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YUIMETALの脱退とBABYMETALの今後について思ったこと

2018年10月21日 Text by Kotaro MASUDA a.k.a. TAROO-METAL

舞踊の天使(Angel of adance)がついにその翼を休める時が来てしまった。強い体幹を感じさせる切れ味鋭いダンスでファンを魅了し続けたYUIMETAL。そのダンスはとりわけ「とめ」の動作が素晴らしかった。動作がピタッと止まるので「静」と「動」のコントラストが強く表現され,実際の速さ以上にスピード感を感じさせる動きだった。そして何よりも印象的だったのは,その凛とした美しい姿勢。ただスッと立っているだけで見る者を魅了した。「内面の成長や覚悟がルックスにも表れてきたというか,淀みのない美しさになった」というMIKIKOMETALの言葉が,今となっては感慨深い。ストイックなアスリート的な魅力と大和撫子的な美しさ。両者を併せ持つのがYUIMETALという存在だった。

そんなYUIMETALの姿をBABYMETALのライブでもう見ることができないというこの喪失感を,いったいどうしたらいいのだろう。

ファンとしてはYUIMETAL,いや水野由結の「体調不良」の具体的な状況を知りたくなるが,それを訊くのは野暮というものだし,マナー違反だろう。今は少しでも早く元気を取り戻して健康になることを祈るばかりだ。それに彼女は何と言ってもまだ19歳。人生はこれからだ。気力と体力をたっぷりとチャージして,これからの人生を公私共々さらに充実させてほしいと思う。

さて,これからのBABYMETALはSU-METALとMOAMETALの2人体制になるわけだが,はたして今の「ダークサイド」そのままにバックダンサーを従える形になるのだろうか。それともデュオとして(あるいはそれに近い形で)臨むのだろうか。今までのステージングを維持することを考えれば大所帯での体制が現実的だが,いずれにしてもいろいろと根本的に見直す必要はあるだろうし,改善すべき点だってあるだろう。チームBABYMETALが抱え込んだ宿題は大変だ。

これからのカギを握るのはMOAMETALだと思う。

2人体制だろうがバックダンサーを従えた大人数体制であろうが,MOAMETALの役回りは今までと同じというわけにはいかないと思う。3人の時はSU-METALが主でYUIMETALとMOAMETALはその両脇に控える従という位置付けだった。しかし2人になった今,SU-METALとMOAMETALを主と従の関係と捉えることには無理がある。SU-METALの存在感が強すぎてバランスが悪いのだ。これからのMOAMETALにはSU-METALと対等に渡り合うことが求められるようになるだろう。「S>Y=M」から「S>M」ではなく「「S=M」へという切り替えが必要だ。

5月以降のワールド・ツアーの様子を見るかぎり,MOAMETALはダンサーを従えるリーダー的存在のようだ。しかしこのスタイルだともはやBABYMETALがSU-METALのソロ・プロジェクトであるかのような印象を与えかねない。MOAMETALは「その他大勢の筆頭」に成り下がるべきではないのだから,SU-METALとMOAMETALがほぼ等しい立ち位置でチームを率いていくような演出にしなければならないと思う。

その意味では,いよいよ間近に控えた日本公演が非常に楽しみだ。YUIMETAL脱退を正式にアナウンスした直後の公演なので,今年前半の海外ツアーの焼き直しのようなスタイルで終わることはほぼないと推測する。今後に向けてのある種のトライアルも兼ねながら,さらなる改良改善を加えられた「2人のBABYMETAL」が観られると期待したい。

YUIMETALに代わる人材を加入させるという選択肢もあったに違いないが,それを取らなかった彼女たちの決断と覚悟を尊重したい。あの3人だからこそという強い絆があり,たとえYUIMETALを欠いたとしても,「新たな3人目」を連れてくることよりは「残された2人で」という方がリスクも小さく秩序は維持されると判断したのだろう。

BABYMETALといえば「逆境でこそ力を発揮する」というのが定説だったが,まさに今,その真価が問われている。失速してしまうのか,それとも史上最大級のピンチをチャンスに変えて,さらなる進化と成長を遂げるのか。ファンとしては応援せずにはいられない。BABYMETALの新章,本当の意味での「メタルレジスタンス第2章」がこれから始まるのだ。

最後にひとつだけ。

実は,心身ともに元気になって完全復活した水野由結が5年後ぐらいに再びYUIMETALとしてBABYMETALに戻ってくる可能性だって0.01%くらいあると思っている。いや,むしろファンだって本人だって関係者だって,その可能性を捨ててしまうべきではないのではないか。

元気になって戻ってきたくなったらYUIMETALとして復帰すればいい。バンドから脱退したり再加入したりを繰り返す人なんてメタル界では珍しくもなんともないのだから。2年後だろうが5年後だろうが,様々なことを経験して人間的にひと回りもふた回りも大きく成長を遂げだ水野由結がYUIMETALとして再降臨してくれたら,誰もがハッピーになれる。たがら,こんな所で「やめたら二度と戻れない」的な珍妙なアイドル文化を持ち出す必要などまったくないのだ。

ただし最大の問題は当然のことながら水野由結の気持ちだ。実は「体調不良」は一つのきっかけにすぎず,YUIMETALを演じることと自分のやりたいことの間に埋めようのないギャップを感じてしまっていたのだとしたら,残念ながら復帰の可能性はほぼないと判断するのが妥当なところ。

何はともあれ,SU-METALとMOAMETALの2人体制でBABYMETALを存続させることが現時点での決定事項。過去に未練タラタラになるのではなく,与えられた環境の中でベストを尽くすことを,われわれファンも肝に銘じたい。

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※アメブロからの転載です。

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