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STAND BY ME

【歌詞】

朝になっても覚えていた
まだ昨日の衝撃と温もり
次回予告が気が気じゃない
寂しさと手を繋げる

君に会ってどれくらい経つだろう
まだ消えない 忘れないで

STAND BY ME ただそばに居て
STAND BY ME 離れたくないよ
茜空に似た優しさ 滲むような
あの感じを探しながら 繋いでいこう

誤魔化して 配わないで
それぞれの正義を以て言えよ
論点は出来事じゃない
その所為で悲しむ人が居たこと

STAND BY ME ただそばに居て
誓いの旗 背にここから取り戻そう
次は俺達の番だぜ

STAND BY ME ただそばに居て
STAND BY ME 離れたくないよ
茜空に似た優しさ 滲むような
あの感じを君と一緒に探したいよ

 秩父ladderladderというライブハウスに行くきっかけを作ってくれたのは、ホームの越谷EASYGOINGSで働いている2つ上の先輩だった。先輩が秩父まで連れて行ってくれた日、出演していた mabuta に衝撃を受けた日のことを書いた。次の朝になってもその熱は残ったままだった。

 アウトロのブレイクが、時が一瞬止まったかと思うほど綺麗に揃った。あの瞬間の光景は今でも鮮明に思い出せる。閃光が走った様な感覚。その日から mabuta が誰より何よりの憧れになった。酷く痛々しく、見てられないくらいに。

 「STAND BY ME」の冒頭のリフはD#のキーで何ヶ月も前から存在していた。ずっとそのリフをやりたかった。ただサビメロに合わせるとどうしてもC#に下げなくちゃ高すぎて歌えなかった。ただ開放弦を多く含むフレーズなのでただキーを下げることは出来ず、残す方法はドロップチューニング(6弦だけチューニングを下げる)しかなかった。それに何の抵抗なく興味を持って取り組めたのも何の捻りもない影響からだった。

 2023年8月22日、渋谷MilkywayでのOrange Candy Tour 裏ファイナルが「STAND BY ME」初披露の日だった。その日会場入りしてすぐ楽屋でギターを弾きながら、あと数時間後に歌う曲の歌詞を考え直していた。mabuta のことを「彼らはすべて抱き締めるようなライブをする」と某ライブハウスの店長が言っていたのを思い出した。「すべて抱き締める」と同じ表現をしたいと思ったとき「茜空に似た優しさ」というフレーズがパッと浮かんだ。そのまま歌って、そのまま採用した。

2024/8/22 Shibuya Milkyway



 今のバンドを続けて5年目に入った。お世辞にも売れてないけど、有難いことに慕ってくれる後輩はいる。格好悪い先輩にはなりたくないという思いもあって、あの時の秩父の衝撃を次は俺達が他人に与える番だと思うようになった。 そんなことを考えている中で、自主企画やツアー等でひとつ覚悟の象徴とも言えるバックドロップを「誓いの旗」と歌おうと思い付いた。「メロディーフラッグ」的な意味合いで。

 途中から気付いていた。今やろうとしていることはただの真似事。人には人、俺には俺の正解があること。数学のテストで「答えまであと少し」と思って書き殴っていた式が、終盤になってそもそも使う公式を間違えていることに気付いたときのあの感じに似ている。書き直す気力もなく時計の針を眺めるだけの自分を支えてくれたのは、いつだって友達やお客さんだった。俺がどんなに腐っていてもずっと俺のそばに居てくれた。勝手にその人達の為に歌おうと思った。

 だからCメロ部分だけ急に上から目線の歌詞になっている(ごめんね)。誤魔化したりしないで、自分の思いのままに素直にいてほしい。世間や環境に迎合しようとしなくていい。本質を理解しようとする気持ちさえあれば、その後は全部自由でいいと思う。だってみんな素敵だから!きっとこれは俺が誰かから言われたかった言葉なんだと思う。

 憧れは永遠に越えられないからこそ自分に無限の可能性を与えてくれる、と思うようになった。本当は「STAND BY YOU」と言えた方が、きっとカッコイイんだろうけど、自分と素直に向き合ったときに内向的な自分が真っ直ぐ叫べる言葉は「STAND BY ME」だった。

 ただ「STAND BY YOU」も語感が良いので、ツアータイトルにしちゃった(照)。Dear Chambers の森山さんにはツアー初日に出演してもらったとき「俺達の丸パクリだと思ってる」と言われたけど、確かに弁明の余地はない... 多分本当に好きだったんだと思う。許してください。

 話が逸れるけど、こうやって振り返る度によく「俺が好きなバンドは府中と秩父に多いなあ」と思う。越谷にももちろん先輩は居たし居るけど、高校出たらすぐ辞めちゃったり仕事やら何やらで今も頻繁に活動出来ている人は少なかった。だからどんな場所でも、地元で面倒を見続けてくれる先輩がいるっていう環境が本当に羨ましかった。

 もともと学生時代から人や物に執着する癖がある人間なのに、越谷でそんな背景があったからこそ余計に好きな人にしがみついてしまう。あまり良くないことだと気付くのが遅かった。良くないというのは、あくまで俺個人の場合の話だけどね。とか言って多分一生寂しいまま誰かに縋ってしまうんだろう。

 そんな人間の寂しがりを色んなライブハウスや音楽を通して言語化して濾過して出来上がったものが「STAND BY ME」という曲であり、アルバムであると思う。てか、MOCKEN 自体だ。「STAND BY ME」という言葉に俺のすべてが集約されている。

 今日からMOCKENの楽曲について細かく赤裸々に紐解いていくから、忘れずに読んでね。俺の取り柄は「変なところで素直で居られる」ことだけ。だから「あんなMCすんな」とか怒られることもしょっちゅうある。このセルフライナーノーツを更新していく中で「そんなこと書くなよ」みたいなのも、もしかしたらあるかもしれない。

 だけど俺が曲を作るのも、バンドを続けるのも、何をするのも、すべてその素直の延長線上なんです。

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