後悔の無い、そっち側へ


挨拶という名の自分語り

ゲーセンが好きだ。
どうしようもなく好きだ。

自分を知っている人なら大体わかってると思うが、クレーンゲーム、メダルゲームが多数あるゲーセンでのことではない。

薄暗く狭い空間に、敷き詰められたビデオゲームの筐体、染み付いたタバコの臭い、鳴り響くゲームの効果音、飛び交うプレイヤーの声。そういう昔ながらのゲーセンだ。

そこに行くと、大抵誰かいた。友人、対戦ゲームのライバル、音ゲーの師匠、いつもパズルゲームや麻雀をやっているおじさんおばさん……。
話したことはあっても名を知らぬ人は多かった。
きっと自分も、誰かにとっての『いつもいる』の中にカウントされていたことだろう。

ゲーセンに行き始めたのは2006年、高校生の頃だ。友人に連れられたことがきっかけだった。ガンダム、音ゲー、STG、格闘ゲームを遊んでいた。
大学生になってもそれは続き、閉店まで遊ぶようなことは日常茶飯事だった。

ゲーム仲間と大会に遠征に行くというのは体験していないが、ネット越しに知り合った人と会うため、新作のロケテ、レア音ゲーを目的に遠出するのも、もはや日常だった。

社会人になると、ホームゲーセンのみならず多数のゲーセンが閉店し、そのような日々は終わりを告げた。
しかし、ゲーセンへの愛は止まらなかった。

基板を買うきっかけ

そんな青春時代を過ごしたので、ゲーセンのゲームを家で動かすことに憧れるのは、自分の中では当然と言えば当然の流れだった。

先程はゲーセンという空間を愛した話をしたが、言わずもがな、ゲームそのものも愛していた。

ひとつのゲームに目標を持って取り組む。移植版があれば家でも練習し、その成果をゲーセンで披露する。また互いの成果を褒め合う。そんなことも日常であり、生きる目的だった。

社会人になり、一時期川越に住んでいた頃。
今はもう閉店してしまったマグマックスというゲーセンに通っていた。
そこで出会ったのが、ミスタードリラーGだ。

このゲームには、北極と言うステージが存在する。超上級者向けのステージだ。
上級ステージとして深さ2000mを目指すエジプトがあるが、北極は目指す深さこそ同じものの、ブロックの落下速度、意地悪すぎるエアの配置から圧倒的な高難度ステージとなっている。
STGで言うなら、2周目からスタートするようなものだ。

元々、GBA版ミスタードリラー2で北極はクリアしていた。ステージの特徴も理解しているので、自信はあった。
だが、GBA版と比較して横に広いフィールド、ホワイトブロック、処理落ちが存在しない環境と、高難度になる要素が満載だった。GBA版とは桁違いの、文字通りグレートなゲームだった。あっさりゲームオーバーになった。

自信は打ち砕かれたものの、ゲームのセオリーはある程度身に着いている。
『運に任せてもいい、一度でいいから北極をクリアしたい』と思い、日々プレイした。
運任せには試行回数が必須だ。限られた時間で多くプレイする為、序盤で凡ミスをした場合の捨てゲーも容赦無く行った。
時々調子が良く、1800~1900m台に辿り着くことはあったが、クリアには至らなかった。
店舗に通う度に両替で用意した大量の50円玉は、すぐに消えていった。
悔しい。その思いだけが募った。

ある時、プレイステーション版のミスタードリラーGをPS3のアーカイブスで買って遊んでみた。
残念ながら、アーケード版のミスタードリラーGと同じ感覚で遊ぶことは到底不可能なものだった。
プレイステーションの性能では仕様が再現できなかったのであろうが、『それは移植ではなく全く違う作品だ』と思ってしまうには十分だった。

これがきっかけで、アーケード版の北極をどうしても攻略したい、家でも遊びたい、移植が無いのなら基盤そのものを買うしかない。そう思った。
早速、基板の知識が豊富な友人に、必要なものと価格について相談した。

まずはコントロールボックスが必要だ。これはゲームハード+コントローラーにあたるものだ。
購入を検討した雷神は、コンポジット出力も備えている。
4万円程度で購入可能だった。

次にゲーム基板だ。これはゲームソフトに当たる部分だ。
価格は希少具合や買う時期によって大きく異なる部分になる。
当時(2015年)、ミスタードリラーGの価格は5000円程度と手頃な価格だった。

