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共産党 吉良よし子 議員 @kirayoshiko は表現規制を主張したか - 番組内容を文字起こしして検証してみた

『表現の自由を規制します』 (共産党 吉良よし子議員)

こんな発言があったと、Twitterで批判が上がっています。

表現の自由は憲法21条に定められている極めて重要な人権であり、権力への抵抗権でもあります。

もし国会議員が「表現の自由を規制します」などと発言したのであれば大問題です。職を辞すべき重大発言です。

そこで今回のnoteでは、吉良よし子議員の発言内容を、元動画の文字起こしをして検証してみることにします。


## 何が起きたか

### ざっくりと


ことの経緯をざっくりと確認します。
吉良よし子議員がアベマプライムに出演したところから始まります。

- 番組はおよそ30分
- 番組やゲストからの質問に吉良よし子議員が答えるという内容

- 番組内容がABEMA TIMESの記事として公開される

- 記事を読んだ人が「吉良よし子は表現規制を主張している」などと批判


### ABEMA TIMESの記事内容

ABEMA TIMESで紹介された吉良よし子議員の発言の、批判対象になった箇所です。(以下、太字は引用者)

さらにタレントでソフトウェアエンジニアの池澤あやかからは「ここ数日、表現の自由と児童ポルノ規制に関する話題で日本共産党が炎上していたが、主張に矛盾はないのか」との質問が出た。

吉良氏は「矛盾はない。ジェンダー政策の部分で言っているのは、子どもに対する性暴力は絶対許さないということだ。児童ポルノも子どもへの性暴力だから許されないということだ。ただし、児童ポルノという言葉を使った表現規制ということに対しては明確に否定している。表現の自由を守り抜くのは当然だし、児童ポルノを無くせば子どもへの性暴力も無くなるという話ではない。どう解決していくかはクリエイターも含めて国民的に議論していくべきだ。具体的には、子どもたちや一般の人たちの目に触れないような場所に置くゾーニングというやり方もあると思うし、“こういう表現は本当にまずいよね”“儲からないよね”という合意ができれば、クリエイターの皆さんも作らなくなると思う」と答えた。

[「自由と民主主義を何よりも大切にするのが共産主義の社会だ」日本共産党・吉良よし子常任幹部会員 各党に聞く衆院選(5) | 政治 | ABEMA TIMES](https://times.abema.tv/articles/-/10003601)

批判は主に、以下の部分に対してです。

“こういう表現は本当にまずいよね”“儲からないよね”という合意ができれば、クリエイターの皆さんも作らなくなると思う」と答えた。



### 批判ツイートの数々


吉良よし子議員の発言に対する批判ツイートです。
代表的なものをいくつか紹介します。



### 実際の動画と文字起こしと字幕動画

実際の発言を確認してみます。

〈池沢あやか〉
そういえば最近
すごい気になってたことがあって

twitterといえば
つい最近 共産党さん
炎上していらっしゃったじゃないですか

児童ポルノ関係の話題で
女性ジェンダーの政策の中では
児童ポルノは良くないっておっしゃっ
「規制するべきだ」まで
言ってたか ちょっと怪しいですけど
て、おっしゃっていたけど

その文化の政策の中では
表現の自由を守るべきだって
おっしゃっていて

ここの矛盾っていうのは
発生してないんですか


〈吉良よし子〉
矛盾はないですね

あのジェンダーの方で言ってるのは
要するに
児童・子どもに対する性暴力は絶対に許さないよ
ていうこと


だからこそ その
児童ポルノ自体も
それは当然ね
児童・子どもへの性暴力だから許されない
ですよね

ただし その児童ポルノを理由にして
表現そのものを全部を様々にして
具体的に規制をかけるってのは全く別の話


やはり表現の自由を守り抜くっていうのも当然のことですし
実際に子どもへの性暴力をなくすためには
単純に児童ポルノだけの問題ではないのは実際ありますから

じゃ どうやって規制をしていくのか
解決していくのかっていうことは
クリエイターもふくめて国民的に議論していくべきだと

いずれにしても
児童ポルノっていうことを言葉を使った
表現規制っていうことに対しては私たちは明確に反対
しています


〈池沢〉
その 規制なくして
どうやって 女性の
女性とか児童の権利を守っていこうと思われてるんですか


〈吉良〉
それはいろいろやり方は考えなきゃいけないなと思います

まずはゾーニングっていうやり方もあると思いますし
子供たちや一般の人たちの目に触れないような場所に
持っていくっていうところから始める中で

たとえば
社会的に「こういう表現っていうのは本当にまずいよね」
っていう 合意ができた時点で

本当
クリエイターの皆さんもそんなもの
描いていたら儲けられない、ってなれば描かなくなるでしょうし

そうした様々なやり方っていうのはあると思うんですよね
だからそういうやり方を本当に議論しながら探っていくと

でも どう考えても
「児童ポルノに賛成しますか」
って言われた時に
「賛成します」と
堂々と言える人がいるのかっていうのは
私は疑問だし

だからそれは本当に反対だと
子どもへの性暴力は絶対に許さないんだ
っていう 立場を揺るがすに貫きたい って

そういうことで
両方 両立し得る話だと思っています
表現の自由と子どもの人権を守る
両方 守らなきゃいけないと思ってます


## 吉良よし子議員の主張


以上、元動画を文字起こしして確認してみました。
吉良よし子議員の主張は3つです。

- 子どもへの性暴力は絶対に許さない
- 表現規制は明確に反対
- 国民的議論を



## 記事と動画の違い

ABEMA TIMESの記事で引用されていた内容と、動画の中で実際に吉良よし子議員が発言されていた内容には違いがありました。

<ABEMA TIMES 記事>
"こういう表現は本当にまずいよね”“儲からないよね”という合意ができれば、クリエイターの皆さんも作らなくなると思う
<実際の発言>
子供たちや
一般の人たちの目に触れないような場所に
持っていくっていうところから始める中で

