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お茶好きの隠居のカーヴィング作品とエッセイ-昔ばなし

13.ツグミとシジューカラ


ツグミのカーヴィング作品
シジューカラのカーヴィング作品
Black-capped Chickadeeのカーヴィング作品

つぐみとしじゅーから

寒さ厳しい庭先で
口をつぐんだ無口鳥

おしゃべり鳥の一団を
迷惑顔で見上げてる
よくもまあしゃべること
何がそんなに楽しいの

あきれ顔した冬の鳥

それに気づいたおしゃべり屋
なんてまあ気難しいお隣さん
寒さを紛らす術(すべ)もなく
ひとり寂しく立ち尽くす
お可哀そうなお人だね。
何でそんなに孤独なの
あきれ顔した冬の鳥
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チッカディーと戯れ笑う幼子の
姿に写る吾子(あこ)のおもかげ

Chickadees

To the adorable little birds
My little girl lisps a few words,
Offering them some foods.
They accept it finding no hazards.  

Her bright smiles dispel my gloomy moods
Induced by others’ offensive attitudes.
Chickadees arouse her to smile
In my backyard where an apricot tree blooms.

Such a memory returns to me once in a while,
Together with a past sore trial.
Soon I’ll be an old man that lives in the past.
But I accept whatever happens, that is my style.

Happy days have quickly passed.
And my life will not long last.
I surely know time flies so fast.
While I have breath, to my idea I'm steadfast.

ツグミ


ツグミは秋に日本に渡って来てしばらくの間は山地に留まって居ますが、冬になると平地に降りて来て、農地、公園、家の庭などで良く見かけるようになります。 庭先などに降りている姿を見ていると、しばらくの間はじっと身じろぎもせず一点を凝視し動かないでいて、それからチョコチョコと少し移動して再び止まってジッとする、ということを繰り返します。 めったに鳴かず、正に口をつぐんだままの「ツグミ」です。 それでも、たまには地啼きをするようですが一言、二言の地啼きですから美声とは言いかねます。 繁殖地のシベリアでは囀るかもしれませんが聞いた事はありませんし、シベリアでのツグミの声のユーチューブも見つかりませんでした。 ただ一般的に言えば、ツグミの仲間は良い声で囀るものが多いようです。 例えば、クロツグミの歌声は定評のあるところでしょう。 ヨーロッパのBlackbird (日本名:クロウタドリ)は日本のクロツグミに極めて近い親類ですが、その歌声はかの地でも、最高位に評価されており日本のクロツグミとその囀りを聞き比べてみても互いに遜色なく負けず劣らずです。 だから、このツグミも繁殖期にはシベリアで良い声で啼くのかもしれません。 序に言うと、北米のBlackbird はヨーロッパのBlackbirdとは全く違う鳥で正確に言うと、ただのBlackbirdではなく頭に形容詞が付く~blackbirdです。 4種類の鳥がいますが、いずれもツグミの仲間ではなくてムクドリモドキという日本には居ない種類の鳥に分類されています。 ムクドリモドキの仲間で、一番良く知られているのはメジャーリーグ野球チームの名になっているBaltimore oriole で、良い声で囀り姿も良いので皆に愛されている鳥です。 おまけに、最初からBaltimoreという都市の名がついているのですからBaltimore市のチームがこの名前を使うのは当然過ぎることでしょう。 Blackbirdに戻ると Rusty blackbird、Brewer’s blackbird、Red-winged blackbird、Yellow-headed blackbird の4種です。 この内、本当に全身黒いのは Rusty blackbird の雄と Brewer’s blackbird の雄ですが、黒と言っても墨色ではなく、Rusty の方は青又は緑の、Brewer’s の方は青紫の、蛍光色掛かった黒です。 雌はいずれも灰茶がかった薄い色で黒くありません。 Red-winged blackbird の雄は黒いのですが、名の通り翼の肩に鮮やかな赤い部分があり、その赤い羽根の下側にある白に近いクリーム色の羽根の一部が赤色の下側から幅広に見えます。 カナダでは、沼地の葦等に留まっている姿をよく見掛けました。 葦原の一面、枯草色の中にこの鳥が居ると色のコントラストが実にあざやかで、遠くから見てもすぐにそれと分かります。 雌はほぼ全身茶色の目立たない色をしています。 Yellow-headed blackbird も Red-winged blackbird 同様に沼地に住み、雄は黒い体をしていますが、これまた名の通りに頭と胸が黄色です。 翼の肩に白い部分があり、飛ぶとこの白が黄色部分と共に目立ちます。 雌は灰茶色で胸と頭が雄同様に黄色ですが、茶がかった色ですのであまり目立ちません。 アメリカのBlackbird 達の囀り声はヨーロッパの Blackbird とは比較になりません。

