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レビュー/BABYMETALの〈ダークサイド〉集大成!「METAL RESISTANCE EPISODE VII - APOCRYPHA - THE CHOSEN SEVEN」

2019年6月30日 Text by Kotaro MASUDA a.k.a. TAROO-METAL

METAL RESISTANCE EPISODE VII - APOCRYPHA - THE CHOSEN SEVEN / BABYMETAL
2019年6月25日発売(THE ONE会員限定Blu-ray)

2018年10月28日にさいたまスーパーアリーナで行われた「BABYMETAL WORLD TOUR 2018 in JAPAN EXTRA SHOW “DARK NIGHT CARNIVAL”」を映像化した作品。このライブはBABYMETALが初めて2組のバンド(SabatonとGALACTIC EMPIRE)を前座に起用した記念すべきライブだが,本作品には残念ながら彼らののパフォーマンスは収録されていない(当然ではあるが)。本作にはさらに「Download Festival UK 2018」でのパフォーマンスがフルに収録されたBlue-rayと,新曲“PA PA YA!!”のCD(通称「金盤」)も同梱されている。

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■「DARK NIGHT CARNIVAL」について

2018年のツアーのコンセプトである「THE CHOSEN SEVEN」がフル・スケールで披露された最初にして最後のショウ。7人の演者と神バンドが並び立つステージはとにかく豪華絢爛。ライブ当日に会場で目撃した時にもそう感じたが,こうして映像化されると,秀逸なカメラワークと編集技術のおかげで,一つのエンターテインメント・ショウとしての魅力と完成度の高さに改めて驚かされる。

折しも「EPOSODE VIII」が横浜アリーナで幕を開け,黄金の輝きを放っていた〈ライトサイド〉への原点回帰が大歓迎されている今,この〈ダークサイド〉は半ば「なかったこと」にされているような感もある。しかし2014年以来「BABYMETALのショウはミュージカルだ」(「考察:BABYMETAL③/BABYMETALのライブとミュージカル」)と認識している私にとって,〈ダークサイド〉の集大成であるこの「DARK NIGHT CARNIVAL」は,とてもじゃないが「なかったこと」にできるような代物ではない。なぜなら,このショウはステージ・セットの規模こそ通常の「アリーナ級」ではあるものの,ステージ上に並び立つ演者(ダンサー)の人数は7人とBABYMETAL史上最大規模だからだ。SU-METALとMOAMETALを含め常時5人~7人の演者が織りなすフォーメーションの美しさと見事にシンクロしたパフォーマンスが生み出すダイナミクスは,BABYMETALのショウが持つミュージカル的側面を過去最高レベルで表現していると思う。このミュージカル感は空前にして絶後。3人体制ではほぼ実現不可能だろう。

さて,このパフォーマンスを映像で観ていて素晴らしいと思った曲は3つある。

最も印象に残ったのは“Starlight”。このパフォーマンスと演出はもはや舞台である。ステージの5人が比較的近い距離感でくり広げるパフォーマンスは,音楽のステージというよりはむしろ幻想的なモダン・ダンスのよう。ただでさえメッセージ性が強い曲に物語性たっぷりの振付が加わって,本当に舞台でも観ているかのような気にさせらる。

視覚と聴覚の両面から独特のドラマティックな世界観を堪能できるこの曲は,ライブにおいてこそその魅力を最大限に発揮する芸術的な曲だと思う。加えて言うなら,ダンサーが5人いたから舞台芸術のようなこの世界観を作り出せたわけで,将来的にBABYMETALが2人や3人になったとしたら,その時にライブで披露されるこの曲は,この日とはまったく別物になってしまうかもしれない。

