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スパイナル・タップ

いつもはTシャツロック音楽についてお話ししているチャンネルでしたが、このseason5はロック音楽を映画に変えてお話ししています。全6回の今回がシーズン最終回となります。映画の中で小道具として使われていたTシャツを紹介してきたのですが、もともとはロック音楽好きで集め始めたTシャツですし、私個人を中心として放射線状に広がった趣味の上での話なので、前のシーズンのおまけ回でも話したゴダールとストーンズのように映画の中で音楽が印象的だったり、ロック音楽をエピソードとした映画が好きです。
ミュージシャンの伝記映画だったり、ティーン・エイジャーの音楽活動を焼くような青春映画も大好きです。70年ロック黄金期80年代にハードロック/ヘビーメタルが隆盛し産業ロック化していく過程をご存知の方で、かつ映画好きの方はきっと私がこの映画が大好きな理由をわかってくださると思う一本の映画とTシャツを紹介したいと思います。


■コメディーに見るメタ的思考の面白さ


ロックグループ『スパイナル・タップ』はデビットセント・ハビンスとナイジェル・タフネルが幼少期に出会って親友になり、一緒にロックを聴き、育ち、バンドを結成したことに始まる。デビュー時はサイケデリック風な曲調であったが、70年代後半からはギターを前面に出したよりハードな路線に方向を変えたことでブレイクしハードロック/ヘビーメタル黄金期に活躍した。音楽の方向性の違いから一時的にナイジェルがバンドを脱退し、人気が低迷するも日本での再ブレイクなどをきっかけにナイジェルがバンドに復帰。オリジナルメンバーが揃ったツアーは好評を得て、ナイジェル復帰後の活動は順調。アルバム3枚を発表し、あのフレディー・マーキュリー追悼コンサートにも出演するなど活躍を見せたUKの伝説的バンド。
そのスパイナル・タップの1983年の北米ツアーを含む活動に長期密着したドキュメンタリー映画。『スパイナル・タップ』

とこのような映画の紹介文にがあったらどうでしょう?
そして、その大半が虚構で、ほんの一部が本当だとしたら?

ネタバレというか、映画そのものの話しをすると、スパイナル・タップはこの映画のために作られた架空のバンドで、その架空のバンドを追ったドキュメンタリーとしてフィクションとして作られた映画が『スパイナル・タップ』なんです。
映画はカルト的にヒットし、サウンドトラックがバンドのアルバムとして発売されたり、実際の演者がライブ演奏したりするというくらいウケました。
映画自体「文化的、歴史的、審美的に重要」とみなされ、アメリカ国立フィルム登録簿に登録されているということです。

人はなぜ見たことも聞いたこともないバンドのドキュメンタリーに引き込まれるほど「面白さ」を感じたのでしょうか?
そこにはドキュメンタリーイズムと言うものを客観的、俯瞰的に見たときに現れる現実の中のドラマ性の都合の良い切り抜きに対して感じる計算であったり、または感情移入があるからではないでしょうか。

人はどんな時、どんなモノに「面白い」と感じるのでしょうか?

一つに笑いがあると思います。
お笑いのコントなどが可笑しいのは自分には起きえないことが滑稽で面白いということがあると思います。
滑稽さであることへの笑いは自分とは関係ない他人事であるからです。

もう一つに共感があるかもしれません。
共感という感情も自分とは違う他者の認識から始まります。他人に起こっている事を自分の事のように感じ、認識した他者の気持ちに入っていくこと感情移入することで面白さを感じているのです。感情移入と言う事象自体他者と自我を本来的には別に見ているところから始まっているものです。そういう意味ではこのフェイク・ドキュメンタリーという表現とそれを面白いと感じる感性はハイレベルなメタ的思考を要するものなんじゃないかと思ったりします。

