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栄光なき冒険家

 2、3日前、福岡でビルの7階から落ちて重症を負った40男のニュースを見た。隣のマンションの住人が助けを求める声を聞いてベランダから下を覗くと、両腕から血を流した男が倒れている。「どうしましたか?」と訊いても「わからない」と答え、「救急車を呼んでください」と言う。上には屋上から迫り出した梯子があり、そこから2本のロープが垂れている。幸い救急隊員が到着して搬送され、命は助かった。どうやら向かいの7階建のビルの屋上から自分でハシゴを伸ばし、ハシゴに結んだ2本のロープを掴んでするすると目当ての高さまでぶら下がり、風呂を覗こうとしたものの、自重を支え切れずに落下して重症を負ったということらしい。命綱はなし。

 ぼくは唖然としてしまった。なんてアホなのだ。ハシゴやロープなど準備していたはずだから目をつけていた女性が狙った階に住んでいて、バスルームの位置も特定されていたのだろうか。せめてそう思いたい。それならまだしもその無謀な作戦にかける情熱?を理解できなくもない。ただ、いかに覗きの興奮に胸躍らせていたにしても自分の体重を両手だけで支えられる人がどれだけいるだろうか?そんなことも想像できないのだろうか。そして、つかの間でも目当ての覗きは成功したのだろうか。

 覗けるということは向こうからも見えるということなので、なんかリスキーすぎる割に全く成功しない気がしてしまうのはぼくだけだろうか? 自分の体だけで岸壁を登っていくフリーソロクライミング並みに無謀である。 覗きで、捕まる人は多い。盗撮も多い。最近ではユーチューバーがスマホで撮影しながら正義の味方よろしく捕まえて警察に突き出したりしている。そこまでして女性のスカート内のパンツを見て何が面白いのだろうか? 具が見えるわけでもなく、そこにはただ布があるだけなのだ。何がいいのか全くわからない。覗き愛好者ってものすごい数がいると思うんだけど、あれは何か射幸性を煽られるような感じなのだろうか? 捕まるかもしれないというリスクにヒリつきながら、周りの人や鉄道警察隊の目をかいくぐり、見事パンツを画像や動画に収められたら、それをオカズにするのだろうか。

覗きの動画界隈でレジェンドと呼ばれる有名人はその動画を有料公開した収入だけで2、3億の収入があったというからかなり大きなマーケットがあり、愛好者がいるということなのだろう。覗きの愛好者はこの収入のためというより、やっぱり自分がパンツを見たくてやってる。いや、覗きを成功させるまでの過程にハマっているのだろう。学校の先生とかも結果ではなく、過程が大事だとよく言ってるし。

あれはやっぱりスカートとかパンツで局部を隠しているから、隠されているものを見たいというタブーを犯すようなのが快感なのだと想像する。みんなノーパンになったら覗きは減るのかもしれない。社会実験として、足立区では向こう半年の間パンツは使用禁止とかにすれば覗きが激減する様が可視化されるかもしれない。もっと下着というものが公衆の目に晒されれば、それが当たり前になれば下着に対するファンタジーが薄れて覗きの魅力とやらも半減するような気がする。もしくはオッパブやピンサロなどの性風俗で働く女子の中にはお金次第では覗かれてもいいぐらいの人だっているのではないか。だから覗き専用車両を作って覗かれてお金を稼ぎたい人と覗きたい人を集め、そこで需要と供給をマッチさせれば一般の被害者も減り、鉄道各社も収益が伸び、逮捕者も減り、みな丸く収まるように思う。グリーン券のように追加で料金を払い、覗かれる側はその車両に乗ったらスマホアプリに記録が残るようにして電子マネーでいくらか振り込まれる。

でもこれだとロマンがないだけ興奮しないのかもしれない。やはり冒険家がより困難な目標をクリアしようと燃えるように、捕まれば仕事をクビになり、家庭が崩壊し、離婚され、評判が地に落ち、逮捕されるという社会的な死を経験するというところがスパイスになっているのかもしれない。だけど、冒険家はその成功を称えられるのに、なぜ覗きだとダメなのか、、、犯罪だからだね。もう寝よう。

追記:窃視症というのがあるらしいね。全く覗かれることを想定していない人の裸や性行為や下着姿を見ると、異常に興奮するというやつ。これがけっこういそう。

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