見出し画像

レビュー/BABYMETAL「LEGEND - METAL GALAXY -」(Blu-ray&CD)ネクスト・レベルに突入した最高のライブ

2020年9月12日 Text by TAROO-METAL

LEGEND - METAL GALAXY - (Blu-ray) / BABYMETAL
LEGEND - METAL GALAXY - DAY-1 (CD) / BABYMETAL
LEGEND - METAL GALAXY - DAY-2 (CD) / BABYMETAL
2020年9月発売

写真 2020-09-12 17 34 12

2020年1月25日と26日に幕張で行われたBABYMETALのライブ「METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN EXTRA SHOW」の模様を収録した映像作品とライブ・アルバムがリリースされた。Amazonで初回限定盤を購入したので,一気にレビューしたいと思う。

■CD 「LEGEND - METAL GALAXY -」

THE ONE限定のライブ盤は多数リリースしてきたBABYMETALだが,本作は一般向けのものとしては「LIVE AT BUDOKAN ~RED NIGHT~」(2015年),「LIVE AT WEMBLEY」(2016年)に続く3作目である。

ライブのおよそ2ヶ月前、2019年10月に発売された3rdアルバム「METAL GALAXY」の通常盤に収録されている全14曲(実際には「Japan Complete Edition」収録曲も1曲あったので,全15曲)を2日に渡って披露した圧巻のライブは,ファンに絶大なインパクトを与えた。その様子を完全収録した音源なので,あの2日間を体験して奇跡を目の当たりにしたファンならば,このCDを聴けばあの時の興奮が脳裏に蘇ること間違いなし。チケットを入手できず涙をのんだファン,あるいはそれほどでもないライト層にとっても十分楽しめるボリューミーな作品だ。

1月のライブの素晴らしさを追体験するには映像作品の方を入手した方が手っ取り早いが,このライブ・アルバムはサウンドが素晴らしくて臨場感もあるので,これはこれで一聴の価値がある。かつてBABYMETALのライブ・アルバムといえば,そのサウンドは必ずしも良いとは言えず,ライブ盤1作目となる「LIVE AT BUDOKAN ~RED NIGHT~」以外はあまり褒められたものではなかった。しかしTHE ONE限定の「LIVE AT THE FORUM」あたりからそのような傾向はだいぶ改善され,本アルバムのサウンドはかなりバランスが良くなったと思う。だいぶ聴きやすい仕上がりになっているのではないか。

ちなみにファンはご存知のように,このライブは1日目と2日目とで神バンドの面々が入れ替わっている。1日目は古くからBABYMETALの屋台骨を支えてきた日本の凄腕ミュージシャンたち(いわゆる東の神)。2日目は2019年のワールド・ツアーから登場した海外のミュージシャンたち(西の神)なのだ。よって当然「音」も違う。これは完全に個人的な印象だが,東の神による「DAY-1」は洗練されていて綺麗な音,西の神による「DAY-2」は重心が低くて荒々しい音――のような気がする。そのような違いを発見する楽しみもあるのが,本作品の良い所でもある。

ライブ初披露となった「DAY-1」の“Oh!MAJINAI”や「DAY-2」の“BxMxC”,あるいはアベンジャーズが勢揃いした“Road of Resistance”や“イジメ、ダメ、ゼッタイ”など見どころてんこ盛りの公演だったが,ライブ・アルバムなので「音」という点に注目すると,「DAY-2」の“BxMxC”と“KARATE”が要チェックだと思う。“BxMxC”はその凶暴なまでの重量感が驚異的だし,“KARATE”は重心の低さと重厚なグルーヴ感が強烈だ。いずれも神バンドが西の神だからなのだと思う。農耕民族の血を引く者にはなし得ない,狩猟民族ならではの迫力とでも言おうか。

SU-METALのソロ曲とBLACK BABYMETALの曲がない点は痛いが,それを除けば現時点でのベスト盤と言っていい超充実の内容なので、BABYMETALのアルバムを持っていない(聴いたことがない)人のための入門用,「はじめてのBABYMETAL」として最適だ。「DAY-1」と「DAY-2」のどちらを勝つべきか?いやいや,2枚組だと思って両方買うべし。

