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昔々あるところの深淵(無意味な文章)

(注:世の中には意味のある文章が多すぎるため、無意味な文章を書いています。決して意味を見出さないでください)

「昔々あるところに誰々がいました、って出だし万能だと思わない?」

 前から思っていたのだけれど……と、同室の佐渡がそう言い出したのはGW最終日の深夜だった。この佐渡という人物は昔から変人で名高く「また変なことをしていてさ」と友人に話出したら(あぁ佐渡の話か)と暗黙的に了解されるレベルの変人である。その変人さが功を奏したのか、今は地域Webメディアのライターとしてそれなりにやっている立派な変人でもある。

 そんな人間とルームシェアしている私も変人……ということはなく、中学時代からの腐れ縁がだらだらと続いて経済的合理性などの理由で今の状態になっているだけで、私自身は平凡な会社員であることを理解してもらいたい。

 さて、佐渡が言い出した昔々万能説に戻るが──

「万能の意味がわからないんだけどさ、ただ昔話ですよって宣言しているだけじゃない?」

「違うよ。違う」

 正直明日の仕事に向けて寝る直前だったため真面目に考えてもいなかったのだが、佐渡は無駄なことにかけては常に真剣なので、私の雑な対応にむしろ目をギラギラとされてしまった。

「つまりはさ、リアルじゃないよって宣言なんだよ。実話かもしれないしフィクションかもしれない。曖昧な世界だから好きな話していいよって、そういうフィールドを前置き一つで作り出している」

「佐渡はいつも前置きなしに好きな話してるじゃん」

「してるけど。そうじゃなくてさ」

「いやまぁ、わかるけど」

 拗ねられても面倒なので、私はしょうがなく少しだけ付き合うことにした。

「じゃあさ、ちょっとそれで好きな話してみてよ」

 私がそうやって水を向けると、佐渡はパッと表情を明るくさせて話し出した。


「昔々あるところに、オビ=ワン・ケノービとルーク・スカイウォーカーがいました」

 いきなり権利的に自由な話するじゃん。

「昔々あるところに、ゆで卵を丸呑みするのが唯一の持ちネタの田山くんがおりました」

 2個飲もうとして救急車呼ばれたよね。もう忘れてあげよう。

「昔々あるところに、アチャイ・ピランカと松岡常三郎と漆黒の聖騎士アランがおりました」

 世界観揃えて。

「アチャイ・ピランカは山へ芝刈りに、松岡常三郎はワイバーン退治に、漆黒の聖騎士アランは川へ洗濯に行きました」

 ワイバーン退治の人選おかしくない?

「昔々あるところに、一人の若者がおりました。若者の祖父はあの鬼ヶ島を制した英雄 桃太郎といいましたが、若者は刀の才能がないことに悩んでおりました」

 偉大な先祖がコンプレックスの主人公が苦しみながら成長するタイプの続編じゃん。

「昔々あるところに、未来人がおりました」

 時間軸が難しい感じになってる。

「未来人が川へ洗濯に行くと、大きな桃が上流から流れてきました」

 鬼ヶ島が時空を超えた先にありそうなタイプの桃太郎だ。

「昔々あるところに、身長4メートル、体重10キロの男がおりました」

 棒では?

「男はある日こう思いました。『あぁ、もっとスリムな体型になりたいなぁ』」

 ヒモかな?

「そこに、身長6メートル、体重20キロの女が通りかかりました」

 まったく映像が浮かばないんだけど。

「女は言いました。『ぱちぇい、あらぶ

            ぺとら、くる・・・

   らい

      あ


 あれ、なん

へん   ?

 ぁ    そう

 むかし(EON)


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