■PMRCと滑稽さだけが残ったロック(メタル)ミュージック


映画『スパイナル・タップ』が世に出たタイミングと同じくしてアメリカではロックの世界でちょっとした騒動が起こりました。
まったく、一部の低レベルな思考と感性しか持ち合わせない人間、そしてそういう人の層を票田と考える低レベルな政治家のためのスケープ・ゴートにロックミュージック、ハードロック/ヘビーメタルミュージックがされたと言う騒動です。
後に副大統領になる人物で当時は上院議員のアル・ゴアという人がいました。その妻ティッパー・ゴアという人がいました。その夫婦の11歳の娘がプリンスの曲『ダーリン・ニッキー』を聴いていたんですが、プリンスの曲ですから歌詞も意味深でセクシーな内容でした。ティッパー・ゴアは11歳の子供がこんな曲をら容易に聴けるのはけしからん!と怒り心頭。子供に害のある歌詞の入った曲を販売することに規制をかける委員会を設立。その検閲規制をする組織としてP.M.R.C(ペアレンタルミュージックリソースセンター)を作り、性的や暴力的な表現のあるレコードに保護者の指導が必要である旨のステッカーを貼らないと販売できないようにしたという騒動です。
詳しいところに興味のある方はぜひ検索して調べていただければわかると思いますが、全くくだらないことが堂々とまかり通ってしまったわけで、いまだに輸入盤なんかにはこの表示が付いたモノがあったりするんですね。
いくら規制をしたところで、子供の興味に蓋をすることができませんし、暴力的な表現や性的な表現がなくなる事と子供がそういったものから完全に隔離されるかと言ったら全くそんな事は関係ないこと位少しまともに考えればわかるものなのに子供がそう言った暴力的な性的な表現の曲を聴くことで実際のその行動に走るなんてことがあるワケがないんです。
大半はその表現にかっこよさや滑稽さ、時に感情移入できるといったメタ的な面白さを見出していることと同じモノで、人の高次機能のなせる行為なのに、80年代の半ばに起こった騒動による規制と産業化(肥大化)の流れによってロックやメタルミュージックは滑稽さのエッセンスを強く残して現在に至るような気がします。
それ以降、90年代にかけてロックへの衝動は内へ内へと向かざるを得なかったのはそんなこともあったのかもしれません。
今や50代60代のおじさん、おばさんが当時のメタルミュージックを懐古趣味的に演奏している姿を見るとまさにそういうことが起きているんじゃないかと思うわけです。そういう意味ではロックミュージック、ヘビーメタルミュージックと言う音楽はその重要な要素であった若さ故の衝動であるとか、反抗(レベル)みたいなものを失って、例えばヒップホップなんかにその座を譲って長いような気がします。だって学校の先生が課外活動でヘビメタ演奏してそれをPTAは平気で許している世の中ですからね。でもそれが先生がギャングスタラップで世の中をディスっていたりしたら、やっぱり問題視されるでしょ?(笑)

■ノーマンズレアギター


映画評論の専門家ではないので、この映画の魅力をうまく伝えられたか、ちょっと自分でも懐疑的なところはあるんですけれど万人に受ける映画ではない実験的なコメディー映画だと思うので、あえて考えてお話ししてみました
スパイナル・タップというのはバンドの名前であるでもあるので、検索するとマーチャンダイズも色々出てきます。ロゴ入りTシャツなんかもありますし、アンプのボリュームを11まで作った特別仕様の「ゴートゥーイレブン」のキャッチフレーズが入ったものもあったりします。
これはこの映画から派生したワードで「最大出力に」とか「通常のパワーを超えて」といった慣用句にまでなっているそうです。
こんな映画の影響力を感じさせるエピソードだったりしますね。
そのセリフを言ったナイジェル・タフネルが劇中着用していたTシャツがいかにもミュージシャンがオフの時に来ているTシャツって感じで、すごく気になりました。今回紹介するノーマンズレアギターのロゴTシャツも劇中ナイジェルが着用していたものです。
このTシャツにもなっている人、ノーマンハリスさんと言って昔からカリフォルニアでヴィンテージのギターショップを経営している人だそうです。ノーマンさんのヴィンテージギターショップは自伝の本が出版される位知る人ぞ知るお店で、有名なミュージシャンも御用達のようです。そんなこともあって、UKのミュージシャンであるナイジェルも北米ツアーの途中、ノーマンさんのギターショップを訪れ、このTシャツを購入し、着用しているのではないでしょうか。
このロゴもちょっとレトロ70年代チックな雰囲気ですが、当然昔からあるお店でこのロゴもいまだに使用されているようです。
まさに老舗と言う感じで良いですよね。この私の持っているのもノーマンさんのお店がネットで販売してるの購入したものになるので、本物です。コメント欄にリンクを貼っておきますので興味のある方はぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。

このノーマンさんのお店の事とかもう少し話したいと思ったりするのですが、映画からは少し外れてしまいますので、また何かの機会にできたらいいです。やっぱり映画の話の方がいろいろ拡散してしまうかもしれません。一旦全6回で終了ですが映画とか海外ドラマをネタにしたTシャツはまだいくつか持っていたりするので、まとまったらまたいつか映画のTシャツの回をやりたいと思います。

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