迫力満点の“KARATE”もこのライブのハイライトの一つだ。ライブ当日にも実際に目の当たりにして感じたことだが,7人がステージ上に立体的に並び立つ様は演舞感が実に強烈でかっこいい。大人数ならではのド迫力。この視覚的効果の影響もあって,この曲が本来有している重量感・重厚感が一層際立っている気がする。ちなみに,大人数ならではの迫力という点では“Road of Resistance”も同様だ。曲の始まりとともにフラッグを手にした7人のかっこいい立ち姿がスポットライトに照らし出される様子は,思わず声を上げてしまうほどのインパクトがあると思う。

3つ目はライブの最後を飾る“THE ONE - Piano ver. -”。女神のような神々しさと母なる大地を感じさせる慈愛に満ちたSU-METALの歌声が絶品だ。歌い方も今までとは若干異なった印象で,柔らかくて暖かく,そして情感たっぷり。歌の世界に没入しているわけではないが,この歌に託したSU-METALの気持ちが強烈に感じられる歌いっぷりだ。SU-METALはついにこの歌を完全に自分のものにしたのかもしれない。

最後にサウンドについてひと言。BABYMETALのライブの映像作品は正直なところ音質があまり良くないことが多かったと思うのだが,本作はかなり素晴らしいと感じる。バランスに優れていて音像はクリア,そして音圧も十分。今までのライブ映像作品の中ではトップクラスの音質なのではないだろうか。

■「Download Festival UK 2018」について

SU-METALとMOAMETALが2人のお姉さまダンサー2名を従えた4人体制という,今にして思えば。珍しい布陣でのパフォーマンス。ギターの神を亡くし,舞踊の天使を失って存続の危機と言ってもいいくらいの崖っぷちに立たされたBABYMETALの試行錯誤がうかがえるステージだ。

まず,何はともあれ観客の多さに度肝を抜かれる。2ndステージの最後から2番目という比較的良いポジションでの出場だったということもあるだろうが,それにしてもこの大観衆である。2014年の「Sonisphere Festival」のステージに立って以来,イギリスでのファンベースを着実に増やして足場を固めつつあるとはいえ,人気のあるなしは如実に,しかも情け容赦なく現れてしまうお国柄。その中にあってのこの大観衆は,彼の国におけるBABYMETALへの期待の高さ,興味関心の強さ,そして人気の高さを明白に物語っていると思う。

セット・リストは全7曲(持ち時間は45分)。異彩を放つのは“Kagerou”の存在だ。当時は“Tatoo”と呼ばれていたSU-METALのソロ曲だが,“紅月-アカツキ-”や“Amore - 蒼星 -”,あるいは“悪夢の輪舞曲”といった従来のソロ曲とはまったく曲調が異なることが最大の特徴。ミッド・テンポながら重心低く,前へ前へと進んでいくドライブ感が心地よい。メタルというよりは歌メロを重視したラウド・ロックと呼べるかもしれない。「ゆらゆら……」という歌詞のリフレインが印象的だ。

“Distortion”で「手拍子!」「もっと大きなサークル見せて!」と当たり前のように観客を英語で煽るSU-METALの姿を観ていると,2014年に彼女たちが初めて欧州へわたった時の初々しい煽りを思い出す。当時の煽りと言えば,“ギミチョコ!!”で「Say!」とひと言叫ぶだけだった。それが今ではオーディエンスに要求&命令し放題。隔世の感である。それにしても,イギリスの伝統あるロック/メタルフェスで当たり前のように日本語で歌を歌い,観客から大喝采を浴びている姿が普通に思えてしまうのだから恐れ入る。

【収録曲】
「DARK NIGHT CARNIVAL」
01 IN THE NAME OF
02 Distortion
03 ギミチョコ!!
04 Elevator Girl
05 紅月-アカツキ-
06 Starlight
07 META!メタ太郎
08 メギツネ
09 KARATE
10 Road of Resistance
11 THE ONE - Piano ver. -

「Download Festival UK 2018」
01 IN THE NAME OF
02 メギツネ
03 ギミチョコ!!
04 kagerou
05 Distortion
06 KARETE
07 Road of Resistance

※Bloggerからの転載です。

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