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ライブレポ&考察/新生BABYMETALの幕張公演1日目

2018年10月25日 Text by Kotaro MASUDA a.k.a. TAROO-METAL

■物販
14時45分ごろに会場到着。物販開始は15時だが,15分前にもかかわらず待機列の長さはそれほどでもない。予定通り15時に物販開始。レジでの人さばきがスムーズなようで,列は順調に前進した。16時頃にはお目当てのTシャツとキーリングをゲット。それにしても1時間ちょっと並んだだけで買えてしまうとは驚きだ。物販開始の3時間くらい前から並び,それでも下手をしたら売り切れて買えなくなることも珍しくなかった2014年〜2015年頃とは隔世の感である。

ちなみに幕張の物販レジは去年の「巨大キツネ祭り」の時と同様,タプレット端末だった。商品画像が分かりやすく一覧表示されていて,画面をタップするだけで会計完了。売り子さんが電卓を叩いていた時よりもはるかに円滑に手続きが済む。

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■入場
18時10分頃着席。席は上手側スタンドの9列目だった。アリーナの最後方Cブロッグが目の前にあるので,ステージからはかなり遠い。しかしステージに近い方の端の席(通路側)だったので視界は良好。場内に流れるBGMはIRON MAIDEN,JUDAS PRIEST,MEGADETH,PANTERA,DREAM THEATER,DragonForce,BRING ME THE HRIZONなど。

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■GALACTIC EMPIRE

帝国,いや定刻を5分ほど過ぎた19時05分,スペシャル・ゲストのGALACTIC EMPIREがステージに登場。歌がないインスト・バンドで会場をどこまで盛り上げられるか不安だったが,大健闘したと思う。

感想は「楽しかった!」のひと言に尽きる。映画好き,スターウォーズ好きなメタラーにはたまらない45分。元曲がドラマティックなので,メタルアレンジもとてもゴージャスだった。演奏も思っていたよりもテクニカル。特にボバ・フェットのドラミングが素晴らしく,私の前にいた小学生くらいの女の子が終演後,「ドラムがかっこよかった!」と興奮気味に父親に話している姿が微笑ましかった。

ただ,正直なところインストだけで45分というのはちょっと長過ぎたようにも思った。30分くらいでスパッと切り上げた方が良かったのではないか。ついでに言えば,途中でデス・スターを模したバルーンがフロアに2個投入されたのに,20秒くらいで回収されてしまったのはいただけない。盛り上げるためだったはずなのに,盛り上がる前に回収とは。

■BABYMETAL

ステージの転換が終わり20時10分頃,突如場内の照明が落ちた。大歓声の中「EPISODE VII APOCRYPHA」のトレーラーがスクリーンに流され,日本国内では1年1ヶ月ぶりとなるBABYMETALのライブが始まった。

オープニングは2018年のワールド・ツアー標準仕様の“In The Name Of”。圧巻だったのはステージ後方に設置された高台に,禍々しい「ダークサイド」な衣装に身を包み,魔術的な杖を携えた7人が横一線に並び立っていたこと。遠目には全員が同じ衣装に見えたので,SU-METALとMOAMETALがどこにいるのか分からなかった(特にMOAMETAL)。この光景は圧巻のひと言。ワールド・ツアーが始まった5月から言われ続けてきた「The Chosen Seven」がついに形になった瞬間だった。

ステージ上の様子と大型スクリーンに映し出された姿を見て驚いたのは,ビジュアルが大幅に変わったこと。新しい衣装,新しい髪型,いつもと違うメイクにびっくり。衣装は今年前半の海外転戦で着用していたものに去年までの衣装のテイストを加味したような仕上がりになっており,BABYMETALらしくてとても良かった。正直言って今年の衣装は地味だと感じていたのだが,この日の衣装は上品で豪華だったと思う。髪は何やら複雑にまとめ上げられており,「髪をなびかせながらパフォーマンス」「汗で髪が顔の張り付く」という,今までのBABYMETALによく見られたシーンが減りそうな気配だ。SU-METALもMOAMETALもおでこ丸出し。これは珍しい。そしてメイクは今年6月に行われた「ROCK IM PARK」でのそれに近い,濃いめのアイメイクが特徴だ。ただし赤と黒の2色を使っていた6月に対して,今夜は黒一色のみ。SU-METALとMOAMETALは目の周りを黒く塗っているだけだが,5人のダンサーたちには黒の縦線が入っているという違いがあった。

