種雑誌やWebメディアなどに掲載されてきたBABYMETAL(KOBAMETAL含む)のインタビュー記事を熱心に読んできたBABYMETALのコアなファンにとっては,目新しい記述はほとんどないと言っていい内容だ。数々の伝説(ライブ)の裏側が詳細に語られているわけでもなければ,知られざるエピソードが満載というわけでもない。ついでに言えば,写真も既出のものばかり。期待を過剰に膨らませて予約購入したファンの心は一瞬ざわつくかもしれないが,印税は今後の活動費に充てるとKOBAMETALは言っているので,「これは“お布施”である」と納得するしかないだろう。

一方で本書は,鍵になるライブを起点にしてBABYMETALの10年に渡る活動の歴史をざっとおさらいできるという意味では,最近になってBABYMETALを知った新規ファンや,それほど熱心ではなかった人たちに向けた内容と言えなくもない。ただしそのようなライト層向けの書籍としては,定価1,870円という価格設定が何とも微妙。かなり割高なのではないかというのが正直な感想だ。

コンテンツの鮮度と価格のバランスから,本書はやはりファン向けのコレクターズ・アイテムなのだと思う(BABYMETALの歴史書を所有しているという喜びは,ファンにとっては何ものにもかえがたい)。

巻末にはBABYMETALの活動年表がまとめられている。「10 BABYMETAL LEGENDS - EXHIBITION -」の会場で掲出されていた年表と同種のものと言えるが,BABYMETALの活動を手軽にざっと確認できるので有用だ。実はこれこそが本書最大のセールス・ポイントかもしれない。

BABYMETALのメディア戦略には多くの制約が課されることはファンにとっては周知の事実。したがって,ライブを起点にして10年の活動を振り返るにしても,“知られざるエピソード”が今さら明かされることはないだろうということもまた,私を含め多くのファンにとっては想定内だったのではないかと思う。しかし個人的には,なぜKOBAMETALが前面に出てきて語るのかが腑に落ちない。まるでブログでも書いているような軽い文体の文章は,BABYMETALの神秘的な世界観とは決してマッチしているとは思えないので,なおさら違和感がある。BABYMETALの公式な“歴史書”とするならば,むしろキツネ様(The FOX God)が語るというスタイルにして,文体もそれなりに整えた方が良かったのではないか。ついでに革表紙にして古文書のような重厚な装丁にすれば,もっと魅力的になったと思うのだが。

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※Bloggerからの転載です。

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