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2月:甘いすれ違い wrote by @ko_momo_2


近すぎて素直になれず、すれ違うふたり
チョコのように甘いバレンタインストーリー

■カンナ
時ツ風学院高校3年生。幼なじみであるハルトを好いている。大学でもハルトと共にいると思っていたが……。
■ハルト
時ツ風学院高校3年生。音響関係の仕事に就く為、町を出てカンナと違う大学を目指す。
□カンナ母
□クラスメイト、友人

幼稚園にあがる前からずっと一緒だった
このまま大学も同じで
そのまま一緒に大人になっていくんだと思ってた
4月にはこの町にはもういないんだ……

ハルト「おはよ、よかった、まだ居た!」
カンナ「おそーい、もう52分じゃん。
             時計台に7時45分待ち合わせなのに」
ハルト「ごめんごめん。
              あれ?なんか元気ないじゃん。
              まだ卒業旅行反対されてんの?」
カンナ「それはもう大丈夫。
             それに元気あるしー」
ハルト「ふーん。
              そうだ、聞いて?
              俺この前東京いってきたじゃん?
              4月から住む家決めてきた!
             駅から徒歩15分ぐらいかかるけど、
             コンビニ近いしまあいい感じ。
              あー、ひとり暮らしめっちゃ楽しみ!」
カンナ「へー……良かったじゃん、
             いいとこ見つかって。
             自炊なんて出来んの?」
ハルト「少しはできるよ!
             なんか…機嫌悪くない?」
カンナ「別に!」
ハルト「あ、なに?俺がいなくなるの
             さみしくなってきた?」
カンナ「そんなわけないでしょ、バカ」
ハルト「なんだよ、可愛くねーの」
カンナ「ハルトに可愛いって思われなくても
             なんともなーい」

いつもこんなだもん、私を好きになんてならない。きっと好きって言ったらギクシャクしちゃう……
そう思ったら何も言えない。
でももういなくなっちゃう、だんだんその日が近づいてる。


友人  「ねえ、カンナはバレンタインに
            ハルトに本命チョコあげないの?」
カンナ「あげないよ、いまさら」
友人    「ハルト、結構後輩ちゃんにも中学生にも人気あるよ?
              しかも東京行っちゃうのみんな知ってるからね。
              今年はあげる子多いと思うよ?」
カンナ「私今までだって義理しかあげたことないもん。今年も変わんないよ」
友人    「カンナ~。素直にならないと後悔するぞ?」
カンナ「うん…… 」
友人    「そうだ、明日駅前通りの野外ステージで軽音部がちょっとしたライブやるの。
ハルトと見においでよ」
カンナ「わあ、行く行く」

ハルトにチョコ……いつも駅前で買ったチョコを義理としてしか渡したことがない。本命なんてとんでもない!
馬鹿にされたら嫌だし。
でも来年は渡せないんだ……


ハルト「どうした?ぼーっとして」
カンナ「いや、なんでも、なんでもない」
ハルト「最近おかしくない?」
カンナ「そんなことないよ!
             あ、ほら出てきたよ!」
ハルト「へー、あいつ結構歌うまかったんだな」
カンナ「結構人気だね!
             人がいっぱい……あっ」
ハルト「危ない!カンナ、こっちおいで。
              ほら、手!」
カンナ「あ、ありがとう」

……手、久しぶりに繋いだ……
こんなに大きかったっけ……
小さい頃はよく手を繋いで一緒に歩いていたっけ。
いつの間にか恥ずかしくなってた。

カンナ「久しぶりに手…繋いだ」
ハルト「ああ…そうだっけ?」
カンナ「うん。少4の時にさ、北区の山に探検行って迷子になったよね。
             あの時ずっと繋いでてくれて…
             なんかなつかしい」
ハルト「何言ってんだよ、ばーか。恥ずかしいじゃん」

そう言ってすぐにほどいた手。その温もりがまだ自分の手にあるような気がして、じっと見つめた。私やっぱりこの手を離したくない!

カンナ「思ったより上手くできたけど、学校に持ってきても渡すタイミングがないじゃん!
家に持ってくのは恥ずかしいし……」
カンナ「いつものとこで買った方が良かったかな…。
             急に手作りなんて恥ずかしいかな、やっぱりやめようかな」

そういえば確かバイトって言ってたから、
帰りにたぶん通る道で待ってみよう。
もしも、もしも通ったら渡して好きって伝えよう。
通らなかったら?きっとそういう運命だったんだ。

