ソムリエ・カブ

麻布十番で兄と一緒にレストランを経営してます / 20年以上東京に住んでますがいまだに…

ソムリエ・カブ

麻布十番で兄と一緒にレストランを経営してます / 20年以上東京に住んでますがいまだに福井弁が抜けません / オンラインサロン「ゆるワイン部」https://lounge.dmm.com/detail/3584/

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ソムリエという仕事をつうじて

ワインって素敵ですね。 こんなに多彩に魅力的な飲み物をぼくは他に知りません。 「ワイン、それはぶどうを発酵させて作ったお酒」だなんて、たんじゅんに説明されてもけっしてワインの魅力の秘密は解けません。 ぼくはときどき訊かれます、 「どうしてソムリエになったんですか?」 「これまでどんな経験をしてこられましたか?」 「どうやったらソムリエになれますか?」 ぼく自身も、いくらか不思議な気がします。 だって少年時代のぼくは自分がソムリエになろうなんて夢にもおもわなかったのですから。

    • 正しいワインの飲み方とは

      僕はワインが好きだ。 ソムリエだから当たり前だと思われるかもだけど、少なくとも仕事だから飲んでいるだけでは無い。 仕事じゃなくてもワインのことを考えてることが多い。どうしてそうなるのかと言うと、そうなるのが当然だと考えているからです。 まあ、ワインのことを、と言うとちょっと語弊があるかな。 ビジネス的なワインへのアプローチや、ワインへの知識を深めるための勉強など、仕事に繋がるワイン全般のことではなくて、大好きな生産者や大好きなワインのことばかり考えています。 それもね、僕は

      • Dom. ICHI G 2020 Pinot Gris

        ピノ・グリってそもそもアルザスの少し甘みを感じるワインしか知らなかったのですが、近年オレンジワインでも見かけるようになりました。 いや、オレンジワイン自体、最近まで知らなかったのですけど。 このドメーヌ・イチのピノ・グリもオレンジワインです。 Dom. ICHI G 2020 Pinot Gris ドメーヌ・イチ ベリーベリーファーム&ワイナリー仁木の新設ワイナリーで代表は上田一郎さん。 2021年にはオーガニックワイナリーの認定を取得。 ピノノワールやピノグリなどの

        • Pinot Noir Nature 2021 / Famille Hebinger

          Pinot Noir Nature 2021 / Famille Hebinger ファミーユ・エバンジェ アルザス地方、第二の都市コルマールから南東に数キロ離れたところに位置するエーグスハイム。 フランスでもっとも美しい村と呼ばれています。 村の真ん中にあるサン・レオン城を中心に、円状に広がる街並みは11世紀から続きます。 泉のある広場から続く曲がりくねった石畳の小路、張り出し窓のある色鮮やかな民家。 そしていたるところに手入れの行き届いた花々で村じゅうが飾られていま

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        ソムリエという仕事をつうじて

          エスポワール甲州 キュヴェ・テンゲイジ

          山梨県の最北端にある北杜市。 周りは南アルプスや奥秩父、八ヶ岳などの大自然に囲まれた場所。 その様子はまるでハイジがアルムおんじやユキちゃんと一緒に住んでいるような、のどかでおだやかな風景が広がります。 近くにはおおきなひまわり畑もあり、暖かくなると登山や観光客でにぎわいをみせる、そんなところです。 その北杜市の中心から少し南に下り、須玉川と塩川を渡った先にドメーヌ・テンゲイジはあります。 醸造家で代表の天花寺弓子さんと栽培責任者の下川真史さんの二人に、うさぎのチョコとアン

          エスポワール甲州 キュヴェ・テンゲイジ

          蝦夷鹿のポワレ グランヴヌールソース

          フランス料理のトレンドは3年ごとに変わり、食べ手はつねに流行を求めます。 しかし、時代が変わっても、クラシックな料理の美味しさは変わりません。 鹿肉のポワレ グランヴヌールソース 余白の大きな白い皿の中央に、 昏色のワインレッドのソースの海、そしてその中心に鉄分たっぷりの赤身肉が佇んでます。 鹿のフォン、赤ワイン、カシスでつくった重厚なソース。 そこに、美食とスパイスの探求を続ける、フランス・ブルターニュ出身のエルワン・ド・ケロス氏が世界中を駆け回って集めた厳選した

          蝦夷鹿のポワレ グランヴヌールソース

          それは世界でもっとも有名な辛口ワイン

          「シャブリ」 それは世界でもっとも有名な辛口ワイン。 日本ではバブル時代、その覚えやすい名前もあって、どこのレストランでもシャブリが飲まれていました。 居酒屋での「とりあえずビール」のように、レストランでは「とりあえずシャブリ」と言っておけば大丈夫くらいの感覚で。 もう今から30年ほど前の話です。 その勢いはすごく、その人気に遅れをとらないよう、たくさんのバイヤーが現地の生産者に赴き、「シャブリ」という名前がついているワインを根こそぎ買っていきました。 そして大量のシャブ

          それは世界でもっとも有名な辛口ワイン

          きふたとyoisa hoisa(Pinot Noir2021)

          諏訪湖から南に下って入笠山の麓に沿って車を走らせること30分、ちょうど八ヶ岳の入り口との間にある、標高1000mを超える高原にある原村。 1日の寒暖差が激しく夜はかなり冷え込みます。 それでも地球温暖化の影響で、かつては不可能であった果樹の栽培が標高1000mを超える原村でも可能になりました。 この寒暖差はここに住む村の人たちにとってはちょっと辛いけども、ブドウにとっては素敵なご褒美で、夜に気温が下がることによって酸は保たれ、そのおかげで糖度が十分にあがるまで収穫を待つこと

