見出し画像

MIDI虚無機材史 #12 AKAI S3000XL(1996年)


AKAI S3000XL
Vintage Synth Explorerより引用

 この頃はApple PowerBook165 + MOTU Performerにシーケンサー環境を移行してましたが、さすがにPowerBook165 の性能と白黒液晶STN(だったかな)にすぐに限界を感じ、社会人初の冬ボーナスでPower Macintosh 8100/100AVをメインマシンにリプレースしました。この頃、オーディオをシーケンサーで扱うDAWの概念が広がりはじめていました。当時、西新宿の三井ビルでサラリーマン生活で心折れながら毎日を送っていた頃、唯一の癒しは新宿南口のソフマップに立ち寄り機材を物色するのが日課となっておりました。ちなみにお昼の癒しは、野村ビル地下のハシヤという和風スパゲッティ専門店(パスタではない)に行き、海の幸の唐辛子トマトソース大盛りを食べておりました。オーダーは「海辛大盛」で通ってました。当時、パワハラが当たり前の職場環境で、ここの店員さんもシゴかれていた時があったような。
 話がそれましたが、年末に新宿南口ソフマップで、Digidesign Session Softwareというオーディオが扱えるソフトが2万円くらいで投げ売りしてあり、音楽系のkπ(先輩と読む)からのアドバイスで「PowerPC」ならいけるやろという言葉を真に受けて、買ったマシンもAVという名称がついてるからと過信して購入しました。
 早速自宅でインストールしたところウントもすんともいわないようなレスポンスで撃沈、いや轟沈してしまいました。事前のスペック確認が足りなかった事を後悔し、返品交渉などもせず、当時のソフトウェアの無駄に大きいパッケージが長く自宅に鎮座しておりました。
 オーディオはソフトウェアをまだ過信してはいけないと思い、既存所有マシンのS950のメモリ容量・サンプリングレート・ステレオが扱えないというような限界を突破すべく、AKAI S3000XLを購入する事になりました。
 いまでは中古市場ではS950のほうがS3000XLより高くなってましたが、当時としては最新鋭のサンプラーでした。S2000は画面が小さいしデザインがイマイチ、S3200XLはさすがにデカすぎかつ高価格ということでS3000XLを選定しました。
 メモリは最大容量でSIMMは32MBまで拡張していたと思います。圧倒的なクリアな音色で、オーディオ素材もこれで自在に扱えるとよろこんでおりましたが、一番のこのシリーズの売りはMESAです。スペイン語由来のメサは周囲が急斜面で頂上が平らな地形とのことですが、こちらはModular Editing System by AKAIの略称ということで、パソコンの広い画面で、 AKAIサンプラーを自在に操作できるというの売りでした。廉価版のS2000は画面が小さいけどMESAがあればいいよねというコンセプトでした。
 そのような夢のような環境は、悪しきSCSIという規格で苦しみの境地に至ったのです。当時はUSBなどはまだなく、MIDIはシリアルポート経由でMIDIインターフェースにつないでいたのです。Macintoshはキーボード・マウスなどはADBという専用ポートでしたね。SCSI(Small Computer System Interface)は、外部記憶装置であるMOドライブやハードディスクドライブ、スキャナなどを接続するための端子でMESAを使うにはS3000XLとSCSI接続が必要になります。デイジーチェーン接続で順番に繋げていけるのですが、それぞれのSCSI IDをユニークにし、終端にはターミネーターを接続しなくてはいけないというルールがあり、SCSI端子・ケーブル・コネクタ形状もいくつかあってめちゃくちゃ柵(しがら)む規格なのです。
 当時、MacintoshのOSはよく落ちる(フリーズする)事が多く、恐怖の爆弾マークに皆怯えていました。 

enagadetサイトより引用

 泣きっ面に爆弾という雰囲気で、PowerMacintoshの時もこれかは記憶はありませんが、とにかくSCSI接続してMESAを使うと不安定でMESA自体が落ちたり、Macintosh自体が落ちたりすることが頻繁にありました。
 さらにMESA自体のUIがイマイチだった記憶があります。画面UIの問題より安定性の問題が致命的なので、結局本体の液晶で操作をしておりました。

MESA画面
Mac OS9 Livesサイトより引用 

  SCSIにはハードディスクドライブ、MO(光磁気)ディスクドラムにサンプルの保管、CD-ROMドライブで流通ソフトを利用するなどをしてました。いわゆるマルチサンプリングの音色ではなく、ビンテージドラムマシンのサンプリング音源を使っていた記憶があります。過去の保管CD-ROMを探したが見つかりませんでした。このファイル管理をMESAで楽々にと思っていたのですが、本体中心の操作になると非常にプログラム名前つけたり面倒くさく、プリセットドラム音源的な使い方になっておりました。
 エフェクトボードE16,フィルターボードIB-304などオプションでしたが、どちらも利用していないですね。E16は後日MPC-2000で利用した事はありますが、ふフィルターボードは意識してませんでしたね。英文マニュアルを見ると2個目のフィルターが追加されるようですね。

Optional IB304F offers a 2nd bank of 2-pole resonant multi-mode(HP,BP,LP,EQ)filters and tone control.

S3000XL Manualより引用

 また、このころ大流行したPropellerhead ReCycle!ももちろん導入しました。当時、ドラムサンプルをサンプラーの画面でスライスするのが大変なのを一気に実施してくれるソフトウェアです。今でも販売しているようでびっくりしました。Reason用なのかしら。REX/REX2ファイルフォーマットとう世界もこのソフトで出来上がりましたね。今となっては、殆どのDAWで機能実装しているのではないでしょうか。まあ、このソフトもSCSI経由でのサンプラーとのやりとりで安定性の問題があった気がします。当時、Drum'n Bass,Jungleが非常に流行っていて、それっぽいのを打ち込みたかったのですが、結構センスが必要であまり使いこなせなかったような気がします。結局、スライスした膨大なサンプルを管理するところが面倒くさくなったのでしょう。総評として、非常に几帳面な性格な方でないとサンプラーって使いこなせないのかという印象です。
 サンプラーにおいて、ソフト+ハードの統合版でもあるDigidesign Sample Cellも使ってみたかったサンプラーなのですが、前述のSession Softwareの喪失感でさすがに信用を失ってましたのでそちらには行かなかったですね。こちらも、NuBUS,PCIなどいろいろインターフェースで柵(しがら)みそうですからね。KORG 1212I/Oというのもありましたねー。MIDIとAUDIOの融合に向けてはまだまだいろいろ時間が必要になります。
 このS3000XLは一回液晶バックライトが死んで、自分で交換しようといしたら失敗して、修理代も見込みの上でよっぴ先生に譲渡となりました。

津田沼自宅でのS3000XL設置状況
(購入時よりかなり後になります)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?