転換プロセスとしてのDX

DXを組織の変革のモデルであるダイナミックケイパビリティ概念から読み解いてみたい。本概念を組み合わせると、DXは何かある特別な能力で示されるのではなく、複数の能力がつながった「一連のプロセス」であるという見方ができる。

ダイナミックケイパビリティのエッセンスを説明すると、変化を「察知(sensing)」し、機会に「反応/取り込み(seizing)」、ビジネスモデルやビジネスシステムを「再構築(reconfiguring)」する3つの能力からなると言われている(Teece, 2007)。この能力は、前回示した、Vial (2019)のDXのビルディングブロックとも関係が深い。

Vial (2019)のビルディングブロックは、DXを顧客に対する価値創造の転換として表現されている。また、最終的なアウトカム(ポジティブな影響)に至るためのブロック間の関係も示されている。
ここでブロック間のくくりにダイナミックケイパビリティ概念を援用すると、転換を進めるためには、企業は、技術と市場の変化を「察知」し、戦略として「反応」し、価値創造の方法を「再構築」していくであると分類することができる。

無題

以上から、DXの成功のためには、ある取り組み(能力)が重要ということではなく、複数の取り組み(能力)が結合されたものと捉えたほうがいいだろう。DXにダイナミックケイパビリティ概念を組み込むことで、「顧客に新しい価値を提供するための、察知→反応→再構築という一連の転換のプロセスである」と定義することができる。ある能力に偏った議論に物足りなさを覚えることがあるが、転換プロセスの議論が欠けているのが理由かと考える。

参考文献
Teece, D. J. (2007). Explicating dynamic capabilities: the nature and microfoundations of (sustainable) enterprise performance. Strategic management journal, 28(13), 1319-1350.
Vial, G. (2019). Understanding digital transformation: A review and a research agenda. The journal of strategic information systems, 28(2), 118-144.

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