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My Weekend Reading List (11.15.2020)

1. 「わかりやすい情報提供」の実践

アリゾナ州における、知的障害者・発達障害者支援の課題を追った調査報道記事。支援者だけでなく、障害者本人たちにとっても読みやすいよう、必要に応じて“Plain Language(わかりやすい、平易な言葉)”に記事を切り替えられる仕様になっている。Arizona Daily StarとProPublicaが共同で制作したそう。

最近はTwitterでも、主に日本語を第一言語としない人向けに、「やさしい日本語」での情報発信や、その重要性を訴える発信に出会う機会が増えたように感じる。そうした発信と同様、情報伝達やコミュニケーションにおいて困難をもつ人向けの「Plain Language」も重要だ。いずれも実践が広がっていくと良いと思う。

(知的障害者向け「わかりやすい」情報提供と 外国人向け「やさしい日本語」の相違を分析した論文が大変興味深かった)
https://jstage.jst.go.jp/article/jajls/20/1/20_29/_pdf/-char/ja

2. 「NYT Cooking」の成長と試行錯誤

NewYorkTimesのCookingセクションは、パンデミック下で一部レシピのペイウォールを取り払い、大いに会員数を伸ばした。現在ニュースレターの購読が400万人、昨年に比べて月次のユニークユーザー66%増。NewYorkTimesのデジタル購読者の収益増に大いに貢献している。そんなCookingセクションの現状と課題を、関係者へのインタビューから解説したDigidayの記事。

記事では、同セクションのダイバーシティやインクルージョンへの眼差しや取り組みにも言及している。今年6月にはファウンディングエディターのSam Sifton氏が、ダイバーシティやインクルージョンについてのスタンスを示す書簡を公開。スタッフや寄稿者が多様なアメリカを反映していなければ、「そこでシェアされるレシピは、私たちが届けたい人たち、私たちが届けたいストーリーを、真に体現したものにはならない」と述べた。実際にその後、有色人種の女性ビデオジャーナリスト、シニアエディターが加わっている。

(以前執筆したnote、BLM運動を受けてNewYorkTimesの動きにも言及している)

3. 陰謀論とメンタルヘルス

政治心理学者のAleksandra Cichocka氏によると、人のイデオロギーや信念は、政治家やメディアからのトップダウン、個人の心理学メカニズムといったボトムアップ、両方の要因によって構築されると考えられているという。近年は、こうしたモデルを陰謀論にも適用し、データや実験を分析する研究が進んでいる。

Cichocka氏と共同研究者は、心理的特質や心理的動機が人のイデオロギーや信念にどのように影響を与えているかを研究を経て、3つの心理的ニーズが根底にあるのではと指摘する。それは「世界を理解したいニーズ」「安全を感じたいニーズ」「自分自身、あるいは自分の社会的集団に居場所を感じ、良い気持ちになりたいニーズ」だ。

また、自分を欠点への指摘から守ろうとする感情の強い人、自分が政治に対して与えられる影響が少ないと感じている人ほど、陰謀論の影響を受けやすいという傾向も見られたとのこと。それらの要因を考慮した場合、インフォデミックからの回復や陰謀論の広がりを抑制するためには、ファクトチェックや「誤情報や偽情報」への注意啓発に加え、人々のメンタルヘルスにおけるニーズに答えるような取り組みも効果的ではないかと示唆している。

4. 社会システムと“鏡に映る自分”

個人が行動を変えることの意義を綴ったルドガーブレクマンの記事。

彼は、数年前にアムステルダムのプログレッシブな思想家や作家の集うパーティーに参加した際、ヴィーガンメニューを頼む人は一切いなかったことに驚いたという。「なぜこれだけ知識があり、高尚な理想を持つ人が、まだ肉を食べ続けているのだろう」と。

社会のシステムや構造の問題を自己責任として目を背けるのが“right-wing indulgence”ならば、パーティーの出席者たちのように、社会のシステムや構造の問題について考えながらも、自身の個人としての責任から目を背けるのが“left-wing indulgence”と言えるのではないかと彼はいう。

記事の中盤以降は、過去の研究や事例から「個人の行動が周囲の人に及ぼす影響」を指摘し、個人が行動を変えることの意義を強調している。(例えば、とある米国の研究では、太陽光、風力、地熱等、グリーンエネルギーの利用は、アルコールの摂取や喫煙よりも、周囲に広がりやすかったという)

大局的な視点で社会の構造やシステムを捉えることと同じくらい、鏡に映る自分を変えていくことも、社会を変えていく上で意義深いことであると述べる。(と同時に、誰もが完璧に理想通りの実践ができるわけでもないし、持っている富や知識、権力によって、どのくらい貢献できるか、犠牲を払えるかは異なるとも言っている)最後に引用されているマンデラの言葉も良い。

最も難しいことは社会を変えることではなく、自分自身を変えることだ

ではまた来週


最後まで読んでいただきありがとうござました!