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ひねくれ北欧4か国周遊記⑱ロストバゲージしててもオーロラは綺麗


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18-1.ロスト・ロストバゲージ


2024年1月3日水曜日
フィンランド・サーリセルカ


前回のあらすじ。バゲージをロストしました。2つのスーツケースをどちらも失いました。ロスト・ロストバゲージです。いざ、手ぶらでマイナス27度の世界へ……。

イバロ空港からサーリセルカまではバスで30分ほどなのですが、このバスが飛行機に合わせて出るそうです。飛行機は到着が遅れていましたが、バスは待っていてくれました。

しかし、もちろん荷物が出てこない人のことまでは待てないので、さっさと出発です。このバスを逃すとサーリセルカへの交通手段を失うので、荷物はいったん諦めます。

サーリセルカに着きましたが、全然人がいません。
そしてGoogle先生がイマイチ調子が悪く、
どこに何があるか分かりません。

サーリセルカでは、サンタズホテル トゥントゥリ(Santa's Hotel Tunturi)というホテルに泊まります。チェックインが夜中になるんですが大丈夫ですか? と事前にメールをしておいたところ、英語で以下の内容の返事が来ました。

「フロントは22:00に閉まるため、その後のチェックイン方法については次のとおりです。Gielas 棟の階段ドア A の隣にカードキー用のロッカーがあります。住所は●●です。あなたのキーカードは、コード●●のロッカー番号 ●● にあります。あなたの部屋は、Gielas 棟から数百メートル離れた Ahma 棟にあります」

これだけ見たら、いけそうな感じがします。とても簡単に、クイックにお部屋に入れそうな気配がします。しかし実際は、極寒と暗闇の中でGielas 棟を探すのがめちゃくちゃ大変でした。

-20度以下の中、頑張って探して、
ようやくGielas 棟を発見したのですが、
階段ドア Aを見つけるのがこれまた大変でした。
リアル脱出ゲームみたいになっていたというか、
寒さで死にそうなので
デスゲームみたいに思えてきました。

なんとかチェックイン出来ましたが、今日はつらすぎました。もうお部屋から出たくないです。しかし、サーリセルカ滞在は今日と明日だけです。オーロラが出やすい時間は夜22時から2時頃なので、見に行くチャンスは実質今日だけです。

誰だこんな計画を組んだやつは!と言いたくなりますが、とてもしんどかったフィヨルド12時間移動に引き続き、犯人はいつも自分です。(お付き合いくださる方は第10話へ……)

このままだとロストバゲージするためだけにサーリセルカまで来たみたいになるので、気持ちを奮い立たせて外に出ます。

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18-2.オーロラハントへ

オーロラをハントです。軽くひと狩り行きたいところですが装備が心許ないです。ホッカイロや、温かい飲み物を入れるための水筒など、防寒グッズはすべてスーツケースに入れていたので行方不明です。「そんな装備で大丈夫か?」→「フィンエアに言ってくれ」というかんじです。

かろうじて、カメラの充電器とスマホのモバイルバッテリーだけは持ち歩いていたのはナイスでした。(よく考えたらバッテリーは預け荷物に入れられないので必然です)

オーロラが見えるのは、光の少ない山とかの方、ということで出来る限りホテルから離れなくてはいけないのですが、寒くて嫌になります。これは確かにハントです。

寒くて暗くて、手持ちだとブレッブレです。
もうこういうアーティスティックな
写真ということにします。
オーロラ用に、別のカメラレンズを
持ってきていたのですが、ロストバゲージで失いました。
もう気持ちもブレッブレです。

さてどこ行こうかなと思っていたら、先程リアル脱出ゲームだったGielas 棟の裏手が丘になっており、オーロラっぽいものが見えました。

信じられないぐらい寒かったのですが、頑張って待っていると、どんどんオーロラがはっきりしてきました。

ついに来ました、オーロラ
どんどん来ます

ロストバゲージのことを忘れられるくらい綺麗です。着替えが一切無いことも、コペンハーゲンで今日の夕飯のために買っておいたカップ麵等が無いことも、色々忘れられます。(忘れていません)

ロストバゲージにあう確率は0.5%だそうです。1日に2回あったので、0.5%の二乗で、0.25%を引いたと言えます。これはもう宝くじでも買った方がいいレベルの強運です。ダイバージェンス1%の壁を越えてβ世界線に辿り着ける勢いです。

「オーロラが見られる確率はだいたい60%くらい。確実に見たいときは3泊滞在した方が良い」とガイドブックやネットではよく書いてあります。無謀にも思える今回のサーリセルカ1泊計画ですが、0.25%の壁・ダブルロストバゲージをくぐり抜けた私には、60%なんて余裕のよっちゃんです。ばりばり見られました。

たくさん写真撮りましたが、
かろうじてブレが抑えられているものは数枚でした。
ブレッブレです。はい。

「オーロラを見ると人生観が変わる」とか言ったりしますが、私は正直そんなことはなく、レアなもの見られてラッキーというぐらいでした。ぜったいロストバゲージの方が人生観変わります。

「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」という鬼滅の刃の台詞の意味が、ようやく分かりました。大事な荷物は他人に預けちゃいけません。金だけ払って荷物を失って、マイナス20度に命まで奪われそうです。「それじゃ……まるで家畜じゃないか……」という進撃の巨人のセリフをなぜか唐突に思い出します。なんだかよく分からないけど、つらいということです。


そんなひねくれ&中二病全開・激低テンションではありましたが、オーロラは綺麗でした。夜空が輝いていて、光が揺らいでいて、とても綺麗な光景であることは間違いありませんでした。

ーー夜の画用紙に、光の水彩絵具で線を引いたような……?
ーー極北の空に、淡い帳(とばり)が降りてきたような……?

「光のカーテン」という使い古された言い回しを使いたくなかっただけなのですが、中二病力が足りません。やっぱり光のカーテンですね。

オーロラの描写といえば、谷川俊太郎さんの『Aurora』という詩が印象に残っています。

「TRANSIT 34号 極北の夜空を見上げよう オーロラの煌めく街へ」という雑誌に掲載されていたのですが、ネットで検索しても、どの詩集に収録されているか出てきません。(もしかしたら、こちらの雑誌にしか掲載されていないのかもしれないです)

TRANSIT(トランジット)34号はオーロラの話だけでなく、北欧の先住民族のサーミ人のことや、北海道のアイヌ民族のことも詳しく書いてあって、2016年出版の古本ですがおすすめです。

「TRANSIT 34号 極北の夜空を見上げよう オーロラの煌めく街へ」

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