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ブームに乗る


 いま話題の。

 そうやって語られるものが、本当に人気があるのか、あるいは誰かの操作で人気を作り上げようとされているものなのか、見分けのつく人はいるのだろうか。
 確固たる裏付けの取れる具体的な数字が示された場合以外の「いま話題の」は、まゆつばものだ。そんな話も耳にする。

 私もかつては、「話題だからなんだっていうの」という、大げさに引いた姿勢だったけれど、いや、今も対象物によってはそういう姿勢のときもあるけれど、たいていの場合は、「えー、なになになにー?」と耳をダンボにし、「楽しそうだったら便乗しよっかな」と、話題を拾いにいく。

 自分ひとりで発見できることはとても少ない。せっかく、こんなに情報が溢れている世の中なのだから、取捨選択して、楽しいことは教えてもらっちゃおう。今はそんなふうに考えている。


 それでマリトッツォである。

 いま話題の。そうやって語る記事をいくつか目にしたことはあった。

「ね、マリトッツォって知ってる?」
 旦那さんに訊かれて思い出したから、少なくない回数、読んでいるのだと思う。だから正直にそのまま返事をした。
「いま話題なんでしょ? ネットでそう書いてあるのを見たよ」
「そうなんだ、話題なのか。それをコンビニで見かけたんだけどね、食べてみようかな」

 新発売、話題のもの、スイーツに関して、私とおなじく楽しんじゃうタイプの旦那さまは、有言実行、本当にファミマのマリトッツォを買ってきてくれた。

「マリトッツォ風」と名付けられているのはシフォンケーキで作られているからかな。ほんのりオレンジの感じがするふわふわのシフォンに、甘すぎないさっぱりクリームがたっぷり。美味しい!

 マリトッツォって、めちゃめちゃ好みのスイーツなのでは?! 私と旦那さまは微笑みあった。

 こうして、我が家にもマリトッツォブームがやってきた。


 しかしながら、我が家は行動ミニマム化の最中でもある。できるだけ出かけないようにしている。見るからに美味しそうなマリトッツォの写真を見かけても、遠方にあるお店まで買いに行くことは難しい。

 コンビニ各社がマリトッツォを発売していると知り、コンビニならばと近所を歩いてみたけれど、人気ゆえか、先のファミマ以外では出会うことができず、ファミマのマリトッツォをリピした。

 うん、美味しい。美味しいからこれだけでもいいんだけど、でもいま話題なんだよね? ほかにもあるんだよね?

 思うように行動できない時勢を恨みつつ、食材を仕入れに行ったスーパーの冷蔵ケースでやっと! 見つけましたよ、マリトッツォ! ヤマザキパンのマリトッツォ!

 ブリオッシュといいつつ、ロールパンのような雰囲気だったけれど、オレンジピールの入った生地に、たーっぷりの生クリーム(ちょっと固めで甘い)が美味しい!

 その数日後、菓子パンの棚にもヤマザキパンのマリトッツォを発見! 冷蔵じゃないし、この前とは別物か、そう思いつつも購入。クリームが少な目だし、パンもクリームパンみたいな感じでしたが、まあ、これも菓子パンとしては悪くないかな。

 なんだかんだで、三種類のマリトッツォを食し、まだまだ欲望は消える気配がありません。


 探しているから、というのもあるのだろうけれど、マリトッツォという文字が日々、必要以上に目に留まる。

 宣伝や感想があっちにもこっちにも入り乱れる中、ふと気が付くと、「和製」「にせもの」「二番煎じ」と書かれたものがいくつもあるではないですか。

 そうか、うん。私は納得しました。やはり、いま話題、なんだね。否定的な意見が増えるくらい、それだけマリトッツォに注目している人が多いってことなんだろうな。
 そういう記事を見ても、私としては、「和製」「にせもの」「二番煎じ」だといけないの?と思う。「元祖なになに」たとえば「元祖マリトッツォ」って言われたら、へぇーって興味は沸くけれど、本物かどうかより自分が好きかどうか、かなぁと思う。
 もちろん、盗作だとか、受け入れられないものもあるけれど、マリトッツォについては、本物のマリトッツォかどうかよりも、私が好きなマリトッツォかどうかが優先される。だから否定的な発言や記事は気にしない。それでも、あんまり好んでみたいものでもないけれどね。

 さてさて、甘いものに目がない我が家には、シフォンで作られたファミマのマリトッツォが最適か?

 なんて考えていたところで、またしてもありました。衝撃の出会いが。

 星乃珈琲の10周年限定メニュー、たっぷリッチパンケーキ!

 これもまたシフォンケーキで作られているのだけれど、ふんわり加減といい、クリームのなめらかさといい、ケーキそのもの!
 マリトッツォとケーキはちがうんじゃないの?
 そう言われると、正式にはマリトッツォじゃないのだと思う。でも、マリトッツォを求める私にとってはマリトッツォなのだ!
 クリームとシフォンのあいだにほんのりと、小粒のザラメが入ったようなミルキーな練乳が挟まれていると思われる。もう、一つだけでは食べ止めたくないくらいに美味しい!

 もうこれで思い残すことはないかも。たっぷリッチパンケーキに我が家のマリトッツォブームの終焉を感じつつも、まだまだ話題だというネット記事は止む気配がない。あれもこれもと目に入ってくるので、ついつい私も出先ではキョロキョロ。

 そうして今度はパン屋さんの冷蔵ケースに、こぢんまりとしたかわいらしいマリトッツォを発見!

 たぶん、ここにきてやっと正統派のマリトッツォ。ちっちゃい! まんまる! クリームたっぷり! ブリオッシュだけでも美味しい! カロリー低め!
 これまた大満足のマリトッツォでした。


 なんだ、なんだ、これ、いつまで続くんだろう?

 いま話題のマリトッツォ。本当に人気があるのか、誰かに踊らされているだけなのか、わからないけれど、でも美味しいし、楽しい!
こうしてすっかりどっぷりと私はブームにはまっております。

 楽しいからいいよね? うん、いいに決まっている。できるだけいっぱい楽しもう!

 いま話題のマリトッツォ、もうお食べになられましたか?

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