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元GoogleのコメディアンSarah Cooperが、「ミーティングで賢く見せる方法」を書いた理由

昨年日本のネットでも話題になった『ミーティングで賢く見せる方法』を覚えているだろうか?ベン図を描く、パーセンテージを分数で言い直す、スケールするかどうかを聞くなど、日本にも通じるあるあるに共感の声が集まっていた。

その作者であるSarah Cooper氏がRecodeのポッドキャストに出演していた。日本ではあまり知られていないが彼女はYahooやGoogleといった名だたる企業でデザイナーとして活躍していた人物。『ミーティングで賢く見せる方法』が大きな話題になった後、コメディアンにキャリアチェンジ、現在も執筆活動を続けている。

さぞかし個性あふれる人間なのだろうと思うが、彼女はMediumのインタビューのなかで、I was a consensus builder(私は常に意見のまとめ役だった)と述べている。会社員時代は自分の意見を発することはなく、他人の意見に耳を傾けてばかりだったそうだ。

他人の想いを汲み取ろうとすること、そして意見をまとめて着地させられることは間違いなく彼女の長所だった。実際に社内の有力者に気に入られて、着々と昇進を遂げていったという。その能力の高さは輝かしいキャリアからも明らかだ。

しかし彼女は「ただ他人が聞きたいことを口にしているだけのように感じた」と当時を振り返っている。本当の自分は他人が奇妙な振る舞いをしているのを観察していただけなのだ、と。

その観察が仕事への集中を妨げることも多々あった。ミーティングなどでも、話されている内容自体は頭に入らず、代わりに会議室全体を俯瞰して見つめる自分がいたという。

前述の『ミーティングで賢く見せる方法』の一つである「ベン図を描く」が思いついたのも、Yahooの会議中のことだった。プロダクトマネージャーがホワイトボードに近づきベン図を描く、そのベン図の中身自体よりもみんながベン図の円の大きさなどについて真面目に議論をし始める。全く意味をなさないベン図でも書いた途端にみんながベン図について議論を始める様が気になって仕方なかったという。

コメディアンはみんな隠れたレベルから物事を見つめている」とSarahは語る。それゆえに目の前のことに集中できないことがあるのだ、と。

これを聞いてふと脳裏をよぎったのが、漫画家の蛭子能収さんのことだ。彼は「葬式でみんなが悲しんでいるのがどうしてもおかしくて笑ってしまうから出席しない」と明言している。それゆえ「蛭子さんはサイコパスだ」と言われるわけだが、葬式を引いた視点から見つめて面白さを感じ取れることは彼の個性でもあるだろうなと思う。

笑いを提供できる人はSarahのように、みんながスルーしている物事を独自の着眼点で切り取ることに長けている人が多いと思う。「カーテンに巻きついて遊んでいる奴なんでだろう?」もそうだし「悲しいとき、自分だけ傘をさしていたとき」もそうだ。そしてきっとその才能は逃れがたく常に彼らと他者との間に居心地の悪いズレを生じさせるものなのだろう。

該当のポッドキャストはこちらから聞けます。



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