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『トクサツガガガ』の名言集 #思い出のマンガの一言|マンガ

丹波庭先生の『トクサツガガガ』。

週刊スピリッツにて2014~2020年連載。

6年にわたって、わたしの魂をゆさぶり、心を癒し続けてくれたマンガ。


大きな賞を取ったり、主要なマンガランキングで上位に入ったりしたことはありませんが、NHKで実写ドラマ化されているのでご存じの方もいらっしゃると思います。いちおう100万部は売れてるらしい。

男児向け特撮作品が好きな女性を主人公にしているものの、特撮の魅力だけでなく、好きなものを好きと思う気持ちの大切さ、創作することの意義、創作者の矜持、人・社会との付き合いのあり方などを、笑いに載せて届けてくれる名作です。


イライラしても苦しくても、しんどくても泣きたくても、本作のページを繰れば必ず笑顔になれる。元気が出る。

「好き」になること、「好き」なものを追い求めること、「好き」であり続けることを肯定してくれる。自分にとっては全20巻のバイブル。


勝手ながら  #思い出のマンガの一言  に参加させていただきます。一言ではないのでルール違反かもしれませんが、たくさん紹介したいのでどうぞご容赦ください。

では――



好きなものに年とか性別とか関係ないと思います。
仲村さんが決めていいことです。

仲村さんは主人公。

特撮オタクの自分を恥じる彼女に、先輩オタク・吉田さんがかけた言葉です。吉田さん自身、オタク趣味を捨てようとしていました。

二人はこの言葉に救われ、生涯の友達になります。



詳しいほうがもっと好きとか、「その程度の知識で」とか、魔王かよ!
そんでその詳しさのゴールはどこなの?
好きって言っていいラインはどこ? いつ言えるの?
隠してようが黙ってようが恥じてようが詳しくなかろうが、好きと思ったら好きになる権利があるんや。

好きと思ったら好きになる権利がある――

本作の根底を流れる愛のあいさつ。好きって言っていいラインは、いま、自分が、自分の信念に基づいて引くもの。好きなの? じゃあ好きって言っていいんだよ。もちろん口に出して言わなくても構わない。

あなたが好きだと思ったら、それがあなたの好きなんだから。



どんな優れた考えを持っていたって、失敗や恥を恐れて表に出せないのは、どんなつまらないモノにすら劣る。
ちゃんと分かってるじゃないですか。
誰にでもできるっていうのは、誰でも成し遂げるワケでもなければ、卑下することでも、おろそかにしていいことでもないんですよ。
ぶつかれ。大きく愚直に決めてみろ。
体面や小手先の器用さばかりでどうする。
緻密さや高度さに気を取られるな。
私から行くって決めたんだから、びびらず、でかく踏み込まなきゃ。

創作する者の心構え。本作はこういうtipsが随所にちりばめられています。何か新しいものを創り出そうというなら、こんな気持ちでありたい。

自分にしかできないことがある」なんて思い上がったことは言いませんが、自分が創り上げたものは、それが何かのマネであっても、この上なくつまらないものに見えても、間違いなく自分だけのものです。

出来上がったものを世に問うなら批判は甘んじて受け入れなければならない。でも、それはあとから考えればいい。まずは「えい!」と勢いのまま創り上げることが、何より大事で尊いプロセスなのだと思います。

だから匿名でやってるnoteの文章「ごとき」で、「こんな作品をアップするなんて恥ずかしい」とか「本当につまらない失敗作だけど」とか「読む人にどう思われるんだろう」だなんて(そう感じてしまうのはとても自然なことだけれど)意識しすぎることはないのです、本来。



許せないトコはいっぱいあるけど、とってもスキです。
出来が悪いからスキなわけないとか、面白いのにキライなんて負け惜しみだとか、全部別々だし、全部一緒になってたっていいんですよね。

読んでいて「あらためてこの作品スキだな」と、ほれぼれしたセリフ。フィクション作品について言及した部分ですが、なにかもっと普遍的な概念のようにも思います。

スキとかキライとかって、簡単に色分けできるものではない。スキじゃないところも含めてスキだったり、みんなはスキだって言うところにかぎって自分はキライだと思ったり、そういうのってよくあることでしょう?

スキじゃないの? じゃあキライなんだね」って、なんでみんなそんなに峻別したがるのだろう。厳密に分ける必要なんてないんです。一緒にあったっていい。何の問題もないじゃないですか。

何かと選択の迫られる場面の多い毎日ですが、フィクションを楽しむときくらい、そんな雑な二択から離れて、気持ちを楽にしていきたいものです。



私もいつか、もっと輝いて見えるものに出会って、さよならがつらいとさえ気付かずに去るのだろうか。スキは誰にも消せない火だと思っていたけれど、自然に消えるとき、それは自分でもどうすることもできない。

あれほど大好きだったものを忘れてしまう。お別れすることもなく。つらいとさえ思わず。

切ない。切ないけれど、「年をとる」「成長する」「人生の新しいステージに進む」とは、そういうものなのかもしれません。

まぁ自分が『トクサツガガガ』を好きな気持ちは誰にも消せない火ですが。この先どんなに面白い作品に出会っても、同じ気持ちを味わうことはないって、そう断言できます。



待って、運がめぐってきても、そのときカメラをかまえてない人に、運はつかめないんです。
かすめるほど近くを舞う花びらさえも、見ているだけでは過ぎ去っていくだけ。

チャンスは気まぐれに落ちてくるもの。

目の前をひらひら舞う花びらのように、風の気ままにただ通り過ぎていく。

逃さずつかみにいける?

いや、事前の準備も心づもりもなしに、つかみ取るなんて無理。目の前を通り過ぎたことに、気付けさえしない。

写真家が一瞬の光を切り取るためにじっとカメラを構え続けるように、狙って狙って狙って狙って、それでようやくつかめるかどうか。チャンスを拾った人をうらやましがるだけじゃダメ。思い切って自分から挑んでいかないと。



不格好に負けて、くじけて、失敗をしても、
敗れ、折れた刀は、未来で戦う人の守りの刀になる。
重ねれば重ねるほど強く。

最終巻より。

簡単に言えば「失敗は成功のもと」ということ。

どんな文脈で使われているか、ぜひ本編をお読みいただければ。




ステキな企画ありがとうございます。





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