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私の見てきた事業再生の世界 はじめます。

はじめに

まず、このテーマを扱おうと思った経緯を説明したいと思います。

コロナショックの影響で、2020年4月の民間銀行と信用金庫の貸出残高が統計を取り始めた2000年1月以降で、過去最高水準(553兆円)に達したとの報道を目にしたのがキッカケです。

これは経済活動の停滞不安により資金を厚く確保したい、また、売上急減による緊急的な資金確保という企業ニーズと政府の緊急経済対策により金融機関が積極的に動いた結果だと私は理解しています。

コロナ終息後の資金繰り懸念

融資を受けるということは、当たり前ですが、返済していかなくてはいけません。単に不安だから資金を積み増し、コロナ終息まで借りた資金に手を付けずにいれば、返済は問題ないでしょう。しかし、売上が8割9割減という会社においては、家賃・水道光熱費など固定費負担に消えていくことが予想されます。とすると、コロナ終息後にコロナ発生前以上に収益を獲得し、返済原資を確保していかなくてはいけません。しかし、環境変化に対応できず金利負担、返済負担だけが重くなり、資金が枯渇する事業者が増えるのではないかと懸念しております。

中小企業の中でもある程度の規模(*)があれば、社長自身(又は専属の経理担当者)が、金融機関と定期的にコミュニケーションをとり、前広に相談ができると思います。また、規模が大きければ、多少の費用負担ができるので、専門家を雇い、スピーディな対応ができると思います。

(*)従業員数や年商で示すと誤解を与えるかもしれませんが、あえて、私の感覚で説明すると、従業員数30人以上 or 年商5億超で、それなりに歴史のある会社を想像します。数字はあくまで目安です。要するに、ある程度の規模感と組織化、歴史があると、借入をしており、金融機関とも長い付き合い(=上手に付き合っている)をされていそうという印象があるだけです。

しかし、小規模の場合は、なかなかそうはいきません。社長も銀行担当者と年1回決算で話す程度、または、融資の時に1度会ったきり、なんて方もいらっしゃいます。下手したら、顧問税理士とも年1回会う程度。頼れる人がまわりにいないケースも多々あります。かといって、専門家を雇うにしても資金繰りが厳しい状況で、費用捻出(*)は到底できません。

(*)自社の顧問税理士にお願いする場合、格安で対応してもらえるかもしれませんが、スポットで外部アドバイザーを雇うなら規模や業務内容にもよりますが50万円~数百万円の覚悟が必要だと思います。

金融機関の事情

一方で、金融機関側は、小規模事業者に多くの時間をさけない現実があります。
①支店レベルでは、人員がそもそも少ない
②事業再生に詳しい人も少ない
③優先順位が低い(大口先であれば本部と連携し優先対応が考えられるが、小規模では難しい)
④今回の緊急経済対策による融資は、基本的に信用保証協会付(民間金融機関の立場は、事業者から回収できなくても信用保証協会から代位弁済(*)により回収可能)

(*)代位弁済とは、信用保証協会が民間金融機関に対して、事業者の債務を代わりに返済すること。今回の場合、事業者の保証人に信用保証協会がなってくれています。本来、事業者は保証料を信用保証協会に支払い成り立っていますが、今回の緊急支援では、そこも、政府負担となっており、仮に、事業者が破産(自己破産)してしまうと、最終的には税金でまかなわれることになります。

まとめ

このような状況を鑑みると、資金繰り不安になる前に、コロナ後の環境変化への対策を打っていくことは大切です。が、対策を打った会社がすべて上手くいくとは限りません。上手くいかない場合に、「事業の継続 or 中止」の判断をしなければいけません。その判断をする上で、事業再生の知識を理解しておくことは、自社を守る上でも、金融機関と円滑にコミュニケーションをする上でも、非常に有効だと思います。

事業再生を知らない事業者や専門家(公認会計士・税理士・中小企業診断士など)の方々には、これを機に、事業再生の世界に少しでも触れていただき、会社(又は事業)を守る術を身につけていただければと思っています。

事業再生、特に、私的整理においては、ケースバイケースであり、関係者の利害関係がぶつかり合い、理屈では説明できないところもあります。そこがある意味”人間味”があって面白いところと言えると思います。

私の限られた経験ではありますが、何かのお役に立てば幸いです。これから数回に分けて説明していきたいと思います。では、また次回。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。気に入っていただけたら、「いいね」や「フォロー」していただけると励みになりますので、よろしくお願い致します!

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