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しりとり

息子を習い事に送ろうと自転車置き場へいくと、電動自転車の後輪がパンクしていた。
一度部屋に戻り傘を持って家を出る。
小雨が降っているが、冷たい雨ではない。

地下鉄に乗り込むと息子が「しーりーとぉり」と声を出してはじめる。
りんご、ごりら、ラッパ、パパ、パンツ、つみき。
4月から小学校に上がる息子は、それまで文字に興味をあまり示さなかったのだけど、冬になるくらいから、少しずつ文字の練習をはじめている。
文字を知るに連れてしりとりもできるようになり、移動中に突然はじめる。

息子がなるべく知ってる言葉や、いろんな単語に触れるようしりとりを進める。
「きずなって何?」
キツツキ、きのこ、きこりなど出したあとの「き」で僕はあまり考えず「きずな」と言った。
「そうだなぁ、人と人の見えない繋がりみたいなものかな」と答えると息子はふーんと言ったあと
「あぁハル君とレンくんが大好きみたいなもんか!」と保育園の仲良しの友達の名前をあげて納得していた。
新しい言葉をこんな風に理解していることに感度を覚えた。

しりとりは続く。一度出た単語も出てくるので「それはもう言ったよ」と伝える。
すると少し考えてから「あっ!でもなぁ、あんまり良い言葉じゃないんだよなぁ」と悩みだした。
そして意を決して、それまでは電車内に聞こえてしまうくらいの声量だったのに、声を落として僕の耳元に口を寄せて言う。

「うんこ」

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