          きふたとyoisa hoisa(Pinot Noir2021)

          日本のアルザスと呼ばれる場所

          長野の中心から車で1時間ほど東にはしるとその村にたどり着きます。 あたりは山に囲まれていて、田んぼや果樹園が広がり、時間がゆったりと流れてるその村は、人口7000人ほどの小さな村で、高山村と言います。 昔から農業や林業が盛んな村でしたが、さいきんでは観光にも力をいれていて、そのひとつにワインがあり、村のキャッチコピーは「おいしいワインが生まれる村」。 この、のどかで小さな村、高山村で新しくワインを造る若者たちが増えてきています。 次から次へとあたらしい生産者が生まれている高

          日本のアルザスと呼ばれる場所

          Frederic Magnien フレデリック・マニャン

          昔からブルゴーニュを飲んでいる人たちには、彼のさいきんの評価の高さにびっくりしている人も多いでしょう。ぼくもその一人で、彼の造るワインは濃い、重たい、濁っている、というイメージが強く、当時の印象は、ブルゴーニュというよりは新世界のワインに近かったです。 それもそのはず、ぼくが飲んだ2000年頃といえば、ロバート・パーカーが一世を風靡していて、どこもかしこもパーカー好みの味わいに近づけようと躍起になっていた時代でありました。 そのころのフレデリック・マニャンはというと、当時

          Frederic Magnien フレデリック・マニャン

          Christophe Chevaux クリストフ・シュヴォー

          ヴォーヌ・ロマネ、クロ・ヴジョ、シャンボール・ミュジニィに囲まれている、約束された村フラジェ・エシェゾー。 この村に住むクリストフ・シュヴォーの話をするには、その父ベルナール・シュヴォーの話からはじめないと、そのドメーヌのことはわかりません。 ベルナール・シュヴォーはDRCの正社員として30年間勤めてきました。 彼の家はDRCの醸造場まで県道974号線をわたり、歩いて10分ほどのところに住んでいて、暖かい晴れた日には愛用の自転車で出勤していました。 彼はとてもまじめな男で、

          Christophe Chevaux クリストフ・シュヴォー

          極上の日本ワインのおいしさを知らない人は気の毒だよね。

          ぼくがソムリエの資格を取ったのは2000年。 もういまから20年以上前の話だが、その頃からずっとぼくの美意識は、ピノ、シャルドネ、ガメイ、アリゴテにあり、当時、何度か日本のワインを試してみたものの、お世辞にも美味しいワインという味わいではなく、とてもがっかりしたのを覚えている。 そんなブルゴーニュしか愛せなかったぼくのちいさな世界が、ここさいきん、日本ワインに興味をもつようになりました。 それはもちろん、この20年ほどで日本ワインの品質がものすごく向上したこともあるのだけれ

          極上の日本ワインのおいしさを知らない人は気の毒だよね。

          ブルゴーニュ・ワインとはどんなワインなのか

          ときどきですが、最近ワインを飲むようになった人から 「ブルゴーニュ・ワインってどういうワインですか?」 と聞かれることがあります。 ぼくは昔からブルゴーニュ・ワインを好きで飲んでるだけで特別に詳しいわけではないけれど、それでもさいきんワインに興味をもった人からみれば詳しく思われるのかこういう質問をされるのです。 たしかにブルゴーニュ・ワインなんてマニアックの塊でしかなく、なにか特別な世界にも感じてるみたいで、ブルゴーニュのことを知りたいときにぼくみたいな中途半端な人間には聞

          ブルゴーニュ・ワインとはどんなワインなのか

          ダンジェルヴィーユのアリゴテ

          その村は南東向きのおだやかな斜面にひっそりと佇んでいます。 まわりはブドウ畑にかこまれた小さな村。ヴォルネイ村。 歴史的にはヴォルネイのワインは王侯貴族の憧れの的でした。 ヴォルネのブドウ畑はマルタ騎士団が1207年に所有したことによって、1300年代にはブルゴーニュ随一のワインとしても名声を博していました。 1328年ヴァロワ家のフィリップ6世がフランス王の戴冠式の際に飲んだのは「カイユ・ド・ロワ」というヴォルネイのワインで、現在の「レ・カイユレ」という区画から生まれたも

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          日本のピノ・ノワールの原点ともいえるべき、木村農園の「木村ピノ」

          北海道・余市でピノを栽培し始めてから30年。 木村さんの家は、もともとリンゴ農家だったのですが、リンゴの値段がどんどん下がり、その代わりに醸造用ブドウを植えたのがはじまりでした。 そのころはまわりのリンゴ農家も一斉に植え替え、ピノを植えてる農家もちらほらありました。 しかし、ピノ・ノワールは気難しい品種で、まともなものができませんでした。 木村さんとおなじようにピノを植えていた農家は一軒、また一軒とやめていき、その代わりにツヴァイゲルトを植えていきました。 しかし、木村農園

          日本のピノ・ノワールの原点ともいえるべき、木村農園の「木村ピノ」

          Clos de Vougeot 2016 Gerard Raphet

          ジュヴレ・シャンベルタンやシャンボール・ミュジニィに囲まれたモレ・サン・ドニ村は、つい見落とされがちなマイナーな村ではありますが、この村にはクロ・デ・ランブレ、トプノー・メルム、ロベール・グロフィエ、クロ・ド・タールなど錚々たる造り手が存在します。 村に点々と存在するすばらしい造り手のちょうど真ん中に位置する、一見ただの農家にしか見えない生産者。しかしその生産者がじつはクロ・ド・ヴージョやシャンベルタン・クロ・ド・ベーズなどのグラン・クリュを所有する隠れた名門であることはあま

          Clos de Vougeot 2016 Gerard Raphet