プレゼンテーション1w

意欲とは何か

You can take a horse to the water, but you can’t make him drink.

大人の英語教育は、やる気になった「励起済みの人々」が対象となるので、いかに励起状態を継続させるかが問題になります。一方で、子供の英語教育は最初の励起が一番の問題になります。高い月謝を払って英語塾に通わせても、そこで身のある情報を摂取できるかどうかは本人次第だからです。

姪に英語検定の5級を受けさせる

姪が小学3年生で、姪の母親が英検を受けさせようとしています。幼児向けの英会話学校に通わせたり、私に英語を教えるように仕向けたり、いろいろと試行錯誤をしているようですが、姪本人の意欲に火が付きません。私は、姪がやりたいと思うのならいつでも教えてあげるよ、と言っています。ただ、母親としては姪がなかなかやる気を出さないので困っているようです。

学びとは本来、自分次第

学びというのは、結局本人次第です。そうなると、教育の成否を決めるのは、どうやって本人をやる気にさせるのか、ということになります。どうしたら何らかの行動を起こす「意欲の喚起」できるのか、なにが「動機づけ」になるのか、というのは教育に携わる人にとって永遠且つ最大の関心事です。

「機能的な意味での動機」これは進学や就職に有利だから、という実利のモチベーション。「意義的な意味での動機」これは外国の社会と交流したい、異文化を理解してみたいというモチベーション。または、「内側から湧き上がる動機」「外側からけしかけられる動機」との対比で考察されたり。学術論文もいくつかあって読んだことがありますが、人間の心というのは複雑で個性がありますから、一般解というのはなかなか出すのが難しいテーマなんですね。結局、”統計的に云々”という結論がせいぜいで、なかなかそれが適用されて再現性があるのかどうかは疑わしいというのが私の見解です。

私の場合

私の場合は、最初は学校のテストのための「機能的な意味での動機」で英語を始め、次第に大学生以降に「意義的な意味での動機」を見出していきました。中学生の時に行った初めての海外旅行で”学校の成績以外の意欲”が芽生え、大学の留学生との交流で勉強ではない英語の存在が次第に大きくなっていきました。最初は学校のテストという「外側からけしかけられる動機」ではじまり、その意義が腑に落ちるにしたがって「内側から湧き上がる動機」が上回っていきました。就職や進学のために英語を使えるとなれば「外側からけしかけられる動機」によって勉強をさらに加速させました。

まず大前提として、子供に対しては外側からけしかける必要があります。日本において英語をしゃべらなくても生活ができますから、英語学習価値を子供が自律的に認識するのを待っているのはリスクがあります。そして、ある一定以上の英語力を身に付けるために勉強を継続するためには、「内側から湧き上がる動機」が必要でしょう。その様な内発的な動機が生まれやすい環境を用意してあげるのが、子供に対して親ができる最大限のプレゼントではないでしょうか。

内発的動機① 国際的志向性

いろいろな文化の人と知り合いたい、外国人と友達になりたい、国連などで国際的な仕事をしてみたい、海外での出来事や国際的な問題に興味があるなど、世界とかかわることを求める態度、異文化や外国人への態度を包括的に捉えるのが「国際的志向性」です。その対極として、外国人が近所になる事を極度に恐れることや海外への出張や転勤は避けたいという異文化回避傾向も、逆の意味での国際的志向性ということができます。つまり、志向性があることの逆は無関心ということになります。

この国際志向性を育むには経験が圧倒的に効果的です。国際を感じる経験、それは国際的な雰囲気のある場所(東京とか京都とか)に行く、外国に旅行に行く、などです。例えば、日本という枠組みを超えたイシューについて家族の中で話題を出してみる。環境問題を学ぶことで南極やツバルなどを知ることで国際を感じることができます。私は圧倒的に旅行がおすすめですね。今なら韓国や香港に行くと、面白いでしょう。子供が「何をしているんですか?なぜですか?」と聞いたら、現地のデモをしている人々は優しく説明してくれるでしょう。それを夏休みの自由研究にすればいい。

内発的動機② 新たな自己の発見

私たちは自分のことを客観視するのが難しい。それは”井の中の蛙”的な認識の限界で、大海に出てみることで初めて今まで井の中で暮らしていたことに気づくことができるのです。

日本は同質性の高い国です。だから、暗黙の了解事項が大変多くて、日本人としては大変過ごしやすい環境です。それはそれでいいのです。しかし、テクノロジーの発展によって世界は急速に狭く小さくなってきています。ネットでいつでも外国と無料でチャットできる。飛行機代も10年前に比べてかなり安くなりました。日本もこのグローバル化の流れを無視するのではなく、積極的に利用して国力を上げてほしい。では、グローバルな視点から見て日本にはどんな価値があるのかを査定するときに、絶対に客観的な視点が必要なのです。

アメリカに留学をすると、アメリカから見た日本を知るようになります。中国人と言語交換をしていると、中国人から見た日本を知るようになる。自分の外の世界のことを勉強することで、自分の内の世界が見えてくる、新たな自己の発見が促されるのです。

スイスの公用語は

永世中立国でEUにも属さず、ロレックス・フィリップモリス・タグホイヤー・ネスレなど高付加価値の企業を抱えるスイスという国があります。長い間戦争をしていないが超強力な武力を保持していることでも有名。私はニュージーランドでスイス人とシェアハウスをしていたことがあります。スイスにはなんと国語が四つあるそうで、

<スイスの4つの国語>
・「ドイツ語」
・「フランス語」
・「イタリア語」
・「ロマンシュ語」

全てのスイス人は複数の母語を持っています。スイスは永世中立国ですが、決して周辺諸国と分断し孤立しているわけではなく、むしろ積極的に周辺諸国の動向を注視しているのです。そのスイス人は加えてニュージーランドまで英語を勉強しに来ていたのです。すさまじいです。

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