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『影響力の武器』1/3

ビジネス書としては、あまりにも有名な本なので、読まれている方も多いと思われるが、政治に支配される国民としても、企業から商品やサービスを購入する消費者としても、知っておいて損はない知識なので、簡単に解説させていただきたい。

この本は、サブタイトルにも書かれている通り、「なぜ、人は動かされるのか」をテーマに書かれている。僕たちは、知らず知らずの内に、他者に動かされている。人は、意識的か無意識的か、善意を持ってか悪意を持ってかは別にして、他者に対して影響を与える。

この本では、大きく6つのテーマに分けて、影響の仕方について書かれている。なお、テーマについては、本書に沿って解説を進めるが、例示については、当note独自のものも挙げながら解説する。

1.返報性

いわゆる、「ギブ・アンド・テーク」のことである。
例えば、年賀状が良い例だろう。業者などからの年賀状は別にして、友人や親類などからの年賀状は、ほとんどが相互に送り合っているのではないだろうか。

一方的にいただきっぱなしでいたら、どうだろうか?
多くの場合、申し訳ない気持ちになるだろう。

友達同士の年賀状などは多くの場合、お互いがお互いに「送りたい」と思っているので、テクニックとは関係がない、単なる相互コミュニケーションである。そこにあるのは、相手を想う純粋な心だろう。

一方で、相手が「申し訳なく思う」という気持ちを、意識的に利用して、相手からの行為を引き出そうとするのが、返報性を使ったテクニックである。

例えば、政治の世界。企業が特定の政治家を一所懸命に応援する。この場合、純粋にその政治家の政策に賛同して応援する場合もあれば、特別な見返りを期待する場合もあるだろう。土木業を営む企業が道路や橋の受注を期待して政治家を応援するような場合が考えられる。

逆もあり得る。政治家の方から、次回選挙での応援を期待して、特定の業界や企業に有利な政策を取り計らうような場合である。

今、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と自民党を始めとした議員との関係が問題になっている。ニュースによると、統一教会の信者たちがボランティアとして選挙に関わっていたようである。

応援して貰った議員は統一教会に借りを返す。「統一教会」から「世界平和統一家庭連合」への名称変更に当時の文化相が関わっていたという話もある。
そんな癒着で、これまで様々な問題を起こしてきた統一教会が、名前を隠し、これまで通り活動できるようになっていたのなら、大問題である。
過去に起きた統一教会の霊感商法などの一連の事件を知っている人でも、気付かずに近寄ってしまうことも発生する。
 
統一教会に限らずだが、政治家と有権者、政治家とマスコミ、政治家と企業、政治家と広告代理店、政治家と宗教団体など、これまでも様々な利権絡みの問題が起きてきた。特定の個人や団体が特別に優遇されているようなことがあれば、返報性のルールを疑ってみるとよいかもしれない。

2.コミットメントと一貫性

一貫性のルールは、自分がすでにしたことと一環していたい(一貫していると見られたい)という欲求である。人は、一度、決定を下したり、ある立場を取ると、そのコミットメントと一環した行動を取るように、個人的にも対人的にも圧力がかかるという。

本書では、こんな例が紹介されている。
ある音楽コンサートの新聞広告。そこには、大切な情報であるはずのチケット料金が書かれていない。
このコンサートに興味があるファンが最初に取る行動は、チケット売り場に問い合わせの電話をかけることである。
この行動が、一貫性を守りたいというきっかけになる。

電話をかけた時点で、そのコンサートに行きたいというスイッチが入り、想定していた料金より多少高くても、買う気が高まるという。
電話であれば一発で繋がらないこともあるだろう。何度かかけて、やっと繋がった時は、どういう気持ちだろうか? 苦労して問い合わせた分、買いたいという気持ちが、より高まっているだろう。

宗教の勧誘もそうだ。最初は、ちょっとしたイベントなどに誘われ、そこからどんどんと深みに勧誘されていく。

悪い例ばかり挙げたが、一貫性を保ちたいという欲求を、自分にとってプラスに利用することだってできる。

例えば、読書習慣やウォーキング等の運動習慣。いきなり、長時間は難しいかも知れないが、最初は1日10分だけでも、と始めてみる。一週間、二週間と続けている内に、自分の中で習慣化されてきて、せっかく始めたのだから、もっと続けたい、ここでやめたくないという気持ちが芽生えてくる。

返報性のルールも一貫性のルールも、人間が持つ基本的な心理的作用である。上手に自分自身に生活に取り入れると共に、他者に悪用されないように気をつけていきたいものである。

※1コラム5分程度で読める、お手軽さをコンセプトにしているため、本書の紹介は3回に分けることにしました。残り2回も、ぜひお楽しみください。


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