そして衣装の変化と等しく目を引いたのは,ステージ上でパフォーマンスするダンサーの大幅な増員だ。SU-METALとMOAMETALが5人のダンサーを従えた7人の大所帯。今年前半のツアーでは2人の増員にとどまっていたが,一気に5人増えた。フォーメーション的にはYUIMETALの役割を名もなきダンサーが務めており,今までと何ら遜色ないパフォーマンスになっていた。また,スタンドから見ていると7人の立ち位置や動きが左右だけでなく前後にも広がっていることがよく分かった。3人あるいは5人の時よりもダイナミックなので,これはこれで良い。曲によっては5人で演じられる曲もあったが,全員がそろう7人体制のステージはとにかく豪華。とりわけ“KARATE”は,まるで集団による空手の演武を見ているかのような迫力だった。

BLACK BABYMETALの曲がどのように演じられるかということも新生BABYMETALの注目ポイントだったが,この日に披露されたのは“GJ!”の1曲のみ。MOAMETALとダンサー2人の3人体制で演じられ,まるで昔のBABYMETALのようだった(MOAMETALがセンターのBABYMETAL!)。予想外のこの演出に不自然さは感じられず,BMのステージングが豪華になったという意味ではむしろ良かったかもしれない。

結論としてBABYMETALはYUIMETALの不在を上手く埋めたと思う。あの3人こそがBABYMETALだと盲信するなら話は別だが,メタルとダンスの融合というBABYMETALの基本コンセプトは変わらない。人数が増えて規模が大きくなったので,メタル・ミュージカル的一大スペクタクル・ショウの色合いが一層濃くなった。SU-METALはもう成人してるし,MOAMETALも今年の7月で20歳になる。初期の頃の「Kawaii Metal」とはもはや完全に決別したと言っていいだろう。そしてもちろん,BABYMETALはもはや「アイドル」ではない。メタルに軸足を置きつつも,「BABYMETAL」としか言いようのない一つの音楽ショウが完成を見つつある。くしくも2014年にSU-METALがNHK特番の中で放った「アイドルでもない。メタルでもない。BABYMETAL」がYUIMETALの脱退を契機に現実化しつつあるのだ。

ただし懸念材料が一つある。それはMOAMETALの立ち位置だ。現状では「5人のダンサーを従える,ダンサーの筆頭格」にすぎず,はっきり言って「その他大勢の一人」という印象を受けた。この役回りで果たしていいのだろうかという疑問は残る。極論すれば,MOAMETALさえいなくても成り立つのが今のBABYMETALなのだ。

SU-METALの歌声と神バンドとバックダンサーが存在していれば,新生BABYMETALは成立する。「3人が歌とダンスのパフォーマンスで勝負する」という方法論は,もはや過去のものとなった。だから,SU-METAL,YUIMETAL,MOAMETALという3人のキャラクターやアイドル性に魅力を感じていたファンにとって新生BABYMETALは受け入れがたいのではないか。その反面,BABYMETALの音楽性やパフォーマンスが面白いと思っていた人にとっては,新生BABYMETALを受け入れることはさほど難しいことではないはずだ。

新生BABYMETALについては人によって色々と思うところはあるだろうし,感想は異なるだろう。しかし少なくとも今日のステージを見るかぎり,私自身は「新しいBABYMETAL」は十二分に面白いと感じたし,これからもこの体制でのライブを見たいと素直に思った。

