静止した世界

止まった。動かない。
そんなふうになった世界。
僕たちはもう食事をする事も眠る事も排泄する事もない。だって動かないから。承太郎なら動けるかもしれないしDIOなら動けるかもしれないし時間を超越した類の仮面ライダーなら動けるかもしれない。でも止まったからそんな妄想さえ進まない。なら何故僕は考えているのだろう?それは僕が外的な存在になったからだ。とりあえず世界は止まったままだ。風も雲も動かないし炎も灯らない。海も固まったままだ。土に変化もないから植物だって育たないし止まったのが真夜中だったから光が少ない。でも蛍光灯は光ったままだ。そんな世界を歩いていると猫が集団で止まっている広い公園を見つけた。ひいふうみいよお………、うん、とりあえずたくさんいる。彼らもこの先も動かないだろう。腹が減ったのでコンビニへ行って物色を始める。でも止まったままだから液体系のものは飲み込めない。だって流れてこないから。パンだって食べられない。だって噛んても形が変わらないから。餓死しそうになりながら僕は飴を見つけた。止まった世界だけど僕は動けるままなのでもしかしたら飴の入った袋くらいなら破れるかもしれない。そう思ったのですぐ実際に移した。出来たので飴を舐める。勿論いくら舐めても溶けてはいかない。カロリー摂取にはなっているのだろうか?どちらにせよこんなもので腹は膨れない。とにかくいろいろ試してみよう。もしかしたら「作動せよ」と念じればうまくいくんじゃないか?僕はそう思ったのでカップ麺を開けてポットを開けて「作動せよ、ポットの時間と機能」と念じた。しかしポットは作動などしなかった。駄目だ……、やはり僕は外的な存在というだけで超能力は所持していないようだ。なにか無いかな?食べる方法。時間が動きさえすればこんなこと考えなくて済むのに。なんとなく思いつきで僕は「再び時は動く!ザ・ワールド!!」と叫んだ。……駄目だ。動かない。ていうか何DIOのマネしてるんだよ……。眠くなってきた。寝ようかな……。寝て起きたら……世界は意外ともとに戻っているかもしれないし………。僕は寝てみる事にした。おやすみ……世界。【了】

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