ミモザの花が咲くまで


 美少年だと思っていた、私のミモザは実は美少女で、陽気に花をつけた後、これまた豪快に鋼色の莢を沢山つけた。
私は籠に山盛りの種を, 友人各位に郵送、あるいは配って歩いた。
訪ねてきた人には小袋に分けて、さしあげた。散歩のおり、人気のない場所にたつと、祈りを込めて、風に飛ばした。六年も前のこと。
 母親のミモザが風に託したものだろうか?空き地を隔てたとなりの別荘の庭に小さなミモザの木があった。
気がついたのは、去年の夏。他の雑草に混じって、どんどんと勢いよく育っていくミモザの木。そして、不思議、そこに誰かが一本の支柱を立ててくれた。
さて、冬を越せるだろうか?支柱が二本となった。
私は雪をかぶっても、元気に立っているミモザに手を振る。ミモザも元気よくしっかりとした枝を振ってくれる。
(頑張ってね。わたしはあなたのばあばよ。)そのミモザに弟が出来た。
この間の雪で折れた枝で、細身になったミモザの後ろにもう一本、新しいミモザが支柱付きで現れた。そして一か月ほど前には、二本のミモザの前になんと小さな風車が三本取り付けられた。「???」
ミモザの前を通り過ぎる度に、挨拶の手を振る私は考え込んでいる。
(年恰好といい、タイミングといい、あのミモザは家から、飛んでいったもののはず。それに気が付いたあの庭の持ち主が、面倒をしっかりと見てくれているのだろうか?)
里子を持った母親のような、いえ、外孫を気に掛ける祖母のような、なんだか面はゆい気持ちでいる。

石斧を抱きて隠れる縄文の女なりしか詩歌は作らず
素描終へたる風の行方冬かくのごとく輝きて無言
風折れや雪折れの樹間ぬきて飛ぶ鳥その曲線を楽しむ如く

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