がしかし,ここで二つ目の懸念材料が登場する。今夜の「ダークサイド」すなわち「The Chosen Seven」は「Apocrypha」つまり「外典」だということ。よって今日の7人体制が今後のBABYMETALのスタンダードになるのかというと,実は若干の疑問が残るのだ。ただし,今年のワールド・ツアーを準備する時点ではYUIMETAL復帰の可能性が残っており,今年のツアーがそれを踏まえた上での「外典」という位置付けだったとするならば,YUIMETALが脱退した今,「外典」を「正典」と定義し直すことは不自然ではない。体制が短期間で二転三転するよりは,ぜひこの路線で継続してほしいと思うのだが,はたしてどうなるだろうか。

以下,いくつかの曲で気になったことや印象に残ったことを記しておく。

Distortion
本邦初公開の“Distortion”はこの日のライブの実質的な1曲目だったのだが,SU-METALは気合が入りすぎたのか若干音を外し気味で歌っていたように感じた。もしかしたら会場の音響がそれほど良くなかったからそう聞こえただけかもしれないが。ちなみにこの曲が配信された当初は一本調子であまり好きにはなれなかったのだが,ライブ版は完全に別物。ものすごく盛り上がるライブ映えする曲だ。

Elevator Girl
これも本邦初公開。“ド・キ・ド・キ☆モーニング”や“ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト”の系譜に属する曲なのではと感じた。メンバーが成長して大人になりつつある今,この2曲を歌って踊ることにはやや違和感を感じないこともない。その微妙な問題を,この新曲でクリアできたのではないか。

Starlight
MVが話題沸騰となった“Starlight”はそれほどインパクトがなかったというのが個人的な感想。とは言えサビ前の疾走パートのかっこよさはライブだと3割り増しくらいになる。良い曲であることに間違いはないので,今後ライブを重ねることでどう変化していくか注目だ。これはあくまでも私見だが,“Starlight”はドラマティックな曲調が“THE ONE”と似ていなくもないので,全11曲というコンパクトなセット・リストの中にこの2曲を共存させるのは得策ではないのでは。

メギツネ
の「ナメたらいかんぜよ」の言い方が変わった。ドスをそれほどきかせず,かなり普通に近い感じの声で言い放っていた。しかも一瞬ためをきかせてからしゃべったので,かなり印象が変わった。

Road of Resistance
冒頭でブラスト・ビートを叩き出してからの青山神のドラムが明らかに突っ走りすぎて曲が崩壊しかかっていたように感じたのは私だけだろうか。ものすごく速かったのでヒヤヒヤした。感動的だったのは曲が終わった直後。何と「We are BABYMETAL!」のコール&レスポンスがあったのだ。このやり取りは「ダークサイド」になってからは封印されていた。新しいBABYMETALとしての決意を高らかに宣言しているようで涙が出そうになった。イントロ大合唱もかなり定着してきたようで嬉しい。

その他
前座のGALACTIC EMPIREが45分で主役のBABYMETALが60分という時間配分には賛否があるだろう。個人的には,新生BABYMETALをもう少し見たかった。

2日目のセット・リストが気になる。今日披露されなかったIDZや“ヘドバンギャー!!”は7人体制でどう演じられるのだろう。(結局2日とも同じセット・リストだった)

サウンドは正直言って悪がったと思う。まず,全体的に音量が小さくて圧不足が否めなかった。バランス的にはヴォーカルが前に出すぎており,ギターとベースは目立たず,ドラムはスネアが強調されすぎていてバスドラが聞こえないという印象。音のバランスは前座のGALACTIC EMPIREの方が良かったとさえ言えるかも。もちろん,会場のどこで聴いていたかにもよるのだろうが。

【セット・リスト】
BABYMETAL WORLD TOUR 2018 in JAPAN - EPISODE VII - APOCRYPHA -
2018年10月23日(火)
幕張メッセ イベントホール

01 IN THE NAME OF
02 Distortion
03 ギミチョコ!!
04 Elevator Girl
05 GJ!
06 紅月ーアカツキー
07 Starlight
08 メギツネ
09 KARATE
10 Road of Resistance
11 THE ONE - English Ver. -

※アメブロからの転載です。

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