北米のツグミの仲間では、日本のアカハラによく似た American robin が庭の芝生に良く来て人目につく鳥です。 秋~冬に日本に居るツグミとは逆に、早春から庭を頻繁に訪れるようになる「春告げ鳥」です。 又、春以降の繁殖期に庭に来ることから、日本でのツグミのように無口で黙っていることはありません。 ”cheerily, cheer up, cheer up, cheerily, cheer up” と聞こえる美しい声で啼きます。 そういう点で American robin は日本のツグミとは違って、特に人に愛され親しまれている鳥なのです。 ところで、北米では American robin を指すのに、わざわざ ”American”という修飾語を付けて呼ぶのは鳥学者くらいのものでしょう。 ただ、Robin です。 勿論、男女を問わず人の名前に Robin があるのもその人気にあやかるところと言えます。 Robin は周知の通り、日本ではコマドリと翻訳されます。 ヨーロッパの森にいる Robin は確かに日本のコマドリに近い鳥ですが、American robin はその胸が赤茶色という事以外は Robin やコマドリとは全然違う鳥です。 だから、ヨーロッパの Robin と区別するため ”American” robin と呼ぶのです。

我が国では昔はツグミと言えば食べる鳥だったそうです。 カスミ網でシベリアから渡ってきたところを一網打尽に捕獲したのだそうで、木曽辺りでは、この猟は季節行事で人々に楽しみの場を提供するものでありました。 例えば、泉 鏡花の「眉かくしの霊」にはこの小説の舞台、木曽谷の奈良井の宿で主人公がツグミを食べる場面があって、この怪異譚の伏線になっています。 鏡花はこの小説でそのカスミ網猟の様子にも一寸触れています。

このブログの最初の記事、1.ヒバリで触れたSCAP のスタッフだった Oliver L. Austinは当時、長野・岐阜に行ってこのツグミ猟の実態を調査し、その残酷さを目の当たりにして強く遺憾の意を表し「絶対にやめるべきだ」と主張したそうです。 彼の要求により、狩猟法は改正されカスミ網猟は1947年に禁止になりました。 しかし、これは全くのザル法で岐阜県各地ではツグミ猟を伝統行事として哀惜し、密猟して食することが1970年に告発されるまでの長い期間に渡って盛大に残っていたと言います。(日本野鳥の会の調査と告発)
又、Austin はこのカスミ網を日本で初めて見て、トリモチのように鳥を痛めることが少ない捕獲用具として米国に持ち帰り、科学調査目的での鳥の捕獲に米国でもこれを使うことを広めたとのことです。

シジューカラ


シジュウカラは昔と比べて都市部で数が増えているように思えます。 この鳥は元々標高の低い山林から人里近傍の林や公園まで幅広く分布している鳥ですが、最近は人里への進出が著しく、ここ横浜市北部でも木が少しでもある所ならばそれこそ、しじゅう見られる鳥になっています。 ドンドン減りつつあるスズメと比べても、間違いなく多数派です。
去年、環境省と民間研究機関、NPO等の共同で日本で観察される各種鳥類の棲息数を調査した結果によれば、1990年代に行った前回の調査と比べて、スズメの全国棲息数は減少率にして30%近くで減ってしまった、とのことです。 一方、この調査の結果ではシジューカラのそれはやはり増加しているそうです。
スズメの減少原因は、記事11.ツバメでも触れましたが、農村部ではネオニコチノイドの様な殺虫剤の影響が大きく、(食物となる虫の減少の他、直接の鳥への害毒も疑われる。)都市部においては、彼等が営巣出来る隙間を豊富に持つ昔の木造家屋が激減し、隙間を全く持たない新建材-新設計の家屋ばかりとなったために営巣場所が不足していることが指摘されています。
本州にいるシジュウカラの仲間にはヤマガラ、ヒガラ、コガラ が挙げられますが、北海道にはハシブトガラというコガラそっくりの奴もいます。 いずれも、とても愛らしい小鳥たちです。 シジュウカラの声はその体の小ささに比して大きく、良く通る声で「ツツピー・ツツピー・ツツピー」と朗らかに啼いているのをしばしば見かけます。 でも、他にも20種類位は鳴き方のヴァリエーションがあると言われています。 本当におしゃべりな鳥です。 北米にもこの仲間は比較的多く、中でもBlack-capped Chickadee は好奇心が強くどこの庭にも来て人に大胆に近づき、人の手から餌をもらうことも珍しくありません。 それで人々に特に愛されており、子供たちも大好きな小鳥です。 "Chickadee" は幼児用雑誌や幼稚園の名前にも多く使われていて、子供たちへの高い人気度が分かります。 この鳥はカナダでは、ニューブランズウィック州の州鳥ですし、ヴァンクーヴァー市の市鳥であり、米国では、マサチューセッツ州とメイン州の州鳥でもあります。 Chickadee の名はその啼き声から来ていて “chick-a-dee-dee-dee” と啼くからと言われていますが、その声はシジューカラ同様にヴァリエーションが多く、このパターンだけではありません。


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