たとえば
社会的に「こういう表現っていうのは本当にまずいよね」
っていう 合意ができた時点で

本当 クリエイターの皆さんもそんなもの
描いていたら儲けられない、ってなれば
描かなくなるでしょうし

そうした様々なやり方っていうのは
あると思うんですよね

だからそういうやり方を
本当に議論しながら探っていくと


記事では、

"こういう表現は本当にまずいよね”“儲からないよね”という合意ができれば、クリエイターの皆さんも作らなくなると思う

とあります。
「合意ができれば」が、「こういう表現は本当にまずいよね」と「儲からないよね」にかかっています。


しかし実際の発言では、「儲からないよね」は合意の対象ではありません。
また、「儲からないよね」ではなく「儲けられない、ってなれば」です。

社会的に「こういう表現っていうのは本当にまずいよね」っていう 合意ができた時点で
クリエイターの皆さんもそんなもの描いていたら儲けられない、ってなれば描かなくなるでしょうし

「こういう表現っていうのは本当にまずいよね」という社会的合意があれば(自然とニーズがなくなり)、クリエーターが「儲けられない」と判断すれば「描かなくなるでしょうし」、と発言されているのです。「描かなくなる」はクリエーターの自由意志による判断です。

どう読んでも、表現規制や表現弾圧は主張されていません。
共産党が「儲けられない」よう誘導しているとも読めません。
もしそのような意味をくみ取る人がいるならば、言葉外の問題であり、吉良よし子議員または共産党に対する偏見ではないでしょうか。

吉良よし子議員の発言は、社会的合意と議論の重要性です。
表現規制は明確に否定されています。

今回の批判騒動ABEMA TIMESの引用が不正確であり、誤解を招く表現によって起こったものである、というのがぼくの結論です。


## 共産党の公式見解


表現規制について、共産党は公式見解を出しています。
確認しておきます。

「児童ポルノ規制」を名目にしたマンガ・アニメなどへの法的規制の動きに反対します。

[60、文化(2021総選挙/各分野政策)│各分野の政策(2021年)│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会](https://www.jcp.or.jp/web_policy/2021/10/2021s-bunya-060.html)
Q 共産党は創作物に対する表現規制の容認(賛成)に舵を切ったのですか? 「女性・ジェンダー」と「文化」政策は矛盾していませんか?

A 
「7、女性とジェンダー」での記述にあるように、日本共産党は、児童ポルノは「性の商品化」の中でも最悪のものであり、児童に対する最悪の性虐待・性的搾取であって、社会からなくしていかなければならないと考えています。

同時に、「60、文化」の項にあるように、「児童ポルノ規制」を名目にしたマンガ・アニメなどへの法的規制の動きには反対です。
今回、「女性とジェンダー」の政策の中に、児童ポルノの定義を「児童性虐待・性的搾取描写物」と変えるとあることをもって、これまでの方針を転換し、マンガやアニメなどの表現物・創作物を法的規制の対象にしようとしているとの理解が広がっていますが、そうではありません。

「児童ポルノ」という言葉については、日本共産党は従来から、被害実態をより適切に表す「児童性虐待描写物」などに改めることを提起してきました(2014年6月17日、参院法務委員会議事録参照)。「児童ポルノ禁止法(1999年成立、2004年、2014年改正)」の保護法益は、実在する児童の自由と人格であり、その規定も、わいせつ性や主観的要素を構成要件とするのではなく、児童への被害の重大性を評価する必要がある、という観点からの提起です。

今回の「女性とジェンダー」の政策は、一足飛びに表現物・創作物に対する法的規制を提起したものではありません。日本の現状への国際的な指摘があることを踏まえ、幅広い関係者で大いに議論し、子どもを性虐待・性的搾取の対象とすることを許さないための社会的な合意をつくっていくことを呼びかけたものです。

そうした議論を起こしていくことは、マンガやアニメ、ゲーム等の創作者や愛好者の皆さんが、「児童ポルノ規制」を名目にした法的規制の動きに抗して「表現の自由」を守り抜くためにも、大切であると考えています。

[「共産党は表現規制の容認に舵を切ったのですか」とのご質問に答えて - 日本共産党 個人の尊厳とジェンダー平等のための JCP With You](https://www.jcp.or.jp/jcp_with_you/2021/10/post-49.html)


## まとめ


まとめます。
つまり、

・ 吉良よし子議員は表現規制を否定しています。
共産党は表現規制を否定しています。
・ 吉良よし子議員に対する批判はABEMA TIMESが不正確な引用をしたことが原因です。


メディアは記事執筆に際して、正確な引用をしてください。
一般読者は批判の前に、できるだけ一次ソースに当たるよう心がけましょう。

今回のnoteは以上です。

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