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ODA支援の内訳を解説

 アフリカに対して、岸田首相が4兆円の支援を宣言しました。
 ネットニュースのコメント欄やツイッターでは「海外支援を増やす余裕があるのか」「生活苦・経済不振が続く日本に投資してほしい」という怒りと苦しみの声が散見されます。

円借款が大半で、税金からは使われない?

 海外への支援金は「円借款が大半で、税金からは使われない」と主張する評論家もいます。

 チャンネル登録数68万人の高橋洋一氏が動画で解説しているので、抜粋します。
(氏は似非保守(私認定)のスカスカ評論家です。動画はソースリンクとして張っていますが、見る価値はありません)

 4兆円と言うのが税金だという人もいるんだけど違うよ。
 ほとんど貸付です
(国債を発行して貸付けを行い、貸付金の回収で償還をすると解説)
 税金は基本的に使わない
 4兆円もそんなに使うのはけしからんて、すぐ出てくるんだけど、それは多分そうじゃない
 政府が(官民4兆円の)まるまる4兆円出すにしても数百億もいかない1%もいかない、1%くらいかな、そんなくらい税金はねすごく少ない

 ようこんなペラペラと適当な嘘ばかり並べられるものですね。
 外務省等の資料を確認していきましょう。

 外務省:ODA予算のページから
 参考資料(令和4年度ODA事業予算(当初予算)概要とその財源・形態別・省庁別)がダウンロードできます。

 確かに円借款が1兆4,268億円を占めていますが、二国間贈与が4,777億円国際機関への出資・拠出が3,846億円もあります。

 また、資料の2ページ目で、大項目として「贈与」に二国間贈与と国際機関への出資・拠出の両方が分類され、合計8,627億円で計上されています。
 贈与ということは円借款と違って、返済はありません。

 高橋洋一氏が言うようにほとんど貸付で、税金は基本的に使わない、数百億もいかない、1%くらい。本当にそうでしょうか。何もかもが、その場で思いついた適当な出まかせではないでしょうか。

4兆円を分析

 アフリカへの4兆1,300億円ですが、3年間での支援額です。なので1年あたりに直すと、1兆3,767億円です。

 また、これまでアフリカに支援してきた額に上乗せする額なのか合わせてその額にするのかは明言されていません。

 これまでのアフリカへの支援額を分析してみましょう。
 ODA支出の内、アフリカの比率は2020年で11.4%でした。
 2020年のODA予算は円借款と贈与を合わせて、2兆2,700億円ですので。
 アフリカの分は11.4%なので2,589億円です。近年は2,000~3,000億円ほどのようです。

 この2,589億円と合わせて1兆3,767億円にするとしても、1兆1,178億円の追加となり、支援額が急増することが分かります。

外務省2021年版開発協力白書 PDF31ページより

贈与と貸付の推移

 年度によっては贈与(グラフ赤色)が貸付(グラフ青色)を上回っていた期間もあります。
 今回のアフリカへの追加支援で、例えば2013年のように、貸付だけでなく贈与も大幅増となる可能性は充分あると思います。

参議院:調査室作成資料第191号・我が国のODAの姿 PDF10ページより

外貨準備高を使用している?

 ネット上ではまことしやかに、海外への支援金は
・外貨準備高を使用している。
・外貨準備高はドル建てで国内で使えない(けど海外では使える)
・外貨準備高は、税金ではない。
 などと言う説が流れていますが、公式情報のソースリンクを記載する人は皆無です。

 実はお金の流れを調べるのは、すごく苦手です。
 なんとか理解した内容をなるべくかみ砕いて説明してみます。

 外貨準備高ってなんじゃらほいって言うと、外国為替資金”特別会計”(これだけ覚えて下さい)のことです。
(日本銀行が保有する外貨準備資産もありますが、話がややこしくなるので省略します)

 そもそも為替の安定為替介入するためのお金で、これ自体をODAに使えはしません。

 ”特別会計”と書いてありますよね。 
 そう、行政の予算は一般会計と特別会計に分かれているのです。
 一般会計は、文字通り国の一般的な活動(福祉・防災・民生など)に使用され、基本的に税金から賄われています。

 特別会計は文字通り特別な目的のために拠出される予算でその目的以外に使うことはできません
 その目的は法律を確認すると、しつこいくらいに外国為替の売買に運用する、と書いてあります

特別会計に関する法律より

 そんな外貨準備高ですが、令和4年8月末において、1兆2921億ドルもあります。
 
ちょうど最近、1ドル144円台の円安が騒がれていますね。円に換算すると186兆円です。
 桁多すぎ

 為替の安定・為替介入のためだけの特別会計として、そんなに大金が必要なのでしょうか。

 また、80年代~90年代初頭まで1,000億ドル以下で推移していましたが、90年代後半から爆増しています。

 そもそも論として「80年代~90年代初頭と同じく、1,000億ドル程度で十分なんじゃないか」という思いが強くあります。
 買わされたんかなあ、米国債……。

日本の外貨準備、1兆ドル超え より

 そんな特別会計ですが、条件がそろえば一般会計へ繰り入れることが出来ます。

 爆増した外国為替資金特別会計ですが、さすがに近年は横ばいが続いています。そうなると運用収入が上がってきます。

 令和2年度決算では、もろもろの支出2,339億円に対して、歳入が3兆1,327億円で、余剰金が2兆8,988億円あります。
 そのうち1,540億円が翌年の歳入に繰り越し、8,234億円がさらなる外国為替資金に積み立てられ、1兆9,213億円が一般会計へ繰り入れされます。

財務省令和3年版特別会計ガイドブック PDF68ページより

 ただし一般会計なので、海外ODAに限らず、毎年赤字の一般会計に補填していると思われます。

ドル建てだから国内では使えない?

 仮に外貨準備高が自由に使えるとしても「ドル建てだから国内では使えない」という論調は謎に思います。

 私は基本、円しか持っていません。アメリカの製品をドルで買うとき、円をドルに換えてから購入します。
 最初からドルがたくさんあるなら、アメリカの製品をたくさん購入できると思うのです。

 186兆円のドル建ての資金があります。自由に使えるのなら、アメリカから大型輸送船でも、大型機械でも、精密機械でも、石油でも、資源でも何でも買って国内に還元できるのではないでしょうか。

 それに、支援を受けるアジアやアフリカの国だって、自国通貨はドルじゃないですよね。発展途上国が、日本の企業に仕事を受注しようとしたら、円建てになるのではないでしょうか。
 ドル建ての外貨を186兆円分持っていたって、ODA何て出来ませんよね。海外にドルをばら撒いて、アメリカ企業に受注でもしてもらいますか?

政府もマスコミも財源を説明しない

 アフリカへ4兆円の支援と言うのも、財源こそが一番大事なのではないでしょうか。
 内訳として、借款がどれくらいで、贈与がどれくらいなのか。
 政府もマスコミも、そして評論家すらも、よく分かっていない。もしくは分かっていてはぐらかしています。

日本の子どもを笑顔にしてもろて

 確かに発展途上国への支援も大事かもしれません。
 ですが、貧困国だと言われる国にも、日本にはない豊かさがあったりするものです。

 ODA・お金の話とは変わりますが、お金では測れない豊かさ・貧しさもあるのではないでしょうか。
 日本の子どもたちには、いつでも、どこでも、もっと笑っていられる世界になって欲しいです。
 子どもだけでなくて、大人も心からの笑顔や爆笑は少ないですしね。


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