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魔王、猫になる。〜魔王さまのほのぼの世界征服ライフ〜 第21話 魔王、虚空を見つめる。

 我輩は魔王である。名はトラ吉。

 この世界の猫という種族は、時折虚空を見つめるとの事で騒がれる。

 だが実際に猫になってみればその理由もわかるというものだ。

ーーー

 今日は主人①②が何やら夜だというのに騒々しいのだ。

「ちゃーちゃん、きっと見えてるんだよ。」

「いやいや、そんな幽霊だか妖怪だかいるわけないだろ。」

 何をくだらんことを。

 どうやら、我輩が見ている先に何があるのかで言い争っているようだ。

 この世界の人間はどうにも平和ボケしておるようだな。

 我輩が支配した後にはそうはいかんぞ。

 覚悟しておくがいい。

「きっと私たちにはわからないだけで見えてるんだよー 」

「そんなわけないだろ。」

「だってちゃーちゃん、見てるだけじゃなくて目で追ってるんだよ? ほらほら!」

 おっと、ついつい目で追ってしまったわ。

「……」

 主人②よ、急に動きが固まったようだが、どうしたのだ?

 我輩が視線を動かしていることがそんなに気になるか?

「いや、ないないないない、嘘だ嘘だウソダウソダ…」

「あー、そんなこと言ってるけど、やっぱり怖いから信じないんでしょ?」

 主人①よ、お前の顔の方が悪に満ち溢れて恐怖を感じるぞ。

「じゃぁ、私は寝るからねー」

「えーちょっとまってよ! まだ仕事終わってないんだよぉ」

 主人②よ、このようなことで情けない。

 そもそも、幽霊だの妖怪だのがいるいないで騒ぐなど愚かであるぞ。

 仮にも我輩の主人であるのだから、しっかりしてほしいものだ。

「ちゃーちゃん、どうしてさっきから俺の後ろを見てるんだ?」

 我輩がどこを見ようが、主人②には関係のないことだ。

 仕方ないであろう。

 主人②の後ろに、あれがいるのだから。

「あーなんか寒気してきた。今日はもう仕事は諦めて寝よう。」

 ふん。あのようなものに憑かれただけで情けない。

 幽霊だの妖怪だのがいるかいないかで騒ぐなど愚かだと言ったであろう?

 当たり前にそれはおるのだから。

 そう、これを読んでおるおぬしの後ろにもな。


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