決心がつかないまま、偶然という運命に賭けてみた。

カンナ「いつもはこのぐらいに通ると思うんだけど……おかしいな。
             なんかあったのかな?」

カンナ「もういい加減来るでしょ。
             なんて言って渡そう……」

カンナ「どうしたんだろう、バイト先の人とご飯でも行ったのかな」

来たらきっと慌てるのに、来ないと不安がよぎる。
バイト先の女の子に、バイト先に後輩ちゃんが押しかけて……嫌なことばかりが私を揺さぶる。

カンナ「あ……雪…降ってきちゃった。」

カンナ「結局こういう運命だったのかな……」

雪が舞う空を見上げて、涙がこぼれた
ねえ、ハルト。
今はまだ一緒に居るのに、こんなに寂しいよ。
ねえ、ハルト。
離れることに少しも寂しいとは思ってくれないの?
私これからやっていけるのかな……

カンナ「ハル……ハルトぉ……ヒック」

その日、2時間待っていたけどハルトは通らなかった。
真っ白になった道をひとり足跡を残しながら帰った。帰り道も家に着いてからのことも、よく覚えていない……

カン母「はい、すみません。
             今日はお休みさせますので、よろしくお願い致します」
カンナ「お母さん、じゃあ寝てるね」
カン母「ちゃんと薬飲んだ?
             雪で冷えちゃったのかしらねえ?」
カンナ「ん……おやすみ」

39度。なかなかな体温をたたき出したと思う。
今は何も考えず眠りたい。

……どれぐらいたっただろう?
ふと人の気配を感じた。

カンナ「ハルト?なんで……」
ハルト「いや、学校帰りにさ、休んでるから寄ったら、おばさんに上がっちゃってって言われて……
             駅前でお前の好きなプリン買ってきた。
大丈夫か?」
カンナ「…プリン。幼稚園の時、初めて2人だけで駅前に買いに行ったね」
ハルト「そうそう!桜が咲いてる頃でさ、
             家に帰ってから食べるように言われてたのに、桜みながら途中で食べてて怒られたよな」
カンナ「いつも怒られる時ハルトと一緒のことが多かったな」
ハルト「北区に冒険行った時はめっちゃくちゃ怒られたよな」
カンナ「そうだね、小学校も中学も高校の先生たちまで探してくれてて……」
ハルト「あれは不安だったな……。
             でも俺男だからな、泣かずにカンナ守んなきゃって思ってた」
カンナ「もう……守ってくれないじゃん」
ハルト「え?」
カンナ「遠くに行っちゃうじゃん」
ハルト「それは……」
カンナ「昨日だって」
ハルト「昨日だって、なに?」
カンナ「……昨日バイトの後何してたの?」
ハルト「別に……」
カンナ「言えないようなことしてたんだ」
ハルト「お前だって遅くまで何してたんだよ」
カンナ「……ハルトには関係ない!」
ハルト「は?じゃあ俺だってカンナには関係ない」
カンナ「ハルトなんか大っ嫌い!」
ハルト「痛っ、もの投げるなよな!
             ……チョコ?」
カンナ「ハルトなんて勝手にどっか遠くに行っちゃえばいいんだ!」
ハルト「カンナ……」
カンナ「駅前で寄り道して遊ぶことも、神社の夏祭りに行くことも」
ハルト「カンナ!」
カンナ「初詣に一緒に行くことも…
            もうできない
            ずっと一緒だと思ってたのに……!」
ハルト「カンナ……!」

カンナ「迷子になった時、ずっと僕が守って
             あげるって。言ったじゃん…」
ハルト「うん、言ったよ…」
カンナ「ハルト……痛い、
             そんなに強く抱かれたら苦しいよ…
             ごめん。なんか熱でおかしいのかな        
             ……もう大丈夫だから」
ハルト「あっごめん。
            ……俺何度も戻ってくるから
           初詣にも、春には桜を見に
           夏には夏祭りでお前に浴衣姿見に。
           いっぱい、いっぱい戻ってくるから」
カンナ「……あのね昨日、何してたかって、
            ハルトのことバイト帰りに通る道で
            待ってたの。
             会えたらそのチョコ渡そうと思って」
ハルト「え、俺はカンナの家の近くで待ってたんだ。
俺には今年くれてないのに、明らかにチョコって感じの袋持ってたから気になって。
             ……2人でお互い違う場所で待ってたんだね」
カンナ「ふふ、そうだね」

ハルト「カンナ……好きだよ」
カンナ「私も好き……」
ハルト「なんか照れる、言ったこと無かったし」
カンナ「うん、照れる……」

一緒にいられるのはあと1ヶ月ちょっと。
桜が咲く頃にはもういない。
どこにいてもハルトを感じていたくて、
町中に想い出を作りたい……

幼稚園にあがる前からずっと一緒だった
これからは別々の場所で
大人になっていく
会える日を指折り数えて……

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