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ライブ参戦レポ/メタルは不滅!LOVEBITESの「RIDE FOR VENGEANCE TOUR 2021」で示された不撓不屈の精神

2021年3月27日 Text by TAROO-METAL

LOVEBITES 「RIDE FOR VENGEANCE TOUR 2021」
2021.3.26 at TOKYO DOME CITY HALL

本来ならば1月31日に行われるはずだった東京ドームシティホールでのライブ。新型コロナウィルス感染症の広がり具合によってはさらなる延期,あるいは中止という最悪の事態になる可能性もあったわけだが,無事に完遂されたことに心の底から安堵した。

観客はマスク着用で声出し禁止。立ち上がることはOKだが,自席を離れることはNG。様々な制約がある中でのライブだったが,アーティスト側が萎縮せず,普段どおりに攻めのセット・リストを組んだことは良かったと思う。観客は声は出せないが,それでもあえて観客との掛け合いがある曲や一緒に歌うことが醍醐味の曲をプレイする潔さ。ヴォーカルのasamiさんはお立ち台の上で何度も「ココロの中で歌って!」とジェスチャーを交えてアピールしていた。妙な配慮や忖度は無用。これぞメタルだとあらためて実感した。

バンドのパフォーマンスンも圧巻のひと言。1年間の苦悩のすべてを吐き出したり,たまった怒りをぶちまけるだけなら殺伐としたライブになってしまっていただろう。しかしLOVEBITESはどこまでもポジティブだった。苦悩や不安,怒りといった負の感情をプラスに転化して,ステージへの帰還と未来への再出発を高らかに宣言してみせたのだ。

演奏はどこまでも鉄壁で,とことんシャープ。どんなに速いメロスピ曲でも,どれだけ激しいスラッシュ曲でも,演奏がもたつくことは一切なし。白を貴重としたきらびやかで上品なコスチュームと,信じられないくらいソリッドで揺るぎない演奏技術。そのギャップがたまらない。ライブを重ねるごとに王者の風格がパフォーマンスからより強くにじみ出るようになってきていると感じる。ライブに参戦するたびに,スケールアップしてくバンドの姿に驚愕する。

LOVEBITESのライブに参戦するのはこの日が5回目だったが,会場の熱気と一体感は間違いなく過去最高だったと思う。観客は声を出せないし,モッシュもできない。それでも「コロナ以前」のライブと何ら変わらない,あるいはそれ以上の一体感が醸成されていた。アーティストとファンの思いが一致して生み出された奇跡以外の何ものでもないと思う。



1.グッズ購入~入場・着席

グッズの先行販売は15時30分から。平日での開催ということもあってそれほど混雑はしないだろうと見込み,会場には16時30分頃に到着。それほど混んではおらず,列に並ぶことおよそ30分で目当てのTシャツとワッペンを購入することができた。感染症対策として物販会場入口での検温と手指消毒を行い,さらに蜜を避けるため入場者数をコントロールしながらの運営だったので,さすがに列の進み具合はやや遅め。それでもこのご時世なので,きちんと感染症対策が行われているという安心感は何ものにも替えがたい。

今回の座席は「アリーナ前方プレミアムシート」。入場開始はチケットに記された18時だが,整列は17時45分から。蜜を避けるために1メートルほどの間隔を保って整列。みな整然と並んでいた。入場開始時刻が席種に応じて区切られいたほか,入場時の検温と手指消毒はもちろんのこと,チケットのもぎりは入場者自らが行う方式。スタッフがチケットに手を触れることはなく,確認は目視で行うという徹底ぶり。いわゆる「新しい生活様式」には多くの人が慣れているのだろう。大きな混乱は見られなかった。

