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発掘した資料が今でも通用しそうだったので解説してみた。


はじめに

とある理由で昔の資料を漁っていたら、とある資料を見つけました。
Xに投稿したところ、意外にも好評、なようです。
そこで、解説してみようと思った次第。
画面、表現の項目は書いている内容のままだと思いますので、説明を省略しました。

まずはその資料の画像

アーケードゲームで何が重要か

この資料が書かれた背景

日付のみで年代がわかりませんが、記憶によると上田和敏氏がテーカンの企画課長で企画課のスタッフにお題を出して、それについて書いたものだと思います。
とすると、少なくとも1985年より前のものではないかと思います。
1985年だとストーンメイズの開発に入っており、お題を出して発表し合う、というスタイルは無くなっていたと思うからです。
1986年では無いのは間違いありません。1986年にはソロモンの鍵が発売になり、ファミコン版の開発よりずっと以前に上田さんはテクモを退社されているからです。

内容の説明

アーケードゲームで何が重要か

対象としている「アーケードゲーム」。
これはゲームセンターに置いてあるゲームの事です。
当時のアーケードゲームは容量も現在ほど大きく無く、遊び方も筐体に貼ってある「遊び方シール」というA5くらいのサイズに要点が書かれているのみです。
どちらかというと、コインを入れる前のデモでゲームの内容を知る、方が多かったかも知れません。

ゲーム上でのやりとりにプレイヤーがのめり込む事

この「やりとり」ですが、敵がいれば敵との駆け引きという意味合いです。広義ではゲームとプレイヤーとの駆け引き、という意味になります。
アーケードゲームはそのビジネスモデル上、プレイヤーを想定プレイ時間でゲームオーバーにする必要があります。1コインで粘られるとゲームセンターは利益が出ません。ですから、必ずゲームオーバーにする必要があったのです。
殺そうとするゲームと生き延びようとするプレイヤー、そのやりとり。
しかも、面白いと思わせて、死んだ後もう一度プレイしたいと思わせる。
その為に必要なものは何か、という回答がこの「ゲーム上でのやりとりにプレイヤーがのめり込む事」です。

1.理解 (何をするか、こうするとどうなるか)

どんな事をするゲームで、例えばステージをクリアするゲームなら何をしたらクリアになるのか、などをプレイヤーに理解してもらう、という事を言っています。
ここはかなり重要で、何をやっていいか、何が起こってるのか分からないと、決してのめり込む事はありません。

2.納得 (これはこうなって当たり前)

理解した上で、ゲームが提供する環境をプレイヤーが納得(容認)するプロセスです。
理解はしたが、納得できない(性に合わない)とプレイは継続しません。

3.応用 (こうすればより上手くできる)

1、2のプロセスを経て、プレイヤーはゲームに対して能動的になっている状態です。より上手いプレイを追求するようになっています。
もちろん、プレイヤーの目論み通り上手くいくとは限りませんが、そういう思惑を抱く事ができる事、それが重要なのです。

4.期待感 (ゲームの内容に奥行きがあると感じる事)

3 が比較的短いプロセスでの期待感とすれば、これはもう少し長いプロセスでの期待感。ゲーム自体の奥行き(ステージ数や、遊びの奥深さ)を感じられるかどうか。プレイヤーが自分の上達に期待できるかどうか、という点も重要な要素です。

5.充足感と非満足感 (ゲームに満足しつつも、今の自分のプレイよりも今度の方がうまくできるのでは)

1〜4のプロセスでプレイヤーがゲームに対して十分な期待感を持つと、ゲームオーバーになっても再度プレイする可能性は高まります。
アーケードゲームのビジネスモデルもあり、この事は特に重要になります。
ここで言う充足感とは、直前のゲームのプレイはとても良い体験である、とプレイヤーが認識する事を言います。ええと、短く言うと「面白かった!」です。
それに対して非満足感とは、物足りないと言う気持ちです。先ほどの充足感と矛盾するようですが、「面白かった!」に続いて「またやってみたい!」の気持ちの元です。プレイヤーが完全に満足してしまうと、リプレイしなくなる可能性があります。このため「後少しでクリアできた」と言う方が可能性は高まります。
クリアで無くても、さらなる目標の提示とかでも良くて、兎に角、やった過去は満足だけど、ゲームが終わった瞬間、飢えている状態を作り出す事、を意味します。
この実現のために、1〜4のプロセスが必要なのでした。

6.学習性 (プレイヤーがゲームで上達できる事)

6番目になっていますが、プロセスとしては3と4の間だと思います。
1〜3のプロセスを経て、ゲームを上手くプレイできる事を実感する段階です。
チュートリアルやステージの難易度などの設計がこれに関係します。

7.緊張感と非緊張感 (息もつかせぬ展開、それを盛り上げる間)

アーケードゲームは基本的にプレイ中緊張します。しかし緊張しっぱなしでは感覚が飽和してしまうので、リラックスする時間帯を設けます。ステージクリア後のただ見ているだけの画面がこれに相当します。
これは、プレイヤーのプロセスではなく、ゲーム進行の設計で意識する内容です。

おわりに

解説の補足

「アーケードゲームで何が重要か」というお題について記載した文書の内容を解説しました。
この記載、アーケードゲームに留まらないなぁ、と思ったので解説してみました。
得に5はソシャゲでも重要な要素だと思います。昔似たような記事を書いた事があります。
満足しつつも、もう一度遊びたいと思わせる。
端的に言えば中毒性です。

要素の使い方

この各要素は、ゲームを作る上での指針やチェックリストになると思います。
どうやってゲームを発想して組み立てていくか、というノウハウにはならないと思います。
ゲームを構築していく際、上手くいってるかどうかを確かめる手段の一助になれば幸いです。


宜しければ、ゲーム制作などのクリエーター活動のサポートをお願い致します。