市営地下鉄ブルーライン。
家庭の事情ってヤツで区間内はぜんぶタダで乗れた。

遅刻するよと起こされ、いってきますと返したものの。
なんとなくどこにも行きたくなくて。知らないところに行きたくて。
それでずっと電車に乗っている。折り返してはまた折り返して。

お金がない。
座って休むということはお金がなくてもできるけど大体何かしらの不都合がつきまとうものだ。その点ここは都合がいい。空調は効いているし、今の時間なんかは特に静かで居心地も悪くない。座り心地だってそれなりに良いと思う。強いて言うなら飴玉みたいな罪悪感が喉に引っかかっているのが気になるぐらいで。
携帯を眺めたり、寝たり、ゲームをしたり。
ここが私の居場所なのかもしれない。今この瞬間、唯一の。そんなことを考えた。そんなわけはないんだけど。

ちょっと疲れたら次の終着で降りてみたりする。
知らない駅を降りるだけでも私の小さな冒険心は満たされるのだ。あくまで小さいから駅から外に出るまでには至らないけどね。
駅中にあるパン屋さんやお花屋さんを眺める。接客をするおばさんに買い物をするおばさん。そしてお店をチラ見して過ぎ去っていくおばさん…。この駅のこの時間帯にはおばさんしかいないみたい。覚えた。
お金がないので出来ることといったらこうして歩いたり眺めたりすることだけだ。結局すぐに飽きて私はまた電車に乗り込んだ。

不思議なことに最近の私はあんまりお腹が空かない。そもそも朝ご飯を食べるという感覚が私には薄いし、お昼にはお腹が空かない。夜ご飯にカップラーメンを食べるだけという食生活だ。こんな食生活なのに痩せないどころかどんどんお腹に肉がついていく。本当に不思議な話だ。
だから今日は本当に電車に乗ったり降りたりしかしていない。
別に楽しいということはない。苦痛ではない場所に座ってただちょっとした娯楽で気を紛らわせているだけで。携帯だってゲームだってただボタンを押しているだけだ。だけど学校に行ったりどこかでしっかり遊んだりして、いわゆる生活を送るということをするよりマシだ。それちょっと息苦しいんだよ。

でもまあ、部活ぐらいには顔を出そうかな。
やりたいことがなくてせめて部活だけでも楽しさを見いだせればと思って入部したから。というかそれで学校を選んだ部分も大きいし。
それまでもう少し現実逃避をしていよう。

いつまでこんな日常を過ごすのだろうか。