ハードとソフトになっているようには見えないかもしれない

『画面にレバーとボタンがくっついている、ゲーセンに置いてある筐体そのもの』を買う必要はない、と補足しておく。
相談時点ではすでにこの事実は知っていたが、最初はこれが必要だと思ったものだ。

必要なものの価格を足しても5万足らず、最新のゲームハードとソフトを買うのとあまり変わらないレベルだ。
これなら、十分に手が出る範囲であった。

ゲーセンのゲームを家で動かす事には憧れがあったのだ。いい機会だと思い、買うことを決断した。
秋葉原のマックジャパンへ出向き、その場で一式購入した。『そっち側』へ行った瞬間だった。

程無くして、コントロールボックスと基板が家に届いた。セッティング自体はほとんどゲーム機と変わらない。扱いこそ多少デリケートなものの、簡単だった。
早速プレイした、当たり前なのだが、ゲーセンで動いていたゲームと全く同じものが家で遊べる。いたく感動した。
50円玉を用意する必要も無く、寝る前だろうが気軽に遊べる。そのうえ配信もできる。いいことづくしだ。

そうして家でもプレイを重ねた。しかし、そう簡単にはクリアできない。
次第に、『クリアできなくて悔しい』という思いが、『クリアできなくて辛い』になっていった。
それでも根気強く続け、ゲーセンと合わせて累計500回以上プレイした時だった。遂に、遂にミスタードリラーGの北極をクリアした。
思わず叫んだ。泣きそうになった。今までの思いが、達成感と嬉しさに変った瞬間だった。
基板環境を整えて良かったと、心から思った。

実は同日に買っていたぐっすんおよよは、とりあえずコンテ連でクリアして以降起動していないことは秘密にしておこう。

遊びたいなら買うしかない

自分が移植版のゲームを買い始めたのは、2008年から。XBOX360が全盛期の頃だ。
基板の性能に家庭用ハードが十分に追いついた(追い抜かした?)時代だ。

当時のSTGや格闘ゲームの移植が盛んになり、どれもこれも基板と比べて遜色無く遊べる出来だった(一部の処理落ち等の差がわかる程器用でもない)
トレーニングモードやネット対戦を筆頭に、家庭用ならではのモードを遊べることも、移植版を買う理由となった。
そういったものであれば、基板を買おうとは一切思わなかった。

その一方で、ゲーセン通いを続けるうちに、2006年より前に発売されたゲームに対して興味を持つことが増えた。
そのあたりのゲームは、ハードの制約や人気の問題で移植されていないことも多い。
移植が無くどうしても遊びたいものは、躊躇せず基板を買った。
買った数年後に移植されるものもあったが、後悔はしていない。その時遊びたいなら、買うしかなかったからだ。

そうして所持数が増えるうちに、どうしても家で遊ぶことが少なくなったものが出てきた。
死蔵する気は無いので、知人やゲーセンに預けてもいいかな、とは思っている。
もし自分が所持している基板に興味があったら気軽に聞いて欲しい。

最近の基板界隈について思うこと

とにかく、高価かつ物が少ない界隈になったと思う。2015年から基板に興味を持ち始めた自分ですらそうなのだ。もっと前からこの界隈に居る人は、より強く思っているのではないか。

基板は、家庭用ゲームソフトと比べて流通量が少ないうえにそもそもが高価だ。
国内だけでなく、海外からも購入する人がいる。値段が上がる速度は異常に速い。
例として、ミスタードリラーG。これを今(2024年)買おうとすると、ある店では4万円前後になっている。自分が買った時の軽く7~8倍だ。

流通量が少ないうえに、どんどんと買われていく。
筆禍のようにヤフオクや基板屋のページを眺めても、品が無いなんてことはざらにある。
それでもほしい基板があるときは、日々眺めるしかない。財布の中身と相談しながらだ。

おわりに

今回のnote記事は、ただの自分語りだ。
書くきっかけは、Twitterでのやりとりが発端だ。基板持ちとして『そっち側』と言われたことがあまりにも面白かったからだ。
断っておくが、そういわれたことで一切不快にはなっていない。ツイートを見た時は声を出して笑った。こういう扱いを受けることは大歓迎だ。
そういったことがあったので、折角なら『そっち側』に言ったきっかけでも書いてみようとなっただけだ。

とにかく、当時を思い出して書くのが物凄い楽しかった。
自己満足な記事だが、楽しいと思っていただけたなら、この記事にスキ! して貰えると嬉しい。

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