もふもふ

私の持ってないものを持っている
君を憎む心を持っている
人間であることを呪ったあの日も
肉をも断つ牙を持っている
されど表現の面で劣っている
動物であることを嘲笑ったあの日も
思い返してみたら
別になんてことはないんだ

君はいつでももふもふでした
大きくなってももふもふでした
小さい君とか全然覚えてないけど
記憶はいつでももふもふでした
口づける時ももふもふでした
ムカつく時でももふもふで
口に毛が入る

君は別に私の子じゃなかったから
そのもふもふでさえ
可愛いかれど憎かったよ
抑圧という言葉で私たちは真っ二つに割れた
なけなしの権力に依存した醜い制裁しかできなかった
でも、私、本当に、君とは分かり合えそうになかったの
君の毛皮は鎧だ
牙はたやすく皮膚を穿つのに
どんな酷い言葉も君に届かない
残された手段としての本質的な敗北は
君のでもあり同時に私のでもあった

本当は
こんなこと言う資格もないんだ
君が本当にもふもふだったのか
私は知らない
向いてないこと教えてもらった
苦しみなんて知りたくなかった
それで良かったと思ってしまった
私は君に甘えてたんだ
君はいつでももふもふなんだって

君はいつでももふもふでした
冷たくなってももふもふでした
濡れたとこだってもふもふでした
土を被ってももふもふで
水は毛を通る

そんなの信じてないけどさ
もし今度君がもふもふじゃなかったら
私のこと強欲だってちゃんと非難してくれ
それとも私がもふもふなら
今度こそ君の毛を抜いてやるから
噛みつきあって兄弟になろう

こうやって君を想うフリをして
己の平穏を祈っている
人間であることを


聞いてくれてありがとうございます。