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世界の再構築者は3匹の猫耳少女に殺される!? 4-6 スズの思い出とルコ⑥

「きゃーー!」

 俺は女の子のような叫び声をあげて布団から飛び起きた。
 あろうことかルコは俺の短パンの裾に頭を突っ込んできたのだ。
 そんなことされたら誰だってびっくりはする。
 だが、飛び起きた本当の原因は短パンの裾に頭を突っ込まれたことではなく、俺の内股に触れたルコの感触に驚いたのだ。
 その感触は俺が想像していたものと全く異なっていた。
 ちなみに、ルコが「行き止まり」に到達する前に俺が飛び起きたので、ルコと俺の純潔は保たれている。

「う〜」

 俺は飛び起きて布団の外にいるが、目の前の布団の中からうめき声が聞こえる。
 暗くてよくわからないが、目を凝らして見ると布団の表面がもぞもぞと動いている。
 ルコは布団の中に取り残され方向がわからず右往左往しているようだ。
 だが、その布団の膨らみは明らかにルコの身長に対して小さく見える。
 俺は部屋の明かりをつけて、恐る恐る布団をめくってみた。

「「あ。」」

 俺とルコの声が重なる。
 布団をめくり、敷布団の上にポツンとそれはかがんで俺を見上げていた。
 それは、以前俺が拾った赤い目をした子猫だった。

「ルコ、なんで猫になってるんだ?」

 そう、俺の内股に触れたのは子猫の姿になったルコのもふもふの感触だったのだ。
 内股に突然そんな感触を受けたら飛び上がってしまうのも無理はない。
 そもそも普段のルコのサイズでは短パンの裾に頭が入るわけもないので、その時から子猫になっていたのだろう。
 ルコは、子猫の姿ながら恥ずかしさが伝わってくるような、下を向き目を合わせない仕草で喋り出した。

「これは、その……。この方がタカシさんも気を使わなくてすむかなと思いまして。」

 ルコは子猫の姿のまま悠長にしゃべっている。
 子猫の姿でも喋れるんだなと感心しつつも言葉を返す。

「そ、そうだな。俺も猫と一緒に寝ると考えれば気が楽かも……。」

「それならよかったですわ。」

 子猫と会話するという非現実的な体験をしているにもかかわらず、不思議と違和感は感じなかった。
 なんだか子猫の姿になってもルコを感じることができたのかもしれない。

「そ、それじゃあ寝ましょうか。」

 そう言うもルコは微動だにしない。
 俺も同じ状況なのだが。

「うふふ……。」

「あはは……。」

 お互い気を紛らわすためか愛想笑いなどしてみるがもちろん効果などなかった。
 笑った後に見つめ合ったりしたので余計に気まずさが増していく。
 ルコは子猫の顔を引きつらせて俺を見ている。
 きっと俺の顔も引きつっていることだろう。

「「……」」

 俺とルコの間に沈黙がただよう。
 ルコが子猫の姿になってくれたといってもルコである事実は変わらない。
 俺の緊張はおさまるはずもなかった。

 だが、いつまでもこうウジウジとはしていられない。
 きっとツキはルコとヘタレな俺の様子をどこかで見てさぞ楽しんでいることだろう。
 そう思うとなんだかやたらと悔しさが湧いてくる。
 ツキの期待を裏切るためにも、俺は覚悟を決める必要がありそうだ。

「そ、それじゃ寝よっか。」

 意を決して俺もその言葉を口にする。
 ルコの寝ていた耳がピンと天井へ向けて立ち上がった。

「は、はい!」

 子猫の口から裏返ったこえが発せられる。
 落ち着いて見れたならさぞ笑えただろうに。
 だが、今はそんなルコを見て楽しむ余裕はない。
 震える手で部屋の明かりを再び消した。

「じゃあ、横になるね。」

 俺はルコの後ろに回り横になった。
 ルコはまだ微動だにせず俺がいた何もいない空間に体と視線を向けている。
 猫の姿になったルコの体も緊張で耳と同様に天井へ向かってビーンと硬直している。
 そんなルコを見て微笑ましくも思ったが、俺も人のこと言えないなと苦笑してしまう。

「ひゃっ!?」

 気づいたらルコの頭に自分の手がのびていた。
 ルコの硬直した体の毛が一気に逆立つのを感じた。

「ご、ごめん。やめたほうがいいかな?」

 無意識に俺は自分を落ち着かせるために、目の前の子猫へすがるような思いで手を伸ばしてしまったのかもしれない。
 そんな気持ちで撫でてはいけないよな。
 撫でられる方も、それでは気持ちがよいわけがない。

「い、いえ。続けてください。」

 予想に反してルコは嫌そうなそぶりは見せなかった。
 ルコの毛が逆立ったのも一瞬で、すぐに元の毛並みに戻っている。

「わ、わかったよ。」

 俺は撫でる力が強くならないように注意を払いながらルコを撫で続けた。
 相変わらず向こうを向いているため表情は見えないが、その後ろ姿にはもう緊張感はただよっていなかった。
 ルコの体から徐々に力が抜けていき、最終的には体制を崩してしまう。

「ふにゃ!?」

 ルコは猫っぽいのかわからないような声を上げると、俺の腹部へと寝転がり寄りかかってきた。
 最初は自分でも驚いていたのか、まんまるの目で俺の顔を見上げていたが、更に撫でていくうちに次第にとろんとした目に変わっていき、その目は閉じられてルコは寝息を立て始めた。
 俺もそんなルコの仕草と手に伝わってくるもふもふの感触に心が落ち着いてくる。
 よこしまな考えは何処へやら、今は純粋に子猫のルコに癒されているのだ。

 俺はルコに気をやりながら布団をかぶった。
 布団の中にいるルコはもう見えないが、腹部には確かにルコのぬくもりを感じる。
 子猫と一緒に寝る事がこんなにも幸せなんだなと初めて実感した。
 それはルコだからかもしれないが。
 そして、俺の意識も次第に薄れていった。

ーーー

「あれ、なんで俺はここにいるんだ?」

 俺は忘れかけていた思い出の中に立っていた。

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