■Blu-ray 「LEGEND - METAL GALAXY -」

先にも述べたように,このライブの素晴らしさを余すところなく堪能するには,映像作品を見る必要がある。会場の横幅いっぱいに広がる巨大スクリーンと前後・上下に稼働する立体的なステージが生み出すビジュアルのインパクトは,間違いなく現時点でBABYMETAL史上の最高峰。そもそもこの幕張公演は特別な位置づけのライブなので,この規模とクオリティのライブは今後もそうめったにお目にかかれるものではないだろう。本作品を観ることなくしてBABYMETALを語ることなかれ。

私はこの奇跡的なライブを幸運にも現地で体験することができた。その時は目の前で繰り広げられる圧巻の(そして想像を絶する)パフォーマンスにただただ圧倒されていた。それから7ヶ月あまりが経ち,今こうして映像作品化されたライブを落ち着いて鑑賞していると,改めて気づかされることがいくつかある。“Oh! MAJINAI”での3人がひたすら楽しそうだったとか,アベンジャーズが勢揃いした“Road of Resistance”はまるでヒーロー戦隊もののようでかっこよかったとか,異彩を放つ“BxMxC”が超クールだったとか,細かいことを挙げればキリがないので,ここではこれからのBABYMETALのライブ一つの指針になるであろう要素について触れておく。

今までのBABYMETALのライブでは,個々のメンバーのパフォーマンスが過去のライブと比べてどう違っていたのか,どう変化・進化したのかという点に目と耳を奪われがちだった。たとえば「SU-METALの歌い方が今回はこうだった,ああだった」とか「MOAMETALのダンスがこうなった」などというような。あるいはまた,SU-METALとMOAMETALの意思疎通の様子や表情の変化などにフォーカスして映像作品を観ることが多かったように思う。

ところが今回の「LEGEND - METAL GALAXY -」では,SU-METALの歌やMOAMETALのダンスがどうだったかということや,2人のパフォーマンスがどう進化・成長しているかということは良い意味でどうでもよくなったと思う。それよりも,歌とダンス,そして神バンドが奏でる音と圧倒的スケールの映像が組み合わさり,化学変化を起こすことによって生み出されるステージそのものこそが注目すべき対象となった。それは極めて強烈な物語性とメッセージ性をはらんだBABYMETAL流の総合芸術的エンターテインメントと言えるのではないか。

それを象徴するのが「DAY-2」を締めくくる〈光の三部作〉,すなわち“Starlight”→“Shine”→“Arkadia”と続く一連の流れだと思う。もはや〈組曲〉と言っていいこの3曲のステージはとにかく圧巻だ。ドラマティックな楽曲がベースにあることはもちろん重要だが,巨大なスクリーンとステージをフルに活用して表現される青と白が基調となったきらびやかな光の演出には目を見張るものがある。深遠なる宇宙の壮大なスケール感をビジュアル化した映像と音楽とダンスが見事に融合したこの〈組曲〉が表現するのは,まごうかたなきメタルの銀河。そう,「METAL GALAXY」そのものなのだ。この圧倒的なメタルの銀河の前では,SU-METALの歌やMOAMETALのダンスについて細かく触れることはもはや些事と言っていい。各々のパフォーマンスが最高であることは当たり前の大前提。そのうえでステージ上に表現されるBABYMETALの世界観こそが観るべきポイントなのだ。「これこそが私たち。これこそがBABYMETAL」――渾身のパフォーマンスから発せられる無言の主張を,私はそう受け取った。

【収録曲】
(DAY-1)
01 FUTURE METAL
02 DA DA DANCE
03 Elevator Girl
04 Shanti Shanti Shanti
05 Oh! MAJINAI
06 ヤバッ!
07 Brand New Day
08 ギミチョコ!!
09 メギツネ
10 Night Night Burn
11 THE ONE
12 Road of Resistance

(DAY-2)
01 IN THE NAME OF
02 Distortion
03 PA PA YA!!
04 KARATE
05 Kagerou
06 BxMxC
07 シンコペーション
08 ヘドバンギャー!!
09 Starlight
10 Shine
11 Arkadia
12 イジメ、ダメ、ゼッタイ

※Bloggerからの転載です。


いいね!と思ったら投げ銭感覚でサポートを!よろしくお願いします🔥