チケット確認とドリンク代の徴収のあと,プレミアムシートの「お土産」を受け取った。当初は「いったい何だろう」という大きな期待と,失礼ながら「しょぼいものだったらどうしよう」という小さな不安をいだいていたのだが,受け取ってみてびっくり。布製のエコバッグとVIPパスだった。個人的に何より嬉しかったのがVIPパス。今まではライブのグッズとして販売されていて,LOVEBITESのライブ初参戦だった2018年の「BATTLE AGAINST DAMNATION TOUR」では買い損ねてしまったものの,翌年の「CLOCKWORK IMMORTALITY TOUR」以降は毎回必ず買っていたという個人的なこだわりがあった一品。そんなパスが今回はグッズにラインナップされていなかったのでひそかにがっかりしていたのだが,それがまさかのプレミアムシート購入者特典になっていたとは。

お土産を手にしてウキウキしながらアリーナに入場し,自分の確認してまたてびっくり。チケットには「6列」と記されていたが,撮影のための機材スペースを確保するため最善3列分が削られており,実質的には3列目という神席だったのだ。大きく3ブロックに分けられた下手側ながら最も中央寄りの列という,なかなかのポジション。ステージがものすごく近かった。昨年2月の東京公演でも下手側中央寄りの最前列付近に立つことができたので,ことLOVEBITESのライブについては幸運が続いている。次はmiyakoさんの主戦場である上手側に行きたいと思う。

2.いざ開演

定刻の19時が目前に迫ると場内の照明が少し落とされて,客入れBGMのボリュームが上がった。曲はJUDAS PRIESTの"Diamonds And Rust"。いよいよ始まることを確信した場内からは大きな手拍子が鳴り響いた。

序盤での圧巻は”Set The World On Fire"~"Shadowmaker"の流れ。ここで明らかに音圧が上がったと思う。久しぶりに内蔵が揺れた。特にharunaさんのドラミングが凄まじく,大小様々な鋼鉄のハンマーを乱打しているかのようだった。harunaさんには「雷帝」の称号を与えたい。

北欧メタル風のキーボードが印象的な”Spellbound"ではmiyakoさんは終始キーボードをプレイ。途中でスタッフが大型のショルダー型キーボードを持ってステージ上に現れて,miyakoさんに強引に手渡そうとするシーンも。miyakoさんは「無理!無理!」的なジェスチャーを示したものの,抵抗むなしくキーボードを持たされるという寸劇調の展開が微笑ましかった。

そのキーボードだが,でかくてゴツくて相当かっこよかった。まるでゲーム「ファイナル・ファンタジー7」で主人公のクラウドが手にする巨大な「バスターソード」のよう。楽器というよりは,むしろ武器。専任のキーボード・プレイヤーがいるバンドでよく見られるように,ステージ中央でmiyakoさんとmidoriさんがバトルを繰り広げるかのようにプレイするシーンもあった。今回はちょっと控えめな感じだったので,次はもっと派手なキーボードとギターのバトルが見たい。

miyakoさんとmidoriさんといえば,基本的には上手側に陣取るmiyakoさんがたまに「こんちは~」的な感じでヒラヒラと手を振りながら下手側にやって来ては,クールにプレイをキメて上手側に颯爽と去って行くという,去年のライブと同じ光景が今回も眼前で繰り広げられたのであった。あのちょっとしたユルさが何とも魅力的。そしてmidoriさん。時に見せる野獣の咆哮の如き迫真のプレイに拍車をかけていたのが,フサフサでフワフワの髪の毛。プラチナ・ブロンドに輝くその髪は,まるで秘境に生息する希少動物の豪華な尻尾か何かみたいで,とてもステージ映えしていた(もちろん誉めてます)。

アニメ「VLADLOVE」の主題歌でもある”Winds Of Transylvania"も初披露されたが,YouTubeで公開されているMVとはかなり違った印象を受けた。随所に挿入されたアニメのカットの影響もありどこかコミカルで慌ただしいMVに対して,この日のライブ版はまるで重厚なSlayerのような雰囲気。LOVEBITESのトレードマークはメロスピ風の美しい疾走曲だが,ライブで楽しむには血の香りが強く漂う邪悪で激しい曲が良い。赤い照明と青いレーザー光線の演出も良かったが,何より素晴らしかったのがasamiさんの曲紹介。怪しい世界へといざなうかの如き意味深で妖艶な語り口調は,まるで昔のディズニー・アニメに出てくるキャラのようだった。TDLのキャストみたいと言ってもいいかもしれない。いずれにしてもびっくりするくらいの演技力だったと思う。

