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レビュー/バンド史上最高傑作の誕生!-ANGRAの10thアルバム「CYCLES OF PAIN」

CYCLES OF PAIN / ANGRA
2023年11月発売

ブラジルの至宝ANGRAが前作から5年ぶりに放つ通算10作目となるスタジオ・フル・アルバム。

ANGRA史上最高レベルの完成度なのではないか。個人的にはコンセプト・アルバムである5作目の「TEMPLE OF SHADOWS」(2005年)が彼らの最高傑作だと思っているのだが,本作はそれを凌ぐ名盤として後世に語り継がれることになるかもしれない。それくらいの完成度を誇るアルバムだと思う。炸裂する美旋律,ほとばしるパッション,緻密に構築された楽曲,揺るぎない鉄壁の演奏……一部の隙もない完璧な作品の誕生である。

アルバム全体を貫くプログレッシヴ感と複雑で凝った展開を見せる楽曲群,そしてテクニカルな演奏ゆえ,一見(一聴)するとDREAM THEATERに似ていると感じる人は多いだろう。壮大でシネマティックなアレンジが施された曲もあり,その辺りはNIGHTWISHっぽくもある。しかし,聴けば聴くほどANGRAの個性が際立っていることに気づく。たとえば02“Ride Into The Srorm”や11“Generation Warrios”のようにスピーディでメロディアスな曲。明るく開放感にあふれ,軽やかに疾走するサビにはそこはかとなくラテンの香りも感じられ,これぞANGRAという魅力に満ちている。

また,06“Vida Seca”や09“Faithless Sanctuary”はDTにも通じるテクニカルな曲だが,ラテンのリズムが顔を覗かせた途端,曲の雰囲気がガラリと変わる。硬派なプログレ・メタルと柔らかなラテンの香りの絶妙なブレンド。この辺りの硬軟のバランスの取り方は実に巧みで,ANGRAにしか成し得ない芸当だ。美しいメロディが印象的なミッド・テンポの10“Here In The Now”も実に彼ららしいラテン・プログレ・メタルである。

そこにエモーショナルでパワフルなファビオ・リオーネのヴォーカルが加わるとどうなるか。オペラティックに歌い上げるファビオの歌唱は楽曲により一層のドラマ性とパッションを吹き込むこととなり,プログレッシヴ+ラテン+オペラという唯一無二の個性が誕生するのだ。これぞANGRA。彼らが「ブラジルの至宝」と呼ばれる由縁である。

主要メンバーの脱退が相次ぎ,今やオリジナル・メンバーはギタリストのラファエル・ビッテンコートただ一人。それでもなお,これだけのクオリティの傑作を生み出すのだから,ANGRAのポテンシャルは計り知れない。

【収録曲】
01 Cyclus Doloris
02 Ride Into The Storm
03 Dead Man On Display
04 Tide Of Changers - Part I
05 Tide Of Changers - Part II
06 Vida Seca
07 Gods Of The World
08 Cycles Of Pain
09 Faithless Sanctuary
10 Here In The Now
11 Generation Warriors
12 Tears Of Blood
13 Tears Of Blood [Speed Version]


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