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夜街劇場サイド

夜の街は今日も冷える。
足早に家路に帰るものがいれば、ここには色んな人々が往来する。
甘い蜜を吸うために夜街の花屋(接客を伴う店)へ向かうもの、花を鑑賞するもの(ストリップ劇場)、それを支える仕事人たちの歩みだ。
今日もその歩みは絶えることなく、その歩みを導くように劇場の灯りはこうこうと照っている。
人肌よりも明らかに熱い電飾は、熱に浮かされたように人の隙間を熱らせる。
「一人でも大丈夫、さ、お姉さんもどうぞ。」
劇場を切り盛りする女支配人が声が響き、はいと小さく頷き緊張した面持ちの若い女性が劇場へと入っていく。
それに続くように、仕事終わりの老若男女も吸い込まれていく。
「誰を観に?」
「五十鈴さんです」
劇場の女支配人は正の字を書き連ねる。
看板女優の名前の下にはもう五つの正の字が並んでいる。

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