そのasamiさん。コロナ禍の1年を振り返るMCでは涙声に。もちろん胸の内のすべてを語り尽くしたわけではないだろうが,音楽を生業とする表現者としての苦悩の一端を垣間見て,話を聞いている私も目がウルウルに。「音楽は不要じゃなかったね」のひと言に魂が震えて,グッと来た。この言葉は何度でも反芻したい。「必要だった」と肯定的に表現するのではなく,「不要じゃなかった」と否定的な表現を用いた点に注目。いわゆる「偉い人たち」から不要だと言われてきたも同然の現実に対する,強烈な反対の意思表明にほかならない。この反逆の精神こそメタルだ。asamiさんにはそこまでの思いはなかったかもしれないが,言外に強い反骨精神が見て取れた。そのようなわけで,感動的なMCに続いて「世界に捧げます」とのひと言とともに披露された”Glory To The World”は半泣きの状態で観ることとなった。

この日のハイライトの一つは間違いなく”Swan Song"だと思う。冒頭と最後でついにasamiさんが封印を解き放ち,バレエのような振り付けでちょっとしたダンスを披露したからだ。本当にちょっとだけだったけれど,バレエ経験を生かした優雅な動きに見とれてしまった。白鳥の羽根のようにしなやかな腕の動きが抜群に美しかった。美しくもパワフルなこの曲は,LOVEBITESの何たるかを雄弁に物語る素晴らしい曲だと思う。

今回のライブでは観客が声を出すことを禁じられていた。一緒に歌いたくても歌えない,叫びたくても叫べない。それを補うかのように,楽器隊の面々が歌いながらプレイしているシーンが従来のライブよりも多く見られたように感じた。特にベースのmihoさん。最初から最後までよく歌っている姿が印象に残る。ステージ上の全員が観客と無言のコミュニケーションを積極的に取ろうとしていた。3列目にいたので,そのことがよくわかった。

個人的には最新ミニ・アルバム「GLORY, GLORY TO THE WORLD」に収録されていた”Dystopia Symphony"が披露されなかったことがちょっぴり残念。名曲"Swan Song"の流れをくんだクラシカル・テイストあふれるこの曲は,LOVEBITESの数ある楽曲群の中でも1,2を争うくらい大好きなので,いつの日か披露されることを祈るばかりである。

3.ステージセット

今回のライブでは演出面でもちょっとした進化が見られた。ステージの両脇には西洋風の城や館を思わせるデザインの階段が設けられていたのだ。ドラム後方の高い位置にも通路を設けてメンバーが立つことは今までにもあったが,そこに登るための階段がおしゃれになっていたのはちょっとした進化だと思う。最新曲”Glory To The World”のMVは教会が舞台なので,そのイメージにもマッチしていて良かった。

さらに照明も素晴らしかった。たしか去年のライブから導入されていたと思うのだが,レーザー光線による演出が少しだけ派手になり,より効果的になったように感じた。曲によっては火柱が上がったり,天から雪が舞い散っていたり(実際には泡?)と,演出のバリエーションも増えており,全体の流れにメリハリが効くようになっていたと思う。

この1年,バンドは活動を制限されたから,下世話ながらバンドとしての稼ぎは減ったに違いないと思う。資金が減れば新たなツアーに投入できる予算も当然限られる。それにもかかわらず,スケール的にもクオリティ的にも去年の「コロナ直前」のライブを上回るステージと演出を形にしてみせてくれたのだから,関係者各位の努力には頭が下がる。

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【セット・リスト】
01. When Destinies Align
02. The Crusade
03. Golden Destination
04. Set The World On Fire
05. Shadowmaker
06. Today Is The Day
07. Winds Of Transylvania
08. Spellbound
09. The Unbroken
10. A Frozen Serenade
11. Swan Song
12. Glory To The World
13. The Apocalypse
14. M.D.O.
15. Don’t Bite The Dust
16. Holy War
-encore-
17. Thunder Vengeance
18. Under The Red Sky

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