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お茶好きの隠居のカーヴィング作品とエッセイ-昔ばなし

7.  コノハズク


Eastern Screech Owl

青木ヶ原


漆黒の樹海を前に我想う
漆黒の樹海に入りて命絶つ人
その悲しみを、我想う

か黒き富士を仰ぎ見れば
漆黒の樹海から呼ぶコノハズク
物の怪の如、我をいざなう

漆黒の樹海を去りて我行けど
我に戻れと呼ぶ仏法僧
帰らんか、戻らんか

漆黒の樹海を過ぎて我行けど
黒々と富士の高嶺は我を圧せり
魔の山の如、我を圧せり

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みずうみに映りゆらめく月見れば
かすかに聞こゆ仏法僧鳴く

Screech Owl


A grove of our town,
My house, two blocks down,
There, a pair of screech owls reside.
I hear their serenade in my nightgown.

My little neighbors are timid and hide
In their grove, as the safest place they confide.
"Here am I, your special neighbor! Come to me, come to me!"
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My invitation was, however, wholly denied.
 
Putting up a bird house for them, or for me,
I encouraged them to move to my territory.
And one day I triumphed in my success.
"Yay! You’ve nestled down in it on my cedar tree."
 
"I’ll see your baby owls within a month, I guess."
Their nesting maintained a steady progress.
I imagined two baby owls in the nest, I confess.
And then, "Yay!" again I triumphed in my success.

コノハズクは「声のブッポウソウ」として良く知られています。 夜、夏の山の中で「ブッポウソウ(仏・法・僧)」と啼く鳥は、所謂「姿のブッポウソウ」として知られる青緑色の体と赤い嘴を持つ小さめの鳩位の大きさの鳥と信じられていたのが、実はそうではなく、コノハズクの声であることが証明されたのは昭和10年の事です。 その1~2年前にラジオ中継でその声が放送されていて、或る人が飼っていたコノハズクが、偶々それを聞いて、伴啼きをした事で分かったそうです。 当時はテレビも無かったし、娯楽も少なかった時代でしたので、色々な鳥の声のラジオ放送に人気があって、その後も昭和32~3年頃までは盛んに放送されていたと思います。 因縁の「声のブッポウソウ」の放送は何度も繰り返されていたので、私も小学生の頃に何度か聞いた記憶があります。
私は実際に野生のコノハズクを見たことは有りません。 最初に見たのは剥製標本で、「こんな小さいミミズクなんだ」と、その声の朗々とした響きに対してその体の小ささに妙に感激した覚えがあります。 大体、日本で普通の都市生活をしている人が野生のフクロウやミミズクの類にお目に掛かるチャンスは先ずありません。 ところが、トロントでは我が家の庭に生えていた木の中で一番大きいヒマラヤ杉のテッペンに、まだ明るいうちに巨大なミミズクがとまっているのを観察したことがあります。 こいつはGreat Horned Owl 、日本名をアメリカ・ワシミミズクと言う種類です。 とにかく、ドデカいミミズクで、北海道の深山幽谷に住む絶滅危惧種のシマフクロウとほぼ同等の大きさの奴です。 が、北米では絶滅危惧種でもなんでもなく、幾らでも居るそうです。 普通は深い森に住んでいますが、時にはこのように、街中にまで飛んできます。 コノハズクを相似形で3~4倍くらいに引き延ばすと、正にこいつになる感じですが、野生のフクロウ/ミミズクを見た私の唯一の経験がこれです。
私の作品のEastern Screech Owl(Western Screech Owl も居ます。)は北米にいるコノハズクの仲間で、日本のコノハズクに一番近い種類かもしれません。 トロント市とその郊外では人の居住地近辺の小さい森や公園にこの鳥が沢山住んでいる筈です。 Great Horned Owl は、前述したように、より深い森林に住むことが多いのですが、この北米最小のミミズクの捕食者ですので、彼らにとっては人間の居住地域に住んだ方が安全だからです。 ところで、私はトロントに10年間住んでいましたが、残念なことに、野生のこの可愛いミミズクに一度もお目にかかったことがないのです。 一つには、この鳥が擬態の名人で昼間、木の枝、あるいは、住処である木の洞の入り口に座って居ても、羽の模様と姿勢を使ってほとんど木の一部としか見えなくなってしまうので、近くに居ても見つけることが極めて困難だからかも知れません。 正に、森の「忍者」なのです。 この日本のコノハズクの親戚の鳥の声は「仏・法・僧」とは似ても似つかないもので、いくつかパターンがあるものの、主に「ホー・ホ・ホ・ホ・ホ」という風な、最初のホーを長くストレスをつけて、後に行くと短音で下降する震え声で啼きます。 但し、声の質はコノハズクのそれと同様に金属質で比較的周波数の高いものです。 下記URLから聞けます。
https://www.youtube.com/watch?v=EqWWWfB9Ee4 
https://abcbirds.org/bird/eastern-screech-owl/  
       
昔話-2で触れた House Finch も体色のヴァリエーションが大きいですが、Eastern Screech Owl の体色も赤茶色系のものと灰色系のものが居て、本当に同一種かと思うほど色が違います。 要は犬や猫の毛色に様々なものがあるのと同じでしょう。 猫といえば、ミミズクは耳に見える羽があるし、嘴はどちらかというと小さめなのでその顔は猫の顔を思わせます。 Eastern Screech Owl が眠そうな半分閉じた目で巣箱から顔だけ出している様子の写真を見ましたが、全く子猫のようで